<Doctoral Thesis>
Color discrimination ability among the elderly and related improvements in living environments

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Abstract  今日の高齢社会では、高齢者の増加に対して、医療、介護、安全確保など様々な社会システムの見直しが必要となり、高齢者に配慮した環境の改善も急務となっている。そこで、本研究では、これからの超高齢社会に向けて高齢者のための快適で安全な生活環境という視点から高齢者の視覚特性に着目した。高齢者および若齢者の色彩弁別能力の実態を調査し、加齢に伴う色彩弁別能力の変化を分析するとともに、加齢による変化に伴う日常生...活への影響や問題点を明らかにすることを目的とした。さらに、その結果を高齢者および若齢者にとって安全で快適な色彩環境づくりに役立てたいと考えた。  まず、第1章では、本研究の背景と目的について述べた。第2章では、60~85歳の高齢者100名を対象に100 hue testによる色彩弁別能力の実態調査を実施した。調査はD65蛍光ランプを設置した移動可能な装置内で行い、作業面照度は約500Luxとした。分析は年齢層別、眼疾患有無別に100色相すべてを示す方法で行った。その結果、加齢が進行するにつれてすべての色相で色彩弁別能力は低下することが確認できた。100色相別の色彩弁別能力は、すべての年齢層で赤紫領域及び青緑領域の色相が低く、逆に黄赤領域及び青紫領域の色相が高かった。このことから、高齢者層では、識別しやすい色相と識別しにくい色相に一定の方向性があることが明らかになった。眼疾患有無別では、白内障を有する者とそうでない者との間で総偏差点に有意な差がみられた。高齢者にとってわかりやすい色彩環境を実現するためには、白内障を有する高齢者に配慮する必要があることが示唆された。加齢に伴う色彩弁別能力の低下には、視力、白内障、水晶体の黄変、網膜照度の低下、脳内の情報処理能力の低下など様々な影響が考察された。  第3章では、100 hue testを用いて第2章と同様の条件で若齢者72名を対象に色彩弁別能力の実態を調査した。若齢者と高齢者の色彩弁別能力を比較することによって、加齢による色彩弁別能力の変化について検討した。その結果、高齢者は若齢者と比較して総偏差点が高く、色彩弁別能力が劣っていることが明らかになった。総偏差点と暦年齢、総偏差点と視力の関係においては、高齢者群にのみ相関がみられた。100色相別平均偏差点は、すべての色相において高齢者群の方が偏差点が高かった。偏差点の高い色相は、若齢者群では青緑と紫領域であり、高齢者群では赤紫と青緑領域であった。青緑領域は年齢に関係なく識別しにくい色相で、赤紫領域は加齢に伴って識別しにくくなる色相であると考察された。高齢者群と若齢者群の色相別平均偏差点の差の検定の結果、100色相のうち88色相において有意な差がみられた。年齢に関係なく識別できる色相を有効に使うことで、高齢者および若齢者にとって安全で快適な色彩環境づくりに役立てられると考察した。  第4章では、高齢者の視覚に関する生活状況について調査を行い、第2章で測定した視力と色彩弁別能力が実生活にどのように影響しているか分析することを目的とした。色彩弁別能力の調査対象者と同じ高齢者100名を対象に、視覚に関連する生活状況と自動車の運転状況の調査を行った。高齢者の83%が視力の衰えを感じていた。生活上の支障については、新聞の文字の読みの支障と視力との間に関連はみられたが、他の支障と視力との間ならびに生活上の支障と色彩弁別能力との間には関連はみられなかった。このことから生活上の支障は色彩弁別能力よりやや視力の影響を受けていると推察された。自動車の運転中の視界の見えの程度と天気との関係では、夕方から夜間に「歩行者の姿」の見えの程度と天気との間に関連がみられ、曇天から雨天になるほど見えにくかった。見えの程度と時間帯との関係では、晴天と曇天の場合に関連がみられ、夕方から夜間になるほど見えにくかった。運転中の見えの程度と100 hue testの総偏差点との関係では、夕方から夜間で曇天と雨天の場合に関連がみられ、総偏差点が高く色彩弁別能力の低い人ほど見えにくかった。他の時間帯と総偏差点との間ならびに運転中の視界の見えの程度と視力との間には関連はみられなかった。このことから運転中の見えの程度は視力より色彩弁別能力の影響を受けていると推察された。高齢者の交通事故や転倒、転落による事故防止対策が急務となっていることから、今後は高齢者の視覚特性を考慮した色彩計画が重要であると考察した。  本研究では、高齢者に配慮した快適で安全な色彩環境づくりを目指すために、高齢者の加齢による色彩弁別能力の変化やそれに伴う日常生活への影響を検討した。その結果、加齢とともに視力や色彩弁別能力が低下すること、それらの低下に伴い日常生活や自動車の運転中の視界の見えの程度への影響が認められた。これからの生活環境の整備やものづくりにおいては、色彩弁別能力の高い色相を中心にして、安全性と美しさの両面を具備した色彩計画の必要性が示唆された。加齢に伴う視力や色彩弁別能力の低下、眼疾患など、高齢者の視覚の現状に配慮した色彩環境の整備が必要であると考えられる。show more
Table of Contents 目次 第1章 序文 第2章 高齢者の色彩弁別能力 第3章 高齢者と若齢者の色彩弁別能力の比較 第4章 高齢者の生活環境における色彩弁別能力および視力の影響 第5章 総括 引用文献 謝辞 巻末資料

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pdf k030-01 pdf 112 KB 317 表紙
pdf k030-02 pdf 716 KB 391 第1章
pdf k030-03 pdf 1.90 MB 353 第2章
pdf k030-04 pdf 0.98 MB 355 第3章
pdf k030-05 pdf 1.58 MB 344 第4章
pdf k030-06 pdf 349 KB 268 第5章
pdf k030-07 pdf 896 KB 238 引用文献
pdf k030-08 pdf 71.6 KB 231 謝辞
pdf k030-09 pdf 660 KB 239 巻末資料

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Created Date 2009.08.13
Modified Date 2020.11.11

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