<紀要論文>
話本小説と白話文の起源について : 『六十家小説』の版本上の特徴を手がかりとして

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概要 筆者は, 拙稿「清平山堂『六十家小説』をめぐって-- 『宝文堂書目』著録諸本小説の再検討」(『東方学』85,1994.1)において,従来宋元時代の諸本が著録されていると考えられていた『宝文堂書目』の記録は,実は明嘉靖年間刊行の『六十家小説』を中心とする同時代の小説であることを論証した。本稿は,前稿の結論を承けて,『六十家小説』のテクストは何に由来するのかという問題を,残されたテクストの版本上の特徴...を手かがりとして考察するものである。宋元諸本の存在が目録学的に否定された以上,現存最古の諸本小説集『六十家小説』の由来を考察することは,すなわち話本小説および白話文の起源を探ることにはかならない。 まず前稿の要点を整理したうえで,第2章では『六十家小説』各篇の冒頭・行款。版心などの版式,および墨丁といった版本上の特徴を考察した。その結果,行款と魚尾の有無において明らかな差異を示す「風月瑞仙亭」「洛陽三怪記」の二篇ほ,清平山堂の刊刻とは考えられない。さらに,冒頭部分の体裁の異なる「西湖三塔記」「風月相思」も他の諸篇とは来歴を異にする可能性がある。一方,影印本で確認できる27篇のうち,17篇までに墨丁(または空白)が見られる事実は,『六十家小説』が何らかの原本に基づく重刻本であり,原本の不鮮明な個所が墨丁となったことを示唆する。 以上の考察を承けて,第3章では「諸本-説話人の底本」という通説を,近人および明人の「話本」観・「話本」の語義・出版形態の三点から再検討した。さらに第4章では,元雑劇の白,すなわち台詞は,上演時のものではなくて,明代になって付加されたものであることを取り上げて,宋元時代に白話文が完成していたことは考え難く, むしろ話本小説の成立と白話文の形成は並行的,同時進行的だと考えるべきことを述べた。 なお,現在流布している文学古籍刊行社の影印本には種々の改竄が施されている.そのため,削除された版心の状況は『六十家小説』版面特徴一覧表において,また文字に改められた墨丁は附録『六十家小説』墨丁一覧表において,それぞれ底本の状況を回復した。続きを見る

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登録日 2009.04.22
更新日 2020.10.09