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概要 |
本稿は、格差是正に向けた教育と福祉の連携において、教師参加型の教育福祉事業を進める韓国に焦点を当て、制度の特徴を調査するとともに、教師参加の促進・阻害要因を明らかにすることを目的とする。研究対象は、韓国の代表的な教育福祉の取組みとして、学校を基盤として行われる「教育福祉優先支援事業」(全国の約29%の小中高で実施)である。調査方法は、教師と 教育福祉の専門家(教育福祉士)へのインタビュー調査、教育...行政を対象としたフォーカスグループインタビュー(FGI)、教師の手記分析、文献研究である。「教育福祉優先支援事業」は、1997年のアジア通貨危機以降、急激に広がった経済・教育格差を背景に低所得層や多文化家庭の子ども等を対象として、学習のみならず、文化や心理・情緒的サポートを通じて教育における格差の是正を目指して2003年に導入された。 本稿の調査により、長い時間を子どもと過ごす、教師の本事業への参加の重要性が確認されたほか、子どもに対する理解の促進や教育福祉の専門家との連携による知見や経験の蓄積が促進要因として示唆された。一方、現場との十分な議論がないまま、政府主導のトップダウンにより本事業が始まったことや、「知識を教える」ことを教師の本分とする教師側の認識、また他の専門家との協働に関する学校の排他的な組織風土が教師参加の阻害要因となっていることが示唆された。このような阻害要因を克服し、教師参加促進のための制度的工夫として、第1に、教育福祉 士の企画のもとで教師が参加する「師弟同行」と、教師が企画・主導を行う「教師メンタリング」(「希望の教室」を含む)など、教師の考え方や多忙感等の違いを考慮した選択肢が教師に与えられていること。第2に、教師主導の教育福祉プログラムを進めるにあたって、教師の自律性を重視し、予算の使用用途やプログラムの内容など、可能な限り現場の教師に裁量を持たせ、個々の子どものニーズに即した対応に必要な柔軟な権限(autonomy)を付与していること。第3に、社会的・経済的に不利な立場に置かれている子どもへの個別の支援を重視し、文化体験や職業経験など、学校外における多様な活動を積極的に取り入れることで、教師が子どもとの関係を通じた教育者としての成長を実感していることを確認できた。また、急激な社会の変化を踏まえた新しい学校づくりにおける教師の位置づけが重要となる中、本事業を効果的に進めるためには、従来とは異なる力量形成や価値観が教師に求められる現状が浮き彫りとなった。続きを見る
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