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福岡県内に生産および市販されている4種の珍味類,貝柱漬,海茸漬,干海茸および干フグについて,常法により任意に購入し,官能テストおよび理化学テストを行なつた.調査した2種の貝類酒粕漬の成分には大差はなく,貝柱漬では水分55.5%,蛋白質12.7%,脂質0.4%,炭水化物26.1%,灰分5.3%,159カロリーであり,一方海茸漬は水分56.3%,蛋白質9.9%,脂質0.2%,炭水化物29.2%,灰分4.4%,158カロリーであつた.食品添加物では甘味料(サッカリン,サイクラミン酸ナトリウム)はいずれも検出されず,また保存料(ソルビン酸,デヒドロ酢酸,安息香酸,パラオキシ安息香酸エステル,サリチル酸)も貝柱漬には認められなかつたが,海茸漬にはその3銘柄に許容量の1/4~1/10程度のソルビン酸が検出された.干海茸の成分もほぼ一致し,水分10.8%,蛋白質62.1%,脂質1.7%,炭水化物12.4%,灰分13.0%,313カロリーであつた.これに対して干フグでは乾燥度によつて成分のバラツキが大きかつた.すなわち十分に乾燥されたものは水分28.4%,蛋白質43.0%,脂質0.5%であつて,他の魚の干物にくらべて,水分含量は低かつた.また灰分は比較的に多く14.5%であつたが,炭水化物の含量は試料によつて大きく異なり(18.7%および8.7%),従つてカロリーにも影響した(245および217カロリー).これに対して乾燥不十分のものは脂質0.1~0.2%を除き,水分42.9~62.4%,蛋白質27.8~42.6%,炭水化物3.3~6.5%,灰分6.4~10.7%,125~198カロリーとかなりの範囲の変動がみられる.しかし一般に乾燥十分なものに比べて,水分含量が大きく,蛋白質,炭水化物,灰分など乾物量はいずれも低い傾向があつた.官能テストと理化学テストとの相関関係はいずれもほとんど認められず,僅かに干物において水分含量(乾燥度)と味の評価に多少の関連があるように思われた.また,これ迄調査した加工品におけると同様に,一般消費者の評価は価格とは必ずしも一致しなかつた.
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