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近年estrogenが家畜家禽の成長を促進し,あるいは屠体品質の向上に効果あることが研究され,一部は実用されている.合成estrogenとしてはstilbene系のdiethylstilbestrol(以下DESと略記),hexestrol,dienestro1等や,これらのdimethyletherであるdianisylhexene, dianisylhexane, dianisylhexadiene等が研究され,肉用家禽の肥育にDESペレットの埋没や,dienestrol diacetateの飼料添加が,また肥育牛にはDESの飼料添加がよく行なわれる.家禽についてはestrogen投与の効果は,実用上の目的でもあるが,体内脂肪の蓄積増加であり,成長促進効果については・致していない羊, 牛など反芻動物についてはestrogen投与により成長効果はほぼ確実であるが,筋肉脂肪を少なくし屠体品質を低下させることが少なくない.Estrogenがこれら成長および屠体品質におよぼす効果は脳下垂体を介して副腎,甲状腺等の機能をかえて,体内物質代謝の支配様相に変化を来すことに関係するとされる.ヒナにestrogenを投与すると産卵鶏におけると同様に血中脂肪が増加して1ipemiaを呈し,この反応は絶食時でもおこる.この場合血中脂:質全成分の増加があり脂燐質ではレシチンの増加が著しく,セプアリンも増すが,スフィソゴミエリンは増加が少なく,かつ不定である.コレステリンエステルは脂質中反応が最も弱い.血中脂質の給源について研究され,estrogen投与による血中脂質の増加は肝臓における脂質の合成促進によることが認められた.すなわちestrogen投与のヒナで肝脂肪の増大がよくみられる.8,9)P32を用いてDES注射のヒナで肝臓の燐脂質の生成速度やturnoverrateの増すことがしられ,15,36)これとともに肝臓の脂肪酸の増加がlipemiaに先行することから,血中脂肪は肝脂肪に由来することが推定された.RanneyらはDES注射で増加した血中の燐脂質および中性脂肪の濃度が,肝臓機能を停止させてさらにDESを注射しても下降することを認め,estrogenによる血中脂質の増加は肝臓における脂質の合成促進によるものであることが確かめられた.Estrogen投与によるヒナの体内脂肪の蓄積増加は多くは肝臓における脂質の合成促進を以て説明された.しかし血中脂質レベルの高低と肝臓における脂質の合成速度あるいは体内脂肪の蓄積速農との関係は未だ明らかでない.また1ipemiaとヒナの体脂増加の両効果間に完全な平行関係は認められていない.また甲状腺剤がlipefniaの発生を阻止すること,dianisylhexene投与のヒナで甲状腺のI^131のturnover rateを減少すること,11)cstrogen処理でheartrateを低下することなどが知られているが,従来推測された基礎代謝率の低下は証明されていない.)Estrogenの体脂増加作用はヒナの栄養状態に関係しないが,脂肪の蓄積量は飼料原料で異なり,37)また蛋白質12~21%飼料ではDES投与による最大成長量は低蛋白飼料で得られ,5)成長,体脂蓄積量にCa1/Protein比が関係するとされた.体内脂肪代謝については脳下垂体,副腎,甲状腺,膵腺等の生産するホルモンが深い関係にあることは知られているが,estrogenによる体脂蓄積効果とこれら内分泌腺機能との関係は確立されていない,またestrogen投与によるlipemiaの程度と肝の脂質合成能,体脂の蓄積速度相互間の関係のみならず,体脂の蓄積に関して体内各組織での相互関係も明らかにされていない.DES投与によるヒナの肥育機構を究明するために先ずヒナの日令,DES量および投与期間をかえて,成長,臓器への影響をみるとともに組織脂肪の量的,質的追究を行なつて体脂の蓄積様相を明らかにしようとした.
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