<博士論文>
看護の観点からみた洗髪・入浴時の生理心理反応に関する研究
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概要 | 看護における基礎的看護技術の科学的検証の一環として,様々な場や状況下で実施されることの多い清潔の援助の中から,今回は,洗髪と入浴を取り上げた。洗髪に関しては,安全でかつ快適な洗髪援助実施のための基礎資料を提示することを目的に,洗髪台使用における洗髪動作・行動に着目し検討した。さらに入浴に関しては,実際に臨床や在宅で入浴の介助を行う場合や,安全な入浴方法に関する患者への生活指導を行う際の基礎資料を...得るために,半身浴およびシャワー浴に着目し検討を行った。本論文は以下の4章より構成されている。 第1章では,本研究の背景として,まず看護活動における身体的援助技術の科学的検証が質の高い援助を実施するために,また看護の基礎教育においても非常に重要な課題であることを述べ,援助技術の中の洗髪と入浴に着目し,それら援助の意義と問題点について言及した。洗髪に関しては,種々ある洗髪方法の中で,洗髪台使用における洗髪の援助は,臨床にて最も実施頻度が高いにも関わらず,他の洗髪方法に比べその援助に関する研究は非常に少なく,安全で快適な援助を提供するためには,その援助がもたらす対象者の生理・心理反応に関する基礎的データを提示することの必要性について述べた。入浴に関しては,入浴に伴なう死亡事故が日本では特に多く,これには日本人が好む全身浴での入浴および浴室の温熱環境が深く関係していることを示した。そこで,安全で快適な入浴援助を実施するために,全身浴の代替入浴スタイルとして推奨されている半身浴やシャワー浴時の生体負担に関して検討することが重要であることを述べた。さらに,入浴の援助が近年施設内だけでなく在宅での実施も多くなったことから,各スタイルでの入浴時の浴室環境に関する研究の必要性について言及した。 第2章では,洗髪台使用時の洗髪援助に伴う動作や体位保持などを含む行動が,被援助者へ及ぼす影響ついて生理心理反応の両面から,仰向け(F位)と前屈位(Z位)の2つの体位を用い検討した。洗髪に伴なう動作・行動による生体負担について,エネルギー代謝量,血圧および心拍数等より評価した場合,洗髪台使用における洗髪は行動後にまで影響が残るほどの生体への負担とはなりにくく,心理的にはネガテイブな気分は低下し活気は高まる援助であることが示唆された。また,援助の際は,POMSの結果から,F位の方が心理的には良い効果がもたらされることが示唆されたが,生体負担の観点では体位の違いによる明確な差は認められなかった。したがって,対象者が,疾患・治療の面から体位制限がない患者であれば,患者の意向を優先し体位の選定を行っても支障がないのではないかと推察された。さらに,洗髪中の洗浄やすすぎの際,両体位において頚部や背部などに苦痛を感じていることも明らかとなったが,安定した体位が保持でき,より安楽に援助を受けることができるような洗髪台や椅子の改良,また補助具の考案なども行っていく必要があると考える。 第3章では,全身浴,半身浴,シャワー浴の各入浴方法における浴中の生体負担について,さらに,各入浴スタイル時の浴室温度の違いが生理・心理反応に及ぼす影響について検討した。その中で,半身浴およびシャワー浴は血圧,心拍数から評価した場合,浴中の生体負担が,全身浴に比べ小さいことが認められた。また,浴室温の影響としては,入浴スタイルに関係なく,低室温の場合,浴前から浴後にかけての血圧,心拍数の変動が大きくなるという問題点が示された。さらに,半身浴時における特異的な室温の影響としては,室温が高い場合は,全身浴に近い深部温の上昇が見られるのに対し,低室温の場合直腸温の上昇が小さく,十分な温熱効果が得られ難いことが示された。また,シャワー浴では特に,室温の違いによる浴後の心理反応が他のスタイルとは異なっており,温熱的快適感への低室温の影響が強いことが示唆された。これらの結果から,入浴に伴う事故死を防ぐために,全身浴に代わり半身浴やシャワー浴を推奨することは有効であることが認められた。しかし,半身浴やシャワー浴をより安全にかつ快適に実施するためには,浴室の低室温をさけるための温熱環境の整備が不可欠であることが示唆された。施設内にある浴室の温熱環境に関する基礎データを得ることはできないが,多数ある病院施設すべておいて,浴室・脱衣室の室温が適切に管理されているとは考え難く,在宅にて実施する訪問入浴の実施が広まっていることなどを考慮しても,看護者はもっと浴室・脱衣室の室温管理などにも目を向け,安全な入浴援助を実施していく必要があると思われる。さらに,生活指導を実施する際においても,今回得られた示唆を情報の1つとして提供していくことが重要であると考える。 最後に,第4章では,本研究の総括を行ない,今後の問題点と展望を述べ結論とした。 以上,洗髪台使用における洗髪の援助を安全にかつ快適に実施するための援助方法について,さらに,安全な入浴スタイルとしての半身浴,シャワー浴の生体負担について,および各入浴時の安全で快適な浴室温熱環境に関しての基礎資料を得ることができた。続きを見る |
目次 | 目次 第1章 序論 第2章 洗髪台使用時における洗髪動作が及ぼす生理・心理的影響 第3章 全身浴、半身浴およびシャワー浴時の生理・心理反応に及ぼす室温の影響 第4章 総括 引用文献 謝辞 巻末資料 |
詳細
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授与日(学位/助成/特許) | |
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登録日 | 2009.08.13 |
更新日 | 2020.11.16 |