<博士論文>
実体顕微鏡を用いた微細領域に於ける奥行弁別作業に関する研究

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概要 運動視差の影響を排除し、奥行知覚の主要因であると考えられる両眼視差に注目して、実体顕微鏡を用いた両眼視による微細領域に於ける奥行知覚に関する研究を行った。具体的には、奥行弁別に於ける視認性に影響を及ぼす要因と学習効果に関する実験を行うことで、両眼視差要因による奥行弁別機能について検討した。本論文は6章から構成されている。  第1章では、両眼視による奥行弁別作業に於ける特徴と問題点、ならびに奥行弁...別機能に関するこれまでの研究動向を吟味し、本研究の目的とその対象を明確にした。即ち、運動視差と両眼視差はともに注視物体を基準とした物体間の相対距離検出であり、類似機能特性を有するが、両眼視差に注目した本研究に於いては、従来の実験研究ではあまり明確に区別されていなかった網膜上にできる像差を、両眼視差と、観察位置の移動により左右眼に生ずる網膜像の“ズレ”として検出される運動視差に明確に分けて捉える事で、両眼視差要因のみによる奥行知覚機能の研究の意義を明確にした。  第2章では、両眼視差による奥行知覚に於いて視認性に影響する観察視標の形態、輪郭線、配置の仕方について検討した。視認性の高い形の場合には、形の差や配置方法の違いによる奥行弁別への影響は認められなかった。輪郭線に関しては、視標のエッジ(端面)の機械的な精度を高めることで視認性が高まることを確認した。  尚、本研究では奥行量の表現方法として視差角度を用いたが、両眼視差による奥行弁別には両眼視差の情報が重要であり、その条件の規定方法として「眼から視標までの距離」と「視標間の奥行距離」が必要となり、両方を規定するには相対角度による表現が適切と考えた。視認性の高い形に於ける奥行弁別閾は両眼視差角41秒近傍にあることを確認した。そして、奥行を視差角で表現することの合理性と有効性を示した。  第3章では、奥行知覚に於けるテクスチュア刺激(材質感)と被験者の熟練度の差異による観察方法の相違について検討した。視標のテクスチュア刺激情報は、微細なテクスチュア刺激のときには視認性を高める効果があるが、テクスチュア刺激が相対比較視標間の奥行量と等しいかそれ以上になると急速に錯視効果を高めて、極端に視認性を悪くすることが明らかになった。  熟練者と非熟練者の観察方法の比較から、熟練者に於いては、視差角の減少に伴い途中で、視標の「部分観察」から「集群観察」へと観察方法を切り替えることにより錯視を生じ難くしていることが推察された。非熟練者の弁別能力を高める方法としてこの“観察方法の途中切り替え”の有効性を提案した。  第4章では、奥行弁別で機能していると考えられる焦点調節機能について検討した。視標が眼の焦点深度内に入った後の注視点の決め方が、奥行弁別精度に大きく影響することが明かになった。そこで、眼の焦点調節時に眼の光学的特性を活用した。奥行弁別能力を高める方法を提案した。そして、奥行弁別精度を高めるための短時間注視(7秒以下の注視作業)の有効性と、長時間注視(10秒以上の注視作業)が弁別感度ならびに弁別精度の低下をきたすことを実験により明らかにした。  次に、奥行弁別に於ける両眼視と単眼視の比較、および単眼視に於ける利き眼を考慮した右眼と左眼の比較から、単眼視より両眼視の奥行弁別が優れていることが確認された。単眼視に於いては、利き眼と関係なく、奥行弁別能力は左眼より右眼が優れていることが推察された。  第5章では、融像困難あるいは不可能な者に対する融像性輻輳機能の訓練方法について検討した。実験の結果から“融像機能の習熟訓練”は、多くの場合は単に眼筋の使い方の“きっかけ”を作る作業で、一度そのコツがつかめると急速に融像が可能になることを明らかにした。左右眼の像を融像困難な者でも“眼筋の使い方の訓練不足”を原因とする場合には、両眼に1?2Prism Diopter (Δ) づつプリズム強度を付加する眼筋訓練の方法を、短時間で速効性のある訓練方法として提案した。  第6章では、本研究で得られた成果を総括し、今後の課題について検討を加えた。そして、「調節や輻輳は生後6ヵ月前後で習熟訓練によって形成される機能である」とする輻輳に関する従来の考え方の規定や表現方法を、「大半のヒトの場合には、調節や輻輳は生後6ヵ月前後で習熟訓練によって形成される機能であり、日常生活を営む上で必要なある程度の輻輳力や開散力は、経験の程度に応じて固体差が生ずる機能である」という強度程度を条件として併記すべきではないかとの提案を行った。続きを見る
目次 目次 第1章 序論 第2章 奥行弁別作業に於ける視認性要因について 第3章 奥行弁別作業に於ける錯視要因と学習効果について 第4章 焦点調節機能と熟練度について 第5章 融像性輻輳機能の訓練効果について 第6章 総括 謝辞 参考文献

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登録日 2013.07.09
更新日 2023.11.21

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