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概要 |
本研究は,里山林を構成する代表的な樹種について,時系列にみた季節による葉色変化と落葉前後の時系列な樹冠高の変化パターンに基づき区分の可能性を検討した。
第1章(序論)では,研究の背景と目的,里山林の樹種区分に関する研究の意義,航空からの樹種区分に関する既往研究,既往研究結果の本研究への適用,超多波長帯センサデータを用いた樹種区分と課題,本研究の構成について述べた。
第2章(適用手...法)では,航空から葉色変化および樹冠高変化を把握するための適用手法について述べた。季節的な葉色変化や樹冠高変化(落葉推移)などのリーフフェノロジー(Leaf phenology)に関する情報を航空から面的に捉えることが樹種区分をするうえで重要となる。そのため,時系列に観測したカラー航空写真から作成したオルソ画像上に写る葉色変化や落葉前後に観測した航空機搭載型レーザスキャナ(以下,航空機LSと呼ぶ)による数値表層モデル(Digital Surface Model:DSM)の変化量(=樹冠高変化)を解析する手法等について述べた。
第3章(季節的な葉色変化に基づく里山林の代表的な樹種区分に関する研究)では,北部九州の里山林を対象に,春季と秋季の時系列なカラー航空オルソ画像上でRGB値とこれを変換したHSI値(Hue:色相,Saturation:彩度,Intensity:明度)に基づき葉色変化を把握し,里山林の代表的な樹種であるアラカシ・スダジイ・クスノキ・コナラ・クヌギ・ケヤキ・スギ・ヒノキ・モウソウチクの区分の可能性について検討した。その結果,アラカシ・スダジイ・クスノキは春季(5月中旬),コナラ・クヌギ・ケヤキは春季と秋季(12月上旬),スギは冬季に,モウソウチクは年間を通じて他の樹種と異なる独特な葉色変化を示すことが分かった。これらの葉色変化はR値,H値,I値上で明瞭であり,前記の最適時期との組み合わせが樹種区分に有効であることが把握できた。
第4章(時系列な樹冠高の変化から落葉広葉樹林の階層構造と落葉推移を把握するための基礎的研究)では,樹冠高を計測する目的や面的に樹冠高を計測していくための方法について触れ,さらに樹冠高の変化から落葉広葉樹林内の階層構造や落葉推移パターンの把握のための事前検討として,落葉前後に観測された航空機LSを用いた樹冠高計測とその精度を検証した。その結果,森林総合研究所多摩森林科学園(東京都八王子市)内に設定した3検証箇所(ST‐1~ST‐3)において,落葉後に観測した航空機LSデータから算出した地盤高では,現場実測による地盤高に比較して,急崖部を除きRMS誤差が0.486~0.886m、1m以内の誤差は検証箇所の全測定点の93.0~97.9%の範囲内であった。地形断面上の比較では,ST‐1(測定本数31本)がRMS誤差で1.689m,ST‐2(測定本数20本)が1.489m,ST‐3(測定本数15本)が1.493mであり,現地実測結果と1~2mの差であることが把握できた。
第5章(落葉前後の樹冠高変化による落葉広葉樹林の階層構造区分に関する研究)では,多摩森林科学園内のケヤキ優占の高木林とサクラ保存林(第4章の検証箇所ST-2)を対象に,落葉前,落葉中,落葉後に航空機LSで観測した樹冠高データの変化量から落葉広葉樹高木林内の階層構造を解析し,現地検証した。その結果,当該地区の階層構造は,下層に低木・草本の発達が進んでいない落葉広葉樹高木林,低木・草本が下層に発達する落葉広葉樹高木林,常緑広葉樹の亜高木・低木が下層に発達する落葉広葉樹高木林,常緑広葉樹高木林(主としてアラカシ高木層)の4パターンに区分できた。
第6章(季節的な樹冠高変化に基づく混交林の樹種区分とその検証に関する研究)では,多摩森林科学園内で常緑広葉樹と落葉広葉樹が混在し,スギ・ヒノキが分布する混交林を対象に,季節的な葉色変化と落葉広葉樹林の階層構造および落葉推移パターンから総括的な樹種区分を試みた。さらに,カラー航空オルソ画像を用いた目視判読との比較,現地検証により,本研究手法の妥当性と実用性を検証した。その結果,当該地区の樹種は,スダジイ,アラカシ,ケヤキ,コナラ,スギ,ヒノキに区分でき,ケヤキとコナラについては落葉前後の樹冠高の変化から階層構造(複層・単層)と落葉推移パターン(落葉時期の違い)から樹林タイプの細分が可能であった。本研究手法では,混交林うち常緑樹林と落葉樹林の区分が容易で,小規模で点在する場合でも適用できることが分かった。また,季節的に顕著な葉色変化を示すスダジイ,ケヤキ,コナラ,スギの区分については,回視判読に比較して本研究手法がより有効であった。ただし,年間に渡り葉色変化がそれほど顕著でないアラカシやヒノキなどの抽出には課題を残した。
以上の一連の研究結果より,多種多様な樹木から構成される里山林の樹種区分していく場合,効率面と精度面から勘案して,可能な限り本研究手法のようなデジタル解析処理を適用することが有用であると判断された。加えて,多種多様な樹種区分を行うには,このようなデジタル解析処理と,専門家の知識と経験による判断情報が付与できる総合的な樹種区分手法の確立をめざすことが有効であると考察された。最後に,本研究および研究手法の実用化に向けて,今後の高分解能衛星データを用いた広域の里山林の樹種区分手法を提案した。続きを見る
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目次 |
目次
第1章 序論
第2章 適用手法
第3章 季節的な葉色変化に基づく里山林の代表的な樹種区分に関する研究
第4章 時系列な樹冠高変化から落葉広葉樹林の落葉推移・階層構造を把握するための基礎的研究
第5章 落葉前後の樹冠高変化による落葉広葉樹林の階層構造の区分に関する研究
第6章 季節的に観測した葉色および樹冠高の変化に基づく混交林の樹種区分とその検証に関する研究
第7章 結論
謝辞
補足資料
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