福岡都市圏近代文学文化年表 ; 大正7年 - 九大コレクション | 九州大学附属図書館

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福岡都市圏近代文学文化年表 ; 大正7年

編者	花田, 俊典
編者	スカラベの会
データベース名	福岡都市圏近代文学文化史年表
年表	文学作品：１月　北原白秋「新邪宗門秘曲」・高浜虚子「福岡の俳句界」（「福岡日日新聞」１日）久保猪之吉「雪」（「九州日報」１日）森林太郎（鷗外）「余と俳句」（「九州日報」２日）白蓮女史「みどり丸」（「福岡日日新聞」４日―５日）５月　福本日南『大阪陣』（南北社）７月　吉岡禅寺洞「発刊に臨みて」・久保より江「すみ」（「天の川」）杉山茂丸『児玉大将伝』（博文館）11月　福本日南『石臼のへそ』（東亜堂書房＊縮刷版）■この年、竹田秋楼／内野環星編『新撰博多仁和加附博多方言集』（勉強堂書店▲九大六本松図書館）福本日南『大阪陣』前編（南北社出版部）
	文学的事跡：１月　大杉栄・伊藤野枝らが「文明批評」創刊（１日＊連続発禁で翌月終刊）。柿添元、福岡県筑後市で出生（18日）。２月　吉木幸子【★224】、福岡市住吉町で出生（２日）。夢野久作が鎌田クラ（福岡市荒戸町）と鎌倉長谷の杉山家で結婚式（25日＊入籍は４月18日）。３月　福永武彦【★225】、福岡県筑紫郡二日市町で出生（19日）。笠信太郎が県立中学修猷館を卒業し、翌月東京高等商業学校に入学（＊のち病気のため帰郷）。４月　檀一雄が福岡県三井郡国分男子尋常小学校に入学。「大阪朝日新聞」が前年の筑豊疑獄事件と絡めて「筑紫の女王燁子」連載開始（11日）。矢山哲治【★226】、福岡市石堂町で出生（28日）。青木月斗・長谷川零余子が前後して来福。６月　福岡為替貯金支局（因幡町）の第３代支局長として富安謙次（風生）【★227】が赴任。７月　吉岡禅寺洞らが俳誌「天の川」【★228】創刊（１日）。倉田百三【★229】が結核治療のため来福し、九大医学部教授久保猪之吉の診察を受ける。福岡日日新聞記者の黒田静男がシベリア出兵に従軍記者として出発（28日＊10月２日門司港帰着）。８月　九大医学部内科学第二講座（武谷広教授・明治38年２月助教授着任、43年１月教授、昭和10年６月停年退職）の医局員を中心に俳句会「九大有苞（アルツト）会」を結成、住吉神社境内の墨の江館で句会を催し吉岡禅寺洞・清原拐童・高崎烏城・岩田紫雲郎・富安風生らも参加（11日）。９月　郭沫若【★230】が九州帝大医科大学に入学。石内泰・木村繁男・小島良徳・白水吉次郎【★231】・杉野朴らが休刊中の歌誌「ミナト」を「ハカタ」と改題創刊（＊第２号から西村健太郎・鹿児島寿蔵【★232】が参加、大正８年６月まで全７冊）。この年、柿添元、福岡県筑後（八女市？）で出生。
	社会文化事項：１月　私立九州美髪学校創設。第一銀行福岡支店が店屋町に開業。今泉浅次郎が私立福岡脳病院を市外千代町に開業。２月　福岡市記念館で普通選挙促進大会（１日）。松井須磨子・島村抱月らの芸術座が九州劇場でトルストイ原作「生ける屍」「復活」公演（11日―●日＊宿舎は水野屋旅館）。駒田好洋、九州劇場で活劇「毒盃」他を公演（19日）。博多築港(株)の下級船員227名が労賃値上要求スト（24日）。３月　福岡市公報発刊。４月　九州帝国大学、工科大学を工学部と改称（10日）。須崎裏・大濠で民間主催の九州沖縄物産共進会開催（10日―５月９日）。５月　渡辺通６丁目に御大典記念の福岡県立図書館落成（１日＊４日一般公開、昭和20年６月の福岡大空襲で焼失）。福岡市役所監修『九州の中心福岡市大観』（博文社書店）刊行（５日）。大阪九州合併大相撲、浜新地で興行（30日―６月３日）。７月　祝部（ほうり）ヤス（櫛田女学校長）没（４日）。福岡日日新聞社が百道浜に海水浴場を開設（７日）。８月　福岡連隊がシベリア出兵（８日―９日＊11日・12日門司出港14日・15日浦塩上陸）。