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概要 |
本論では、インド中央政府による映画をめぐる諸政策を国家による芸術的正統性の構築・利用の事例としてとらえ、国家が芸術の認定者/守護者/創造者としてどのような政策・制度・言説を展開してきたか、それはインド社会全体、また映画をめぐる世界システムとどのような関係をもっているのか、を考察する。インド中央政府が採用している映画支援の諸制度は、教育-財政的支援-評価・普及-世界への流通-保存を一貫して担う、映画...的正統性の再生産システムを構成しているが、その再生産の支えているのは国外の映画界から与えられてきた価値基準と正統性である。インドで主流を占める「商業映画」の否定のうえに自らを位置づける国家主導の映画界は、その価値基準を表す「芸術映画」という概念とそれをめぐる言説をとおして、欧米主導の世界の映画界とのつながりを確保しようとしてきた一方で、世界に流通可能な真正なインドの表象を生産する者としての正統性を自らのうちに囲い込んできたといえる。そしてそれにより、「芸術映画」というより正統な「近代」にアクセス不可能な人々とかれらが生きる現実とを排除し続けてきたのである。続きを見る
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