<博士論文>
街路景観の快適性に影響を与える公共沿道空間に関する研究

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論文調査委員
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概要  街路空間は都市生活の基盤であり,各地で景観整備事業は進んでいるが,心地良く歩ける街路や美しく豊かな街路景観の形成には,今後は専門家と生活者をつなぐ視点が必要であるとの考えから研究を進めたものである。
 本研究は,都市の公共空間である街路にあって,建物のセットバックや公開空地などで出現した半公共的な空間である公共沿道空間を対象空間とし,歩きやすさや行動のしやすさに加えて生活の質を反映した社会生活上の...心地良さも含んだものを街路景観の快適性と呼ぶ。街路景観イメージと都市環境装置の関連性や公共沿道空間と歩行者の関連性を考察し,環境とものと人との関係における街路景観の快適性に影響を与える公共沿道空間についての,計画・設計段階での考え方を導くことを目的としたものである。
 本論は,都市環境装置の設置状況の把握から着手した。都市環境装置の数量と分布,色調による色彩調査などの実態調査を行ない,抽出された街路景観のパターンを用いて街路景観イメージの意識調査を行なった。その結果,都市環境装置の充実は,街路景観イメージの向上に明らかな効果が認められ,また,都市環境装置が連続することにより,相互に影響して全体の街路景観イメージを高めるなど,都市環境装置と街路景観イメージの関連性を明らかにした。その過程で,緩衝空間である公共沿道空間の重要性が見い出された。 公共沿道空間の状況と歩行者の行動を把握するために,公共沿道空間の構成分類調査を行ない,その結果から調査地点を選定して,行動観察調査を行なった。滞留の時間が長くなる程,滞留の種類が増えることが確認され,行動観察の結果と滞留の発生する状況から公共沿道空間を景観型,連続型,分節型に再構成した。また,構成要素の増加による実験調査と行動観察調査を行なって,構成要素による利用度の違いと,構成要素が増加すると滞留の種類が増えることを確認することができた。長い滞留の時間に出現した多様な滞留の種類を快適な行動と捉えて,快適な行動には都市環境装置の充実と関連性が必要であることを導き,公共沿道空間と歩行者の関連性を明らかにした。
 以上の実態調査から得られた知見を検証するためには,まず快適性について考える必要があるため,快適性の定義についての整理と快適性の構成についての整理を行なった。安全性と秩序性のうえに快適性が存在するという快適性の階層と,通行の一部である滞留行動の,種類や時間が長いものが快適行動に移行するという快適行動の階層を対応させ,次に,行動の種類を快適性の階層に分類して,休息する,歓談するなどを上位快適行動と位置づけて,さらに公共沿道空間の再構成に対応させた。
 検証として,福岡市と同様の政令指定都市である広島市において,公共沿道空間の行動観察調査を行なって,同様の分析結果を得た。また,上位快適行動には都市環境装置が関係することがわかった。また,公共沿道空間の有効性と民地との関連性と,連続型と分節型の混在効果を導いた。
 構成要素に関するまとめと街路景観の快適性と環境特性および感性的属性との関係から,公共沿道空間のあり方に関する考察の結果,連続型と分節型の公共沿道空間が混在しながら連続し,民地との連動や都市環境装置の充実と快適行動を引き出すコトが加わることで街路景観の快適性が形成され,さらに今後は都市環境のモラルの育成も重要になるという,構成要素の仕組みと関連性を提示した。そして,街路景観の快適性の構成を成立させる4点である「部分と全体の階層的関係による秩序性」「中間領域の有効性」「要素間の関係性と連続性」「行動と快適性の循環」から,公共沿道空間は,中間領域の持つ有効性を活かして,行動と快適性の循環による蓄積の受け皿として存在する。また,街路景観の快適性には部分と全体の関連性が深くかかわるが,階層的関係による秩序性が成立したうえで,ディテールからの発信や影響力が有効となる。加えて,各要素は関係性をもって存在していることから効果が高まる,という街路景観の快適性に影響を与える公共沿道空間の考え方を導いた。そして,街路景観の快適性は,人(快適行動)と場(公共沿道空間)と要素(都市環境装置)との関係性を巻き込みながらスパイラルに成長する,という快適性と関係性の構造を示すことができた。
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目次 目次
 序 章 研究の目的と構成
 第1章 街路景観の構成要素の状況と人との関わり
 第2章 公共沿道空間の状況と人との関わり
 第3章 公共沿道空間における行動と構成要素の関係
 終 章 街路景観の快適性に影響を与える公共沿道空間と研究のまとめ
 資料編
 謝辞

本文ファイル

pdf k068-01 pdf 167 KB 363 目次
pdf k068-02 pdf 1.34 MB 279 序章
pdf k068-03 pdf 8.89 MB 374 第1章
pdf k068-04 pdf 3.97 MB 244 第2章
pdf k068-05 pdf 3.97 MB 259 第3章
pdf k068-06 pdf 8.23 MB 354 終章
pdf k068-07 pdf 23.7 MB 524 資料編
pdf k068-08 pdf 54.1 KB 194 謝辞

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2009.08.13
更新日 2020.11.16

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