福岡日日新聞社の竹田雅弘（秋楼）・中野景雄（紫葉）も応召。福岡市が市会協議会を開催し米価高騰問題対策を協議（15日）。福岡日日新聞社翻訳部長の黒田静男、第12師団司令部付の特派従軍記者として渡航（24日＊11月１日帰社）。米騒動事件に関する政府の言論報道抑圧に抗議し寺内内閣弾劾九州新聞記者大会、西中洲の県第一公会堂で開催【★233】（24日）。姪浜炭坑で米騒動、軍隊が出動し鎮圧（29日）。九州帝大仏教青年会（福岡医科大学仏教青年会）が蓮池町善導寺内に無料診療所設立（31日＊10年社団法人、15年３月今泉に会館・寄宿舎建設）。９月　共進橋（８年12月19日「弁天橋」と改称）竣工（＊７年４月８日仮橋架設、８年11月改築工事起工）。10月　博多蓮池町の「光明館」を活動常設館「帝国館」と改称（３日）。博多券番新築落成式（19日）。福岡県下の小学校女教師大会、福岡市記念館で開催（７日―９日）。この年、正岡巌が川口町に新刊書店「中島勉強堂」開店。
	日本・世界事項：４月　北海道帝国大学設置（１日）。７月　武者小路実篤ら「新しき村」創刊。富山県魚津町の漁民主婦らが米の積み出し停止嘆願＝米騒動の開始（23日）９月　三井三池万田坑の坑夫暴動、軍隊出動し鎮圧（４日）。政友会の原敬内閣出生、初の政党内閣、福岡県からは野田卯太郎が逓信大臣として入閣（29日）。10月　スペイン風邪大流行。11月　ドイツ、連合国と和平調印し第一次世界大戦終結（11日＊死者１千万傷者２千万）。宮崎県児湯郡木城村に〈新しき村〉建設（14日）。12月　大学令・高等学校令公布（６日）。
注記	【★224】吉木幸子：● [記述なし]
	【★225】福永武彦：大正７年３月19日、福岡県筑紫郡二日市町の生まれ。13年４月、福岡市立当仁尋常小学校に入学。翌年、私立警固尋常小学校に転校。15年６月、父親の転勤で東京に転居。、開成中学、一高をへて東大仏文科卒。昭和54年８月13日没。「小説「廃市」をはじめ、詩、随筆、評論と幅広く活躍した作家福永武彦は福岡県筑紫郡二日市町大字二日市八三五番地（現筑紫野市二日市）で生まれた。母トヨ（長崎県佐世保市出身、明治二十八年生）は佐世保から大阪のプール女学校本科に学んだのち、川上花子（＊二日市の聖公会講義所出身の婦人伝道師）が望んでいたが行けなかった芦屋の聖使女学院を卒業後婦人伝道師となったようだが、遠縁に当たる末次郎と結婚した。武彦は一九二四年（大正十三年）福岡市浪人町に住み、当仁小学校に入学しているので、トヨは二日市集会あるいは福岡市内の教会となんらかの関係を持ったことが想像される。しかしトヨは翌二十五年武彦七歳の時、弟文彦を産んでまもなく二十九歳の若さで亡くなった（現在水城の地に眠っている）。年譜によると、武彦は五十九歳の一九七七年（昭和五十二年）十月東京都世田谷区松原の単一キリスト教朝顔教会井出定治牧師を病床に呼んで受洗している。」（『日本聖公会福岡教会百年史』）
	【★226】矢山哲治：大正７年４月28日、福岡市石堂町の生まれ。恒屋喜三郎・フサの第３子（次男）。14年４月、福岡市立奈良屋尋常小学校に入学し、のち春吉尋常小学校に転校（同級生に中村健次がいた）。昭和３年、祖父の実家の矢山家の養子となり矢山姓を名のる。６年春、春吉尋常小学校を卒業し、福岡県立中学修猷館に入学。10年春、中学修猷館第４学年を修了し、旧制福岡高等学校（理科甲類）入学。12年夏、長崎高商の学生だった中村健次と再会。中村を通して同じく長崎高商在学中の川上一雄を知る。13年２月、島尾敏雄、中村健次、川上一雄、富士本啓示、土師二三生ら長崎高商生の同人誌「一四世紀」創刊に参加（「一四世紀」は創刊と同時に発禁処分を受けた）。７月、福高在学中の鳥井平一を知る。８月14日、胸を病んでいた一丸章を南由莉（本名、藤扶美子）を通して知り、日赤今宿療養所に見舞う。一丸章との交際がはじまる。