<博士論文>
都市空間の記憶と想起に関する研究 : 建築の外部空間のイメージを形成する過程について

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概要 近年、建築や都市計画の研究分野で、空間認知の研究が盛んに行われるようになった。この主要な目的は、人間が空間をどのように捉えているのか、その真理的な仕組みを明らかにし、現代の都市空間や景観の評価とデザインの指針を得ることにある。  これらの分野において、空間の知覚と空間のイメージは別個に研究が進められてきており、両者の関連性についてはほとんど着手されていない。 本研究では、 (1) 知覚された...空間特性の記憶への統合 (2) 記憶から想起されて構築される空間のイメージ について、対象空間の物理的な特性が知覚や記憶の鮮明さやイメージにどのように反映されているかの検討により、それらの関連性を明らかにした。  本論では、まず第1部において、心理学における認知の理論と空間認知の既往研究を分析し、両分野の得られた知見の関連性と同時に、以下の研究課題を見いだした。 (1) 空間の評価と空間の記憶とが共通の要因をもっていること。 (2) 言語表現上の空間の分節形態と空間の表象形態との整合性の問題。 (3) 広域的な空間のイメージ構築の起点として、部分の関係と全体の構造の両方が存在すること。 (4) 空間の知覚やイメージ形成には、空間の機能等の非視覚的な特性が影響力を与えていること。  第2部では、以上の課題について、SD法やイメージモデル組立実験等の6種類の実験とその分析により以下の成果が得られた。 (1) SD法による空間の評価実験により、空間の評価のなかに空間の状態を説明する「具象的」な因子と、空間の総合的な価値を評価する「抽象的」な因子が存在することを明らかにした。  また「具象的」な因子の要因となる物理的な空間特性として、空間の構成要素の種類や数、また「抽象的」な因子の要因となる空間特性として、空間の構成形態が見だされた。 (2) 同一の大学キャソパスを対象にしたエレメント想起実験とイメージマップ描写テストの比較から、言語的な表現方法では空間の表象単位のうち一般的な呼称を持たないものが現れなくなることを明らかにし、空間認知の研究において、言語的な調査方法の適用範囲が限定されることが判明した。これをふまえて、描画の表現能力や言語的方法に依存しない本研究の調査方法であるイメージモデル組立実験を考案した。 (3) 大学キャンパスを対象にした空間の記憶実験を行い、空間の各部分の記憶の鮮明さと、その要因として、建物要素の場合には空間の形態的な側面、またその他の空間の場合には機能的な意味や情緒的な意味が重要であることを明らかにした。さらに、空間の「抽象的」な評価の要因と同様の空間の構成形態が見いだされ、空間の総合的な評価と空間の記憶との間に密接なつながりがあることが明らかになった。 (4) 大学キャンパスの記憶実験に継続して上述のイメージモデル組立実験を行い、その組立過程の分析から、建物モデルの特定に必要な対象空間の特徴、モデル組立の起点となる建物間の位置関係、さらに被験者が最終的に再現しようとしている対象空間の全体構造を明らかにした。これにより空間のイメージ構築が、部分の関係と全体の構造を起点にする双方向の思考活動として説明できることが明らかになった。 (5) 実験の告知により意図的に空間の特徴を憶えた被験者と、日頃の生活により無意識に空間を記憶している被験者による2種類のイメージモデル組立実験の結果を比較し、日常的な空間体験では、利用しない建物の形態をほとんど憶えていないこと、また対象空間のイメージが日頃の行動経路上の空間を起点に構築される傾向があることを明らかにした。 (6) 建物の概型のみを表現したモデルと、概型に加え開ロ部などの細部も表現したモデルによる2種類のイメージモデル組立実験の結果を比較し、細部の情報が各建物モデルの特定を確実にして早める場合と、混乱させる場合の建物の特性を把握した。特に、表象単位と建物単位が相違している場合には細部の情報により照合が困難になることなど、手掛かりとして与えられる細部の情報は、空間のイメージを鮮明にさせない場合もあることを明らかにした。  以上の結果を総括し、空間のイメージ構築は、対象空間の物理的特性以外に、対象空間を知覚し記憶を獲得するときの動機付けや、空間のイメージ構築の手掛かりとして与えられる情報に影響されることが明らかになった。 (1) 知覚における空間の総合的な評価が、空間の鮮明な記憶と密接なつながりを持ち、鮮明に記憶される空間が質の高い空間として評価されること。 (2) 空間のイメージが明快に構築されるためには、空間の部分の特徴と同時に、全体の構造が明快でなければならないこと。  これらが具体的な対象空間において明らかにされたことは、都市空間の計画や景観デザインの評価に有効な示唆を与えるものである。続きを見る
目次 まえがき 目次 序章 第1部 認知の諸理論と空間認知の既往研究 第1章 知覚とイメージ 第2章 類似表象様式とデジタル表象様式 第3章 意味論的考察 第4章 空間認識の既往研究 第5章 空間の記憶獲得とイメージ構築 第2部 対象空間の記憶獲得とイメージ構築 第1章 研究方法 第2章 空間に対する評価とその要因となる空間特性 第3章 空間の言語的分節と表象単位 第4章 表象の鮮明度とその要因となる空間の素性 第5章 イメージモデルの組立過程から推測できる対象空間のイメージ構築 第6章 日常的な空間の知覚から獲得される空間の素性 第7章 空間のイメージ構築に用いられる手がかり 第8章 研究の総括 資料 参考文献 関連論文

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K001 pdf 47.6 MB 284  

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登録日 2013.07.09
更新日 2018.01.17