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概要 |
近年、人口の都市への集中はますます加速され、都市部においては鉄道や地下鉄網の整備による輸送力の増強が図られてきた。また、音楽ホールや研究施設などに対するニーズも大きく、これらの文化施設の建設も盛んとなったが、土地の高度有効利用や交通の利便性のために、静寂が強く必要とされるこれらの諸施設が地下鉄や鉄道に近接して建設されることも増えてきている。鉄道や地下鉄は加振力として大きな振動源であるため、電車から...発生した振動が建物内に伝搬して生じる固体音問題が固体音に関する新しい問題としてクローズアップされるようになってきた。建物を設計するに当たっては、これらの振動および固体音の影響を事前に予測し、必要であれば適切な防音・防振対策を検討ずる必要がある。 固体音の建物内伝搬性状に関する既往の予測手法は、実験式による予測、統計的エネルギー解析法による予測、波動伝搬理論による予測、多質点系モデルによる予測、FEMによる予測がある。 実験式による予測は、計算が容易であることから、実務に最も良く用いられている。しかし、幾何学的拡散による減衰を表す定数と材料減衰他による過剰減衰を表す量が、建物構造や振動の建物への入力の仕方の違いによって、決定方法がまちまちとなっているのが現状である。また、この手法では、振動源の大きさや振動の建物への入力形態によっては建物内の減衰が距離に依存しない事例や、建物全体のモードや端部の反射による影響は表すことができない。 統計的エネルギー解析法(SEA法)は、船舶などの大型鋼構造物における固体音解析に対しては実用化も行われている。しかし、建築構造物は鋼構造物に比較して減衰が大きく要素間の結合も強いので拡散振動場となりにくいことから、SEA法の適用例は少ない。さらに、モード数が少ない周波数領域では精度が悪くなり、一般的には50Hz以下は適用範囲外となる。 波動伝搬理論による予測法は、要素交差部における変位、傾き、力およびモーメントなど系の個々の成分を別々に考える必要があり、建物全体へ適用していくときには複雑さが増してくるため、実建物に対する適用検討例は未だ発表されていない。さらに、この波動伝搬理論による予測法は、板構造について現在のところ波動の入射条件や共振状態が明確に記述されていないので、複雑な実建物へ適用し精度の良い解を得ることは難しいと思われる。 多質点系モデルによる予測は、建物全体のモデル化が可能であり計算時間も比較的少ない利点があるが、計算可能な周波数範囲が建物モデルのモード数によって決定され、モデル最高次の固有振動数以上の周波数範囲は適用外となる。一般的には、I00Hz以下が適用範囲といえるであろう。 FEMによる予測は、地震応答解析などの構造分野で良く用いられており、また体感振動(50Hz以下の周波数)領域における鉄道振動の建物内伝搬予測に対する適用例はあるが、固体音領域の振動を対象とするには要素数が膨大となるため、現在の計算機の脳力では、建物全体を三次元の立体モデルとして計算を行うことは不可能に近い。 以上、固体音の建物内伝搬性状に関する既往の予測手法について見てきたが、現時点では、地下鉄や鉄道による固体音を対象とする周波数領域(オクタープバンド中心周波数で31.5?250Hz)へ適用し、精度の良い解を得ることができる予測手法は整っておらず、このことがこれらの固体音制御を困難にしている大きな要因となっている。 本研究は、地下鉄や鉄道による固体音の建物内伝搬性状に関して、少ない要素数で高精度な解が求められる手法を開発し、これを実用化することを目的としている。 第1章においては、本研究の背景および目的について説明し、地下鉄や鉄道による固体音を対象とする周波数領域(オクターブバンド中心周波数で31.5?250Hz)へ適用し精度の良い解を得ることができる予測手法の確立が必要なことを記述している。 第2章においては、数値計算手法を導く際の基礎事項として、棒要素および平板要素内を伝搬する擬似縦波、曲げ波、剪断波、ねじれ波について説明し、それらの波動方程式を導いている。また、定式化の基礎となるLagrangeの運動方程式について解説を行っている。 第3章においては、棒要素と平板要素中を伝搬する波動について、建物を各要素の組合せでモデル化する場合に都合の良い境界条件を規定し、境界条件を満足する波動方程式の解を求めている。そして、その解とLagrangeの運動方程式を用いて波動に関する運動方程式を導いている。 第4章においては、第3章で求めた運動方程式を建物全体モデルヘ適用していく場合に必要となる座標変換と各要素の集合としての運動方程式について説明している。 第5章においては、建物模型による予測手法の検証を行っている。 検証は、先ず6層建物の骨組み構造模型について、模型実験結果と計算結果の比較を行っている。その際に、模型実験に必要となる模型相似則および材料の物性値、特に材料の損失係数の測定方法について説明を加えている。次に、11層建物の骨組み構造模型について模型実験結果と計算結果の比較を行い、オクターブバンド幅で予測結果を評価する場合には、入力波形の位相は無視しても実務的な範囲での精度は確保できる可能性があることを示した。さらに、6層の床版付き骨組み構造模型について予測手法の検証を行い、予測手法が有用であることを示している。 第6章においては、鉄骨鉄筋コンクリート造の実建物と鉄骨造の実建物における地下鉄固体音の伝搬性状予測へ本手法を適用し、予測手法が実用性を有することを検証している。 第7章においては、本研究の内容と得られた知見をまとめ、残れさた問題点を列挙し、今後の研究の展望について述べている。続きを見る
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目次 |
目次 記号一覧 第1章 序論 第2章 予測手法の誘導で基礎となる事項の解説 第3章 境界条件を規定したときの運動方程式 第4章 各要素の建物全体モデルへの適用 第5章 建物模型による予測手法の検証 第6章 実建物における予測手法の適用 第7章 むすび 謝辞
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