８月15日、第１詩集『くんしやう』上梓。14年４月、九州帝国大学農学部に入学。この頃、川上一雄を通して眞鍋呉夫と東中洲の喫茶店「メトロ」で会う。眞鍋呉夫との出会いにより「こをろ」発刊の計画を相談。福高、九大、長崎高商の文学仲間と頻繁に会ったり、手紙を書いたりして勧誘する。８月23日、「こおろ（こをろ）」第１回同人会を東中洲の喫茶店「ブラジレイロ」で開催。出席者は、原田義道、吉岡達一、原田和夫、川上一雄、小山俊一、久保山魏、山下米蔵、内村亨、眞鍋呉夫、矢山哲治の計10人。９月10日、「こをろ」創刊のため、矢山哲治は「九州文学」同人を辞退。10月10日、「こをろ」創刊号発行。15年４月、島尾敏雄が九州帝国大学法文学部経済科に入学し、「こをろ」の編集に参加。９月28日、第２詩集『友達』を上梓。同年12月15日、「こをろ」解散の動きが表面化し、明治製菓で開かれた同人会で矢山は解散を提案。雑誌存続を前提に改革を提案する川上一雄と対立する。16年１月、明治製菓（→ブラジレイロ）で「こをろ」再建のための同人会を開く。この会合で「こをろ」は過去との断絶のうえに新しく始めること、創刊号（通巻第６号）は３月に発行することを決定し、発刊の趣旨と規約を定める。この解散—再建の過程で、同人は43人から24人に減じた。12月15日、矢山哲治、第３詩集『柩』上梓。17年２月１日、久留米の西部51部隊に入隊。18年１月29日、午前６時30分頃、住吉神社でのラジオ体操からの帰途、西日本鉄道大牟田線の薬院—平尾間の無人踏切で、上り電車に轢かれて死去。享年24歳９ヶ月。事故死か自殺かは不明。18年６月、「こをろ」第５年春夏号（13号）は「矢山哲治追悼号」を特集。昭和19年４月、「こをろ」終刊（第５年秋冬号・14号）。
	【★227】富安謙次（風生）：明治18年4月16●17日？、愛知県八名郡金沢村の生まれ。本名は謙次。一高をへて明治43年、東京帝大法科大学卒。逓信省の官吏となり、大正７年６月、34歳のとき福岡為替貯金支局長として赴任。旧知の岩田紫雲郎・高崎烏城の紹介で吉岡禅寺洞を識り、また市内の書店丸善で高浜虚子の著書『進むべき俳句の道』（実業之日本社　大７・７）を手にして耽読。俳誌「天の川」に参加。大正８年５月19日、本省へ転勤のため福岡を去った。昭和8年11月、第１句集『草の花』（龍星閣）上梓。昭和54年２月22日没。「大正７年夏から８年夏まで、約１年の間、わたしは為替貯金支局長として、福岡に在任した。廻り合せで、あとにも先にもただ１度きりに終ったこの地方勤めというものの味は、思い出しても甘く懐かしい。／当時まだ独身で、年は数えて34.5歳という頃であった。世の中は今と違って静かであり、役人生活も、至極鷹揚に、のんびりしたものであった。官舎と役所とは、短かい廊下でつながっており、その廊下を、毎日官舎の小母さんが、お膳にのせて昼弁当を局長室に運んでくれたものだった。／あんなに何もしないで——出来もしないで——大きな顔をして局長の椅子に納まっていたことは、思えば恥かしい。老練な課長——といっても、貯金と振替と庶務と３つだけだった——や、有為の係長諸君が、困った局長をかばってくれたり、手をとってくれたり、蔭でどんなにか、わたしの知らない苦労をしていてくれたことであったろう。——Ｙ課長の慈父のような温顔を思い浮べると、感傷的にさえなってしまう。／そうした実情であっても、福岡の１年は、わたしの役人生活の上からは、一抹の煙のような淡いものだけれど、わたしの一生を支配することになった俳句との縁が結ばれたのは、この時ここであったのだから、わたしにとって忘れることの出来ないこの１年間であり、福岡という土地である。——だが、むろんそんなこと、福岡貯金局「50年のあゆみ」とは、何の関係もないことである。「50年のあゆみ」の思出話を需められても、わたしはただ赧然たるばかりである。／仕事の上のことは何一つ記憶に残らない、——たとえば、いま四百億近くにもなるという貯金額が、当時何ほどであったのか、という答え一つ出来ない。それでいて、目をつぶると、因幡町の官舎の板塀の外が草ぼうけの空地であり、そしてそこに楠の木？か何かがぽつんと１本立っている、などというつまらぬことばかり、不思議に鮮かな印象として残っている……／この道をここにふみそめ草の花／春風や生涯のこの一とくさり」（『回顧50年』福岡地方貯金局、昭36・３）
