<博士論文>
ハングルタイプライターの開発がもたらした文字デザインの変化についての研究
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概要 | 本研究の目的は,印字効率と字形美的側面の二面性の両立を課題としたハングルタイプライターの開発による文字デザインの変化を,韓国デザイン史の観点,特に3ボル式タイプライターの調査資料に中心として検討し,明らかにすることである。 第2章では,本論文の展開において必要事項となる基本字の形態要素やハングルの使用上の空間構成問題について検討整理した。さらに構成原理から見たタイプライターの開発上の文字盤(44...個)による字素の数の制約により印字方式に対する文字デザイン上の問題点を取り上げ,その問題に対してハングルの構造的特徴である子音字と母音字による文字構成の「フロスギ(分解横書き)」「モアスギ(字母組み立て書き)」に基づき,タイプライターの文字盤への字素配列,および印字段階での文字のハングル最小単位の構成要素である「ボル式(ユニット)」の概念について明確にした。 第3章では,ハングルタイプライターの歴史的展開を3つの時代区分に従がってその歴史を再構成し,全体をまとめた。当初,ハングルタイプライターの開発においては印字の効率性と字形美的側面の如何に両立するかが開発の課題であった。最初ハングルタイプライターは縦書きシステムとして発明されたが,戦後のハングル専用運動と連動して,横組み・横書きの普及を担う存在になる。その結果,文字盤配列の方式は2ボル式,3ボル式,4ボル式,5ボル式の四つの方式が現れた。また,字形は分解横書き式,字形中心式,速度中心式の三種類が登場した。1960年代の政府標準化政策で4ボル式が定められ,電信印刷用の2ボル式も定められた。1980年代に至り文字変換の技術が発達すると2ボル式に統一されることになる。 第4章では,印字効率性と字形美的側面から10種類の字形を取り上げ,分類整理し,さらに文字デザインの観点から比較分析を行なった。その結果,入力と印字の効率性を優先する場合には,伝統的な骨格とは別の構造上の基準を探求する傾向が見られた。特に分解横書き式に顕著であるが,字母組み立て式においても見られた。この基準は欧文のラインシステムに近いものであり,特に3ボル式では,初声の子音字の下部に横方向の基準線が見られる。また60年代,政府標準化で定められた4ボル式の字形や80年代の2ボル式字形でも,初声の子音字の下部に基準線が見られる。しかし,タイプライターによって基準線が異なり,特に基準線の位置が重要であることが分かった。 第5章では,ハングルタイプライターの開発上において印字の効率や字形美的側面をどのように両立しながら文字デザインが行なったのかを,3ボル式における文字デザインの制作工程を調査資料の分析を通して明らかにした。Gong.Byeong-Uの3ボル式タイプライターは,合理的な発想が特徴であり,「速度中心式」と呼ばれるものである。印字効率を維持しつつ,字形の美しさも満たそうとした。Gongの3ボル式は,1947年の試作機以降,1954年,1963年の二度に渡り改良が行われた。その過程に文字デザインの考え方が反映されている。最初の試作では,字体はゴシック体であり,終声の位置も左に寄っている。また1954年式字体は明朝体に変更し,双焦点ガイドを導入し,印字速度中心に開発された。さらに1963年式のタイプライターは,ベントン彫刻機を用い,筆文字を基準として精密な文字デザインを試みた。Gongは字母(子音字と母音字のことを表す)ごとに字母の位置や一文字のバランス,また横組みの文書全体のバランスを工夫し,文字の機能性を中心とした合理的な文字デザインを探求した。 第6章では,コンピューターにおける3ボル式の展開と文字デザイン変化について明らかにした。現代の韓国におけるデジタルフォントは,「完成型」と呼ばれる一文字を全体として捉えたデザインと,「組合せ型」と呼ばれるGong.Byeong-Uの3ボル式タイプライターの文字デザインの系譜の延長線上に位置づけられる字形の双方が併存している。 Gongのタイプライター開発の文字デザインの考え方は,初声,中声,終声のハングル構成原理を基本とし,キーボード配列のみならず,英文小文字のラインシステムに類似した基準線(横線)や中心線(縦線)による字素構成の手法など,合理的思想を取り入れつつも,文字デザインの規範として筆文字を出発点とすることでハングル固有の伝統的,美的特性を取り入れていることを検証し,前章の分析結果からこの考え方がハングル文字デザインにおける思想として生き残っている。 以上のようにタイプライターにおける役割がコンピューターへと移った今日においても印字の効率性と字形美的側面を如何に両立するかという合理的な考え方は,コンピューターによるハングル文字デザインにおいても,フォント開発の方向や方法,過程などに影響を与え,その結果文字デザイン展開は幅広くなっている。続きを見る |
詳細
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授与日(学位/助成/特許) | |
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登録日 | 2009.08.13 |
更新日 | 2020.10.06 |