Creator |
|
Language |
|
Publisher |
|
|
Date |
|
Source Title |
|
Vol |
|
First Page |
|
Last Page |
|
Publication Type |
|
Access Rights |
|
JaLC DOI |
|
Abstract |
近年,世界の多くの国で最低賃金を引き上げる動きが生じており,最低賃金が労働者の賃金水準や雇用に与える影響について活発に議論がなされている。これまでの最低賃金についての研究は,主に雇用への影響に注目したものが多く,労働市場における企業間の競争環境や地域差を背景に様々な実証結果が報告されている。最低賃金を労働者の生計費や企業の雇用などの諸要因を考慮して合理的に定めることは,労働者に対する安定的雇用や適...正な労働環境の確保の面からも重要となる。欧米では,最低賃金の決定要因に関する研究は既に多数蓄積されているが,日本や中国などのアジア諸国ではまだ少なく,最低賃金の決定のあり方の妥当性を検証するためにも,最低賃金の決定要因を実際のデータを用いて分析する研究の蓄積が必要と考えられる。そのため,本研究では,日本と中国の最低賃金制度に注目し,両国の最低賃金の水準が,それぞれの国の政策目的に合致する形で決定されているかどうかについて明らかにするため,両国のパネル・データを用いて実証的な検証を行い,分析結果の比較を行った。操作変数を用いた固定効果モデルによる計量分析の結果に基づくと,日本と中国の最低賃金は確かに,法律が定めるように,経済発展の水準,労働市場における雇用の状況,社会保障の水準などの要因をある程度参照しながら決められていることがわかった。ただし,日本の県内総生産の成長率や家計消費支出のように,いくつかの変数については,当初の仮説とは異なり,逆の相関や無相関が見られる。また,日本の最低賃金制度ならびに中国の社会保障制度における一連の改革は,最低賃金の水準に対して一定の影響を与えている可能性が示された。show more
|