注記 |
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既製バインダの結束部の設計と構造の適否,すなわち,稲わらが束から抜けない:最小締付力(復元力)を得るための圧縮率の最小値を見出すことを目的として,稲わら束の圧縮性,復元性につき基礎実験を行なった.東圧縮断面形状を三角,四角,円の3種,圧縮前の面積は100cm^2(小)で,円のみ200cm^2(大)も加え,加圧容器にわらを並べ,圧縮率を12.5から50%まで4段階,圧縮速度を15から60cm/minまで4段階,経日変化を刈取直後(含水率68.9%),1日後(65.0%),5日後(14.4%)の3段階にわけ,最大圧縮応力,圧縮曲線と緩和曲線の特性,緩和弾性率,復元力,復元強度などを測った結果,次のことがわかった.1.最大圧縮応力σ_<max>は圧縮率cの大なるほど,いずれも指数関数的に増大し,cの大なるときのσ_<max>の大きさは,三角>四角>円となり,また大円>小円となる.2.本実験の圧縮速度vの範囲内では,vが変ってもσ_<max>はほとんど変らない.3・経日変化ではσ_<max>は刈取1日後が刈取直後よりやや大きく,5日後になると約半減する.4.庄縮曲線の特性をみるに,経過時間tと圧縮力F_cとの間には片対数グラフで直線となり,F_c = α exp βt なる関係式が得られ,直線の傾斜は三角>四角>小円>大円となる.以上の各項から束断面形状は従来型に多い三角形より円形に圧縮するのが妥当である.5.応力緩和曲線の特性をみるに,圧縮完了後からの停止時間t_lと緩和応力σとは両対数グラフで直線となり, σ = at^<-b>_l なる関係式が得られ,わら材料が同一なら,束断面や圧縮率に関係なく常に勾配b値は同一である.6.経日変化の応力緩和曲線に対する影響をみるに,刈取直後と1日後では直線勾配b値は同一であるが,5日後では傾斜が変化しゆるくなる.これらより,b値はわらのレオロジカルな特性を示す値であることがわかる.7.緩和弾性率E(t)は初期歪ε_o(圧縮率c)の増加につれ増加し,円では傾斜がゆるく,小円では特に顕著である.8.三つの各復元力値F_2,F_3,F_4と増加復元力値F_3-F_2は,ともに圧縮率cの大なるほど,また復元率ηの小なるほど大となる.復元後の緩和曲線の初期値F_3と1分後の値F_4にはほとんど差がなく,cが大でηの小なるときにわずかにF_4は減少する程度である.9.復元強度V_Rは一般にcの大なるほど大となるが,ηの大小による影響はcの値によって一定せず,明確な傾向は示さない.以上のことより,わらの最小締付力と束のゆるみ量(復元率)が既製のバインダで明確になれば,最小圧縮率が求められ,不要の圧縮による動力の節減と,過度の圧縮による弾性や復元力の減退を防ぐことができる.
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