	【★228】俳誌「天の川」：禅寺洞が岩田紫雲郎・高崎烏城・清原拐童らを誘って創刊。はじめホトトギス系の俳句誌として出発。当初は雑詠欄選者に、在京中の清原枴童の意見で長谷川零余子を迎えたが、２年後の大正９年11月から禅寺洞が担当した。富安風生・芝不器男らを輩出し、また禅寺洞はやがて九大俳句会をも指導、医学部出身の横山白虹・北垣一柿や、芝不器男、篠原鳳作らを育てた。昭和２年から横山白虹が編集を担当。戦局悪化に伴い休刊し、22年８月、北垣一柿・片山花御史らを中心に復刊。口語自由律俳句の傾向を強め、36年終刊。吉岡禅寺洞「天の川創刊当時の思ひ出」（「天の川」昭11・１）がある。
	【★229】倉田百三：明治24年２月23日、広島県比婆郡庄原町の生まれ。43年春、広島県立三次中学を卒業後、上京し第一高等学校に入学。大正２年、同校を退学。４年12月、京都市外で西田天香の主宰する宗教団体一燈園に入り信仰生活を送る。６年３月、神田晴子との間に長男地三誕生。この年から体調思わしくなく関節炎、骨盤カリエス、左手カリエスなどで入退院をくり返した。『出家とその弟子』（岩波書店、大６・６）上梓。７年７月、肋骨カリエスを併発し、来福して九大附属病院に久保猪之吉博士を訪ねた。当時28歳（数えどし）。在福中は福岡市西町（現・今川橋）の金龍寺境内にある貝原益軒記念堂に妻子と住み、九大病院に通院した。柳原白蓮や画家の児島善三郎らと交流し、一方、武者小路実篤の〈新しき村〉運動に共鳴して自宅にその支部を置いた。翌年11月、福岡を去った。昭和18年２月28日没。後年、金龍寺境内には、「この頃のわれの心のさやけさや来る朝々をただに迎ふる」と刻した倉田百三歌碑が建立された。
	【★230】郭沫若：1892年11月16日、中国四川省の生まれ。日本に留学し、六高をへて大正７年９月、九州帝大医科大学に入学。１年間留年後、大正12年３月、同大医学部（＊大正８年４月「医学部」と改称）を卒業。耳の疾患のため革命文学に転じ、帰国。蒋介石のクーデターに遭い、再度来日。中国古代史の研究を続け、日中戦争勃発直後、郁達夫の仲介で帰国(日本脱出)。戦後は副首相・科学院長・中日友好協会名誉会長などを歴任した。歴史学者・詩人・劇作家としても名高く、1978年６月12日没。
	【★231】白水吉次郎：明治32年2月28日、福岡市行町17番地（現・博多区）に生まれた。大正３年、16歳のとき福岡貯金支局に勤務、同じ職場にいた杉野朴・鶴田俊美らの影響で歌作を始め、やがて胸の病気のため職を離れた。同人誌「響」・「エニグマ」・「ハカタ」などに参加。各地を流浪し病気と貧困のうちに歌作に励んだ。大正９年８月、アララギ同人。歌作の傍ら少年雑誌の編集に携わったりしたが、昭和４年４月５日、喉頭結核のため数えどし31歳で没した。没後、鹿児島寿蔵・大坪草次郎らによって岡麓の序を付した『〈アララギ叢書第五八編〉白水吉次郎歌集』（昭８・１）が刊行された。「白水吉次郎の名は、鹿児島寿蔵、鶴田俊美、古川俊雄の名といつしよに、草創期の福岡歌壇を背負つた人として永く遺るだろう。白水は明治三十二年、福岡市行町十七番地に生れたが、父は饅頭屋の傍ら博多仁和加師を兼ねていた。白水は、大正三年十六歳で福岡貯金支局の原簿助手になつた。日給十七戔であつた。白水は翌年に事務員となつて日給二十六戔を得た。この職場に、杉野朴、鶴田俊美、古川俊雄などの歌人がいたので、その影響で白水は大正五年ごろから短歌の道に入つていつた。