<博士論文>
不斉加アルコール分解反応による速度論的光学分割およびそれらの誘導による新規リンキラル化合物の生成の研究

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概要 有用な天然物や生理活性を示し医薬品の原料として期待される化合物の多くは光学活性であり鏡像異性体を持つものが数多く知られている。この立体構造の違いから生理活性に差が生じ、ときに重大な薬害を引き起こす可能性がある。そこで、これらの化合物を立体選択的に合成する手法の開発は有機化学における重要な課題とされ、様々な報告がされてきた。その一つとして、触媒的な不斉反応が上げられる。実際にいくつかの反応は工業的に...も応用がなされており、酵素などの生体触媒や有機分子、金属などさまざまな触媒が報告されている。その中でも、遷移金属錯体は様々な反応において良好な結果が報告されている。遷移金属触媒による新たな不斉反応の開発を行う場合、金属だけでなく配位子の検討を行い最適な組み合わせを見出す必要があり、新たな配位子の開発が求められる。また、ホスフィンなどのリン化合物はソフトなルイス塩基性を持つため、遷移金属の良好な配位子となることが知られている。BINAPなどの光学活性な配位子は不斉触媒反応に用いられ、高い選択性を示している。これまでに報告されている光学活性なリン配位子の多くは骨格上に不斉中心を持つ。しかしながらリン原子上に不斉中心をもつリンキラル化合物を配位子として用いることで良好な結果を得られたことが、いくつか報告されている。さらにリンキラル化合物は神経毒や殺虫剤や除草剤、抗ガン剤など生理活性を示す化合物が数多く知られ、医農薬の分野において重要な化合物である。ただし、その合成法は未だ限られており、基質の一般性や選択性において問題を残している。そのためリンキラル化合物の新たな触媒的合成法の開発は有用な新規配位子への応用だけでなく、薬学的な応用が期待される重要な研究課題と言える。これまでに、我々の研究グループではパラジウム触媒を用いビニルエーテルの不斉加アルコール分解による軸不斉化合物の速度論的光学分割を報告している。この反応において、基質2’位の配向性置換基が立体選択性に大きな影響をあたえると言う知見が得られている。このことから基質が、ビニルエーテル部位と配向基で触媒に対して相互作用することで、高い選択性が得られると推測した。そこでリン原子上に不斉中心を持ちビニルエーテル部位と、配向基となりうるホスホリル基を持つ基質に対して、これまでに行ってきた反応と同様に高い選択性で反応を行うことができると考えた。そこでこの考えに基づいた基質を合成し、不斉加アルコール分解による速度論的光学分割の検討を行った。その結果、いくつかの基質において良好な選択性が得られ、最高でk_<rel>=195(upto 99.8% ee)非常に高い選択性で反応を行うことが出来た。この反応によって得られたリンキラル化合物をさらに誘導することで、光学純度を低下させずに5価および3価の様々なリンキラル化合物を得ることが出来た。さらにP=O 二重結合の還元によって得られた3価のリンキラル化合物をパラジウム触媒の配位子として用い、不斉鈴木-宮浦反応の検討を行った。その結果、中程度の選択性と収率(up to62% ee)で軸不斉化合物を合成することが出来た。さらに、ビフェニル型配位子の検討や基質の検討を進めたが、選択性は向上しなかった。今回の研究において触媒的な合成法が限られていたリンキラル化合物を、ビニルエーテル部位を持つ基質に対し不斉加アルコール分解反応を行い速度論的光学分割によって合成した。さらに得られたリンキラル化合物を誘導することで、五価と三価の新規リンキラル化合物を合成した。この化合物を配位子として用いることで不斉鈴木-宮浦クロスカップリング反応を行い、中程度の選択性ながら、軸不斉ビナフチル化合物を合成することが出来た。続きを見る
目次 Chapter 1. General Introduction Chapter 2. Kinetic resolution of P-chirogenic compounds via alcoholysis of vinyl ether Chapter 3. Asymmetric Suzuki-Miyaura cross-coupling reaction

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登録日 2013.06.27
更新日 2023.12.08

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