<博士論文>
オゾン水中におけるゴム材料の劣化挙動解析

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概要 水中のオゾンは非常に高い酸化力を有し、反応、分解後は無害な酸素や水へと変化し、残留性も低い。これらの利点のため、有機物の除去を目的とした下水、浄水処理等の分野においてオゾンの利用が増加している。一方で、オゾンの溶解した水、いわゆるオゾン水中でゴム材料を使用した際に、劣化に伴う不具合が生じる事例が発生しつつある。気相ではオゾンに対し高い耐性を有するエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が、水相では...オゾンにより損傷を受けやすいという、既存の概念とは反した現象が認められる。現状において、オゾン水中におけるゴム材料の劣化現象の特徴、反応機構は不明瞭である。本論文では水道用ゴムとして多用されるEPDMと、化学的安定なフッ素ゴムの一種であるポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン)(FKM)のオゾン水中における劣化挙動を解析した。オゾン水処理後のEPDM表面には粘着力を有する液状物質が出現した。このEPDM表面の粘着性物質は、EPDM分子鎖の酸化劣化により低分子量化した物質に由来することをフーリエ変換赤外分光(FT-IR)法、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いたキャラクタリゼーション結果から明確にした。さらに、表面近傍に生成した劣化物がオゾン水中へ徐々に溶出するとともに、EPDMの重量が減少した。EPDM表面が激しく損傷した原因の一つとして、表面の親水化及び低分子量化が進行したことにより、オゾン水が試料内部へ深く浸透することを容易にしたためと考えられた。また、水中におけるオゾンの自己分解反応の過程で生成するヒドロキシルラジカル(?OH)がEPDMの劣化因子として作用することを、オゾン分解速度とEPDMの劣化速度の関係及び処理後表面の官能基を帰属した結果より結論付けた。さらに、核磁気共鳴法により特定した劣化生成物の化学構造から、オゾン水中のEPDMの劣化は、オゾンとの直接酸化反応以外に、?OHによる主鎖のC-H結合の水素引き抜き反応を起点とした主鎖分解を伴う自動酸化反応が寄与していると推察された。水道水を原料とするオゾン水使用環境を想定し、残留塩素の共存するオゾン水中でEPDMを処理した結果、EPDM表面はオゾン水中と同様にマクロな損傷を発現した。ただし、残留塩素の共存するオゾン水中では、オゾン水単独で処理した場合に比べて、表面近傍の分子鎖切断がより進行していた。この理由として、EPDM表面近傍が親水化され、酸化力を有する残留塩素がEPDM試料内部に浸透しやすくなったこと、分子鎖がラジカル等の活性化状態に誘起され、酸化力の弱い塩素との反応も生じやすくなったことが原因として推察された。したがって、水道水を原料とするオゾン水中でゴム材料を使用する場合、オゾンだけでなく残留塩素の存在も考慮する必要がある。ゴムの一般的な補強剤であるカーボンブラックまたはシリカを配合したEPDMをオゾン水中で処理した結果、カーボンブラック配合EPDMの劣化による損傷は、シリカ配合EPDMより著しかった。この損傷度合いの差異には、カーボンブラックとシリカの性質が寄与していることが判明した。また、実際の使用状況に即した条件として、オゾン水中に残留塩素を含む場合も検討した結果、やはりEPDMに含まれる補強剤の差異により、劣化挙動が大きく異なっていた。これらの結果は、ゴム材料に配合された無機充てん材の性質が、そのゴム材料のオゾン水中における劣化挙動に強く影響を及ぼすことを示唆した。オゾン水処理後のFKMは、EPDMとは異なり、マクロな表面形態変化は認められなかった。また、FT-IR法やSECによる分析結果より、主鎖構造の変化は認められなかった。これは主鎖中のC-F結合が極めて安定であることや、フッ素原子の嵩高さや電気陰性度により、C-H結合に対するオゾンや?OHとの反応が生じにくかったと考えられた。一方で、オゾン水処理後FKM表面近傍の力学特性がわずかに変化した。これは、FKMの架橋点として導入した構造がオゾン水処理により劣化したことにより、表面近傍の架橋密度の低下を引き起こしたことが起因していた。本論文で得た知見は、オゾン水中におけるゴム材料の劣化挙動の基礎情報となるものであり、様々なゴム材料のオゾン水に対する耐久性評価、劣化調査において活用が期待される。続きを見る
目次 目次 第1章 序論 第2章 オゾン水中におけるEPDMの劣化現象 第3章 オゾン水中におけるEPDMの劣化反応機構 第4章 オゾン水中の残留塩素、EDPM に配合したフィラーが劣化挙動に及ぼす影響 第5章 オゾン水中におけるフッ素ゴムの耐久性評価 第6章 総括

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登録日 2013.06.19
更新日 2023.12.08

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