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Abstract |
近年、我が国は急速な経済成長による生活環境の向上や、公衆衛生・医療技術の発達に伴い平均寿命が急速に延伸しているが、その一方で合計特殊出生率の低下による少子化傾向が著しく、他国に類を見ない異例の速さで老年人口率が増加しており、既に世界最高水準の高齢社会へと変貌している。こうした高齢化が進行する中で寝たきりの高齢者が年々増加しており、摂食・嚥下管理の問題から長期にわたり経管栄養が施行される高齢者も少な...くない。しかし、このような高齢者への経管栄養の施行については全身の健康状況への影響から様々な議論がなされており、経管栄養にすると生存率が下がるという報告や、重度の肺炎に罹患するリスクが高くなるという報告もある。一方、高齢者における嚥下性肺炎や慢性閉塞性肺疾患等の炎症性疾患に口腔細菌が影響を及ぼすこと、および充分な口腔ケアにより高齢者の嚥下性肺炎を減少させることが報告されている。しかし、経管栄養の施行が口腔内の細菌叢に及ぼす影響や、引いてはその結果が全身の健康に及ぼす影響についての情報は極めて限られている。そこで我々は、寝たきりの長期入院高齢患者および高齢者施設長期入所高齢者98名について、摂食状況を経口摂食と経管栄養の2群に分け、細菌構成の分析手法である Terminal restriction fragment length polymorphism ( T-RFLP )法を用い口腔細菌叢の中でも舌苔細菌叢に注目しのその分析を行った結果、2群間で舌苔の細菌叢の構成が大きく異なることを認めた。また、2群間で差が認められた細菌種を特定するために、2群からそれぞれ13名を選出し、これらの細菌叢の構成をpyrosequence によって解析した。その結果、2群間で複数の細菌種の構成比に有意な差が認められた。また、経管栄養群では、口腔には通常検出されることのない細菌種も同定された。さらに、サンプル採取から6ヶ月間、98名の健康状態を追跡したところ、経管栄養群の方が発熱、肺炎の罹患、死亡者の数が明らかに多かった。以上の結果から、経管栄養者の舌苔の細菌構成は経口摂食者とは大きく異なることが明らかとなった。すなわち、経口摂食者の口腔内で通常優位な細菌の構成比率が激減し、種々の予想外の細菌種が驚くべき高比率で検出された。摂食機能を失った口腔で常在フローラの均衡が破綻したと考えられる。さらに、経管栄養者に特異的あるいは有意に多く認められた細菌種を考慮すると、経管栄養によって破綻した細菌叢が高齢者の健康を脅かしている可能性が示唆された。 今回の結果から経管栄養の施行のリスクが明確となった。経管栄養は状況によっては有用な処置ではあるが、経管栄養の適用には口腔細菌叢に与える影響を十分に考慮して行う必要がある。show more
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