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概要 |
本研究は,日本人成人男女を対象として,生体計測法による顔面形態の測定と,超音波法を用いた咬筋横断面の測定および咬合力測定を行い,現在の日本人成人が有する顔面形態,咬筋横断面および咬合力に関するデータの集積を行い,咬合力と顔面形態の関連性について生体計測値から検証を試みた上で,咬合力発現に最も関与する咬筋の構造と機能について検討するとともに,咬合力の発現に影響があると推測される,運動経験との関連性...についても検討した。
調査は平成12年4月から平成14年2月の間に,山口県,広島県の大学に在学する大学生を対象に,それぞれの在籍する大学において実施した。被検者の総数は男女366名で,年齢は19~24歳であった。得られた結果は以下の通りである。
Ⅰ.日本人成人における咬合力と顔面形態との関連性について
1)顔面形態の特徴として,頭示数が男性で88.0±5.9,女性で86.2±5.8と,いずれも過短頭型に属する傾向がみられた。咬合力との相関はみられなかったが,短頭傾向の進行は,下顎骨の奥行きを示す下顎体長の減少や,下顎骨の下顎角部が外方へ屈曲せざるを得ない形態になりつつあることを示している。
2)咬合力は,男性で688.6±200.8N(CV=0.291),女性で495.6±138.0N(CV=0.278)であった。
3)男性における咬合力と顔面形態計測値との相関は7項目で有意な相関がみられた。とくに下顎角部に関連する,耳珠間幅(p<0.01,r=0.367),下顎角幅(p<0.01,r=0.438),下顎角(p<0.01,r=-0.624)の3項目では強い相関がみられ,骨計測による先行研究を支持する結果が得られた。
4)女性における咬合力と顔面形態計測値との関係をみると,頭長(p<0.05,r=0.256),下顎角(p<0.05,r=0.283)の2項目のみ有意な相関がみられた。男性に比して有意な項目が少なかったことは,咬合力の差異も考えられるが,女性は男性より体脂肪率が有意に高く,皮下脂肪厚の影響の可能性も考えられる結果が得られた。
Ⅱ.日本人成人男性における咬筋の筋横断面と咬合力との関連性について
1)最大咬合力は右側で683.7±204.9N(CV=0.299),左側で693.6±208.7N(CV=0.300)であり,有意な左右差はみられなかったものの,左右ともにその標準偏差および変動係数から,個人差の大きいことがうかがえた。
2)咬筋が咬合力を発揮する緊張時の形態的変化として,筋厚,筋横断面積が増加し,筋幅が減少するといった形態的変化がみられた。
3)咬合力と左右全ての咬筋形態計測値との間で有意な正の相関がみられ,咬合力の発現には咬筋形態の大きさが影響していることが示された。
Ⅲ.運動経験の差が咬合力および顔面形態に及ぼす影響について
1)運動経験の有無、およびその頻度により明らかに咬合力に違いがみられた。運動経験の高いグループは他に比して有意に高い咬合力を示し、とくに運動経験のないグループとの間では非常に高い差がみられた。
2)顔面形態の差異は、頭示数、頭幅示数で運動経験の高い者と、運動経験のないグループとの間で有意な差が認められたが、その他の項目では有意な差は認められなかった。
3)運動経験のないグループは、頭示数が大きく、頭幅示数が小さい傾向がみられた。顔面形態は頭部が大きく顎部が狭い、逆三角形の形態に近い特徴を有する傾向が強いことがうかがえた。
4)咬合面積においては運動経験の高いグループが運動経験のないグループに比して有意に高い値を示した。また、運動経験の低いグループと、運動経験のないグループ間でも有意な差が認められた。咬合力と咬合面積との間には高い正の相関がみられたことから、運動経験の高い者ほど咬合面積も大きいという特徴が認められた。
以上のように,咬合力発現には咬筋の形態が大きく関与し,咬筋形態が大きいほど強い咬合力を発揮し,その結果,顔面形態,とくに下顎角部の発達に影響を及ぼすことが示された。また咬筋の発達には食生活習慣のみならず運動習慣の影響も示唆された。続きを見る
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目次 |
目次
第1章 はじめに
第2章 日本人成人における咬合力と顔面形態との関連性について
第3章 日本人成人男性における咬筋の筋横断面と咬合力との関連性について
第4章 運動経験の差が咬合力および顔面形態に及ぼす影響について
第5章 まとめ
参考文献
謝辞
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