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概要 |
建築音響設計や騒音制御設計においては、音響材料の吸音率データは必要不可欠な基礎資料である。このため、多くの材料の残響室法吸音率が関連書籍などで紹介されてきている。これらのデータは、I25?4000Hzの周波数範囲で与えられることが多く、吸音率データを利用する設計現場においても、この範囲内で吸音設計を行うことが一般的であると考えられる。 しかしながら最近では、この範囲外、特に低周波数域において設...計が要求されるケースもみられる。例えば、近年苦情が深刻化してきた低周波騒音に対する対策設計がこれに該当する。このような設計現場においては、文献から得ることができない材料の吸音率を、経験により推測しているのが現状といえる。したがって、低周波数域においても定量的な設計を行えるよう、一般建築材料の125Hzより低域の吸音率データを充実させる必要があると考えられる。さらに、対策目的の周波数で高い吸音効果を持つ低周波吸音構造の開発も重要であると考えられる。 そこで本研究では、共鳴周波数を調整することで吸音特性を変化させることができ、比較的自由な設計・施工が可能であるスリット構造に着目して、その低周波吸音特性についての検討を行うこととした。 スリット構造を無限に連続な一次元周期構造とみなし、矩形周期壁による音波散乱の一解法である“矩形分割法”を用いて吸音特性解析を行った。まず最初に、これまで定量的な吸音特性の予測法が確立していなかった従来型のスリット構造について解析を行うと共に、実測値と計算値の比較を行った。その結果、垂直入射吸音率および斜入射吸音率の数値計算結果は実測値をほぼ予測しており、この手法による吸音率の予測が妥当であることが示された。また、多孔質吸音材料の表面保護剤としてリブを使用する場合に必要とされる開口率の検討などにも、本手法による数値計算が応用できることが示された。 次いで、スリット構造による低周波数域の吸音の可能性について、数値計算による検討を行った。ここでは、スリットの周期やリブ厚を大きく、あるいは開口率を小さく設計することにより共鳴局波数を低域に移行できることが、定量的な吸音特性の変化として確認することができた。 また、現実的な施工性を考慮した場合は、トータルのバランスを保ちながら、構造を大きくすることが妥当であると判断された。 ここで、低周波吸音スリット構造のリブが大型化・重量化する問題について、リブの段面形状を一般的な矩形から、板材を組み合わせることで軽量化を計った溝形あるいはH形することにより対処することを提案した。このようなモデルについて吸音特性解析を行い、実測値との比較により計算結果を検証するとともに、リブ形状の変化が吸音特性に及ぼす影響について検討を行った。その結果、人・反射音場側に溝を掘った“U形”リブを用いても、矩形リブの場合とあまり吸音特性に変化が生じないことが、計算値と実測値の整合を伴って示された。また、このようなU形リブの溝入口にグラスウールを挿入した場合には、共鳴型と多孔質型の両方の特徴を兼ねた吸音効果が得られるなど、構造によっては個性的な吸音特性を持つことが示された。 一方、ここまでの解析モデルにおいて、スリット構造の背後空気層に挿入する多孔質材とリブ間の隙間がゼロまたは非常に小さくなった場合、数値計算により得られる吸音特性が非現実的なものとなることがわかった。これは、多孔質材の表面を局部作用が仮定された境界として取り扱うこれまでの手法における一つの限界であると考えられる。この問題を解決するため、多孔質材内部の場およびさらに背後の空気層の場まで考慮したモデルについて解析を行った。このモデルでは、これまで与えていた多孔質材表面の非音響アドミタンスに代わって、多孔質材の伝搬定数および特性インピーダンスが導入されている。数値計算の結果、この新しいモデルを採用することにより、多孔質材とリブ間の隙間がゼロとなった場合にも、吸音特性をほぼ正確に予測できることが示された。続きを見る
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目次 |
目次 第1章 はじめに 第2章 周期壁の反射音場理論解析法(矩形分割法) 第3章 スリット構造の吸音特性解析 第4章 スリット構造の吸音率計算例 第5章 低周波域吸音用特殊リブ構造 第6章 多孔質性吸音材料の内部音場を考慮した解析 第7章 総括 謝辞 参考文献
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