二十歳ごろから胸を病み二十歳の大正七年に貯金局を辞職したが、大正八年、二十一歳で再度、貯金局に勤めた。当時、上記の歌人、それに戸石泰、木村繁男などで結成したハカタ詩社から機関誌「ハカタ」が出ていた。「ハカタ」は、大正七年九月の創刊である。その創刊から白水は短歌を発表したが、名は吉三であつた。／その二号から人形碧草のペンネームで、当時、東中洲で人形を作つていた鹿児島寿蔵が加わつた。この「ハカタ」は大正八年七月に「南方芸術」と改題した。白水は八月、病気で辞職し博多湾西戸崎養生院に入院して歌作を続けた。大正九年三月、鹿児島の上京と共に「南方芸術」は十三号で潰れた。この年八月、白水は「アララギ」に入会して、病と闘いながら、昭和四年、三十一歳で東京に客死するまで、この道一すじに生きた。」（原田種夫『名作のふるさと（九州篇）』読売新聞九州総局、昭31・８）
	【★232】鹿児島寿蔵：明治31年12月10日、福岡市下新川端町の生まれ。歌人・紙塑人形作家。父祖の地は福岡県朝倉郡上秋月村。大正２年、福岡高等小学校卒業。少年時代より正岡子規に親しみ、歌作に励む。大正７年、上京して岡田三郎助主宰の本郷洋画研究所に入り、翌８年、人形制作の芸術運動を起こし野口光彦・堀柳女らと「甲成会」を結成。いったん帰郷したが、翌９年再び上京。「行路」創刊に参加。白水吉次郎につづいてアララギに入会し、島木赤彦に師事。大正15年３月赤彦没後は土屋文明に師事。昭和10年、歌誌「短歌研究〈優秀作家特集号〉」に「海地獄」30首を発表し、堅実な作風が注目された。16年８月、歌集『朝汐』（古今書院）上梓。19年、アララギ選者。20年11（●12？）月、「アララギ」誌の寿蔵選歌欄の会〈朝汐会〉の機関誌「朝汐」創刊主宰。21年、関東アララギ会誌「新泉」を編集・発行する。紙塑人形製作を本業とし、35年、第2回紙塑人形・テラコッタ個展を日本橋三越で開催。36年、重要文化財（紙塑人形）保持者（人間国宝）。38年、宮中歌会始選者となり、計10回その任にあたる。昭和57年8月22日没。『鹿児島寿蔵全歌集』（新星書房、昭63・４）ほか歌集は多く、また『寿蔵紙塑人形』（毎日新聞社、昭47・４）『人間国宝鹿児島寿蔵展—人形と短歌』（朝日新聞社文化企画局西部企画部、平９・４）などもある。
	【★233】寺内内閣弾劾九州新聞記者大会：「九州でも、政府の言論圧迫を糾弾すべく、福日、九日の両社記者間に実行委員を設けて協議をととのえ、八月二十四日午後一時より、福岡市西中洲県第一公会堂において寺内内閣弾劾九州新聞記者大会を開いた。九州および山口の各県から二十八社三十名、ほかに地元三社から三十余名参会、先ず協議会を開いて博多毎日新聞社長三隅忠雄の推薦で、福日編集長菊竹淳を座長に推し、かねて起草の決議案を附議し、一、二字句の訂正あつて直ちに大会に移り、福日側の発議にて九日主筆篠崎昇之助を座長に推し、三隅博毎社長開会の辞、大阪毎日福岡支局長北尾鐐之助決議文朗読、次いで関門日日、馬関毎日、豊州新報、熊本日日、鹿児島朝日、宮崎毎日その他十余社の祝電、賛成電報を九日の筒井條之助より披露し、福日斎田耕陽の閉会の辞あり、大阪毎日福岡支局長福島久吉の発声で一同万歳を三唱、終つて食卓を開き、席上福日経済部長阿部暢太郎、西肥日報主筆栗山賚四郎、長崎新聞社長中川観秀、九州日日新聞編集長宇部政行、佐賀毎日栗野、三池毎日川崎ら相次いで卓上演説をなし、何れも寺内内閣の失政、ことに言論抑圧を痛撃して大いに気焔を揚げ、午後五時大会の幕を閉じた。」（『西日本新聞社史』）
関連情報	https://www.lib.kyushu-u.ac.jp/ja/collections/q_fukukin_chr

詳細

レコードID	410584
権利情報	福岡都市圏近代文学文化史年表の著作権は、それぞれの執筆者に属します
西暦	1918
和暦	大正7年
登録日	2013.08.21
更新日	2021.12.14