<Doctoral Thesis>
Formal feature regarding water town in the late medieval Netherlands : analysis for the urban form of Dutch water town based on the drawings, "van Deventer"

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Abstract 論文内容の要旨(和文:1.3頁)
 本論は,低地オランダ諸都市に共通する都市形態の内的構成原理の一端を明らかにするため,都市平面図の共時的形態分析による基礎的研究である。分析の一次資料として,同地域諸都市の初期的段階を統一的に描いた16世紀の絵地図「ファン・デーヴェンター」を参照し,復原平面図による実体形態を対象に対照考察を進める。本論は,都市形態の構造的側面が平面図として表出していることを仮説的視...点に,同実体形態が組織化される様態を部分的な構成の「修辞」から類型化による差異性の考察と,同類型間を超えて共通する構造的相同性を捉えることにより,都市形態構成の全体性を実証的に記述する試論として位置づける。
 分析では,G.バークが指摘した低地オランダの都市基本類型「堤防型都市」に対し,「堤防」を基軸とした都市構成の観点から再解釈することを一義に,同地域に共通する「水」の支配と人為的な都市環境形成の様態を共時的に捉えられる都市図を資料に,都市形態の内的構成原理を捉えることを目的としている。形態分析では,「堤防」を介する水路軸と街区配列の構成関係に着目し,対象諸都市の周辺水域環境から内部の運河空間までの部分形から全体形までを横断的に観察した上で,相対化して関係づけられる各要素の構成的弁別性を類型モデル化する。そして各類型間の差異から考察される部分の構成関係と,それらを統御する「水」の支配と都市の組織化にみる共時的同一性を捉えることにより,都市構成の全体性を理解する分析方法とする。
 本論は3章で構成され,序章では低地オランダにおける対象の特色と研究背景から論点を明確化し,同分析方法を提示した。まず第1章では一次資料「ファン・デーヴェンター」の形態分析の資料的有用性を確認し,分析の前提に位置づける。また着眼点として,低地オランダでは治水を一義とする人工地形が一次要因として都市形態を組織化する秩序関係が指摘され,同地域の水域と都市を介する「堤防」が物的構成上の外在条件として判読される。その「堤防」を形態分析の評価軸に設定し,第2章では低地オランダの75都市を対象に,都市全体構成に着目し,街区の配列と水路網の組織化について検討する。第3章では運河を内包する61都市を対象に,都市の部分形としての運河空間に着目し,同空間内外の関係形式として周囲の街区や構築物等の物的側面で規定される空間構成について検討する。以上の都市形態の2側面を都市核施設の配置と相関させることにより,都市構成の特徴と意味的側面を理解する分析の枠組みとする。以下に第2章以降の分析で明らかとなった結果を要約する。
論文内容の要旨(和文:2.3頁)
 第2章では,低地オランダの都市原型として紹介されるG.バークの類型「堤防型都市」を物体構成的観点から再定義し,街区構成と水路網形成の構成原理について検討を進めた。街区構成は,都市と周辺水域を介する「堤防」を基本軸として設定し,中間レヴェルの組織単位「街区群」に着目し,部分から全体形を形づくる配列構成を捉えることにより,結果的に5つの構成類型に分類された。一方で都市核施設役場と教会の分布状況から,堤防領域との配置で関係づけられる都市的中心の領域性を検討すると,堤防領域から都市域の中心へ段階的に配置される特徴が指摘され,「堤防」を介する都市の2極性が推測された。以上の分析の結果,低地オランダの都市は,所与の水域環境に隣接する「堤防」を基軸に街区が組織化される構成類型とその差異性が示された。次に所与の隣接水域と「堤防」から発展する水路網に着目し,水路による都市形態の自律的展開について考察する。分析の前提に所与の水域形態と都市の立地の構成類型を設定し,G.バークの都市類型を水路と物体構成で再解釈した都市発展形式を5段階で類型化し,両類型の組合せから地理的要因を超えて共通する都市の発展形式について図式化して考察を行った。結果として所与の隣接水域や「堤防」とは独立して,都市と水路網との構成的展開が示され,同地域の都市全体形を秩序化する内在的な構成的相同性が共時的同一性として検証された。
 第3章では,運河空間の外形構成に着目し,動線空間としてのヴォリュームの連続的配列を基本に,分節や都市施設の位相による物的要因で関係づけられる空間構成について検討を行った。同視点は,第2章で整理された都市全体形の街区構成や水路軸の配列構成が,部分領域として運河空間に表れる物体構成上の影響関係を理解する視点として位置づけられる。分析では,対象運河の位置関係と空間ヴォリュームの定量評価を前提に,「分節」で区分される各「単位ヴォリューム」の全体配列と,分節や位相の生成要因となる「直交要素」を部分形として対照考察し,部分的な構成類型と都市施設との隣接関係で規定される物体構成に関して類型考察を行った。結果的に運河の線形とは独立した同空間の多様性を生成する物的要因として,都市に共通する構成6類型が整理された。その物的影響下に規定される同地域の都市空間構成として,1)都市施設の配置,2)広場の配置3)水路の分岐,4)運河空間の景観に主たる考察項目が抽出された。総じて都市部分形の運河空間では,水路を基軸とした帯状を構成する連続的な動線空間において,運河沿いの街区配列や都市施設の位相的配置にその独立した「分節」を生成する物的要因が認められ,同空間の多様性を生成する二次的な都市計画上の序列関係とその組織原理が指摘された。
 以上,絵地図「ファン・デーヴェンター」を資料に低地オランダの「水」の支配を一義とする都市物体構成の全体性について着目し,複数都市の全体形から部分形・運河空間までの包括的視点から対照考察した結果,水路軸と街区配列の部分的な構成の差異性および横断する共時的同一性が捉えられ,同地域に共通する都市形態の内的構成原理の一端が明らかとなった。
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Created Date 2009.08.13
Modified Date 2020.11.16

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