<博士論文>
ハイブリッド最適化アルゴリズムを用いた多目的最適設計手法の開発

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論文調査委員
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概要 電子計算機を取り巻く環境の急速な発展をうけて,近年の製品開発の現場では計算機支援技術が積極的に導入されるようになり,製品開発の初期段階で様々な計算力学的シミュレーションが行われるようになった.その一方で,機械や構造物の性能向上と低コスト化の要求が強まるにつれて,解析モデルの精密化(自由度の増加)が必要となり,数値解析で取り扱う問題は益々大規模化する傾向にある.また,顧客の多様な要求を高いレベルで満...たす製品を設計するためには,複数の目的を同時に最適化する多目的最適化問題を取り扱うことが求められるため,これを解決するための効率の良い多目的最適化手法の開発が望まれている.このような多目的最適化問題に対する有効な解法として,多数の個体を用いて解空間を大域的に探索することのできる遺伝的アルゴリズム(GA)がある.GAは解空間の大域的探索能力に秀でており,局所探索能力に秀でた疑似焼き鈍し法(SA)とハイブリッド化させることによって両者の長所をさらに引き出すことができ,効率的な最適化アルゴリズムを構築できる可能性がある.一方,最適設計問題は要求を満たす設計案が得られるまで順解析を繰り返し実行する必要があるため,特に機械や構造物に対する大規模な計算を要する解析では計算機の性能を最大限に引き出すことのできる高効率で信頼性の高い計算力学手法が強く求められる.このような要請を受けて開発された動解析手法として,一般化伝達剛性係数法が挙げられる.一般化伝達剛性係数法は,現在広く利用されている有限要素法よりも非常に高速に静解析や動解析解を実行できることから,パーソナルコンピューター程度のマシンを用いた場合にも現実的な時間内で計算を終了することが可能となり得る.そこで本論文では,静解析および動解析に一般化伝達剛性係数法を用いたSA/GAハイブリッド最適化手法を開発し,2次元骨組構造物の位相・形状同時多目的最適化問題に適用した.また,提案した最適化手法のさらなる性能向上を目指したアルゴリズムの改良を試み,その有効性について検討した.本論文は全5章で構成されており,各章の内容は以下の通りである.第1章では,機械・構造物における最適設計手法と計算力学的手法の歴史と概略について述べ,関連する先行研究を示した.その上で,一般化伝達剛性係数法を利用することの利点とGAやSA をハイブリッド化させることの利点について整理するとともに,本論文の目的を明確化した.第2章では,2次元骨組構造物の位相・形状同時多目的最適化問題として,構造質量の最小化と1次の固有振動数の最大化を目的関数とする2目的最適設計問題の定式化を行うとともに,SA/GAハイブリッド最適化手法のアルゴリズムを構築した.その際,生成され得る解の数を制限するため,実数値で表現される設計変数空間を等間隔で離散化して取り扱うものとした.また,グラフ理論を用いて骨組構造物の位相を表現することにより,最適化計算過程において個々に変化する位相を正しく取り扱えるようにしつつ,解を位相毎に分類することを可能とした.さらに,目的関数空間内における探索個体の更新状況を観測することによりSAの計算手続きを自動的に終了させる処理を導入した.数値計算では,提案したSA/GAハイブリッド最適化手法に対し,一般的なSAおよび再アニーリングを用いたSAを比較した.その結果,より良質な解が多く求められるなど,提案したSA/GAハイブリッド最適化手法が最も有効であることが確認された.第3章では,第2章で提案したSA/GAハイブリッド最適化手法の更なる高性能化を目指した.第2章で導入したGAの遺伝的操作手続きでは,親個体のペアは親個体の候補からランダムに選択されており,選択法について十分な検討がなされていない.そこで,位相の分類情報を利用した親個体の選択法を新たに幾つか提案し,具体的な数値実験により提案手法の有効性について検討した.その結果,提案した手法の中では,親個体1の選択法として希少度を用い,親個体2をランダムに選択する選択法の組合せが最も優れていることが確認された.また,設計変数空間の離散化の幅(メッシュサイズ)が計算結果に与える影響について調査したところ,メッシュサイズが大きい場合には得られるパレート最適解の数が少なくなるものの,速く収束する傾向にあることが確認された.第4章では,より少ない繰り返し計算回数で第3章までの手法と同等なパレート最適フロントを得ることを目指し,希少度を用いたSA/GAハイブリッド最適化手法にメッシュサイズ変更法を新たに導入した.メッシュサイズ変更法は,計算の初期にメッシュサイズを大きくし,その後段階的にメッシュサイズを小さく,すなわち生成し得る解の形状を緻密にして行く手法である.この様な操作を導入することで局所解へ捕捉される可能性が減り,結果的に少ない計算量で第3章までの手法と同等なパレート最適フロントへ到達することが可能となることを確認した.第5章では,得られた成果をまとめ結論とした.続きを見る
目次 第1章 緒言 第2章 SA/GAハイブリッド最適化手法の開発 第3章 遺伝的操作手続きの改良 第4章 メッシュサイズ変更法の導入 第5章 結言

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登録日 2013.07.10
更新日 2023.11.21

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