<博士論文>
タンパク質ホスファターゼPP1およびPP2Aの機能調節分子としてのPRIPの役割解明に関する研究

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概要 タンパク質のリン酸化状態の変化は多岐にわたる細胞機能の重要な制御機構の一つである。リン酸化状態はキナーゼ(リン酸化)とホスファターゼ(脱リン酸化)の活性バランスによって厳密に調節されるが、ヒトでは数百種類のキナーゼが存在するのに対してホスファターゼはその十分の一にも満たない。ホスファターゼが様々なキナーゼの働きに特異的に対応するために、ホスファターゼの活性、基質特異性を調節するとともに時空間的に効...率的な反応の場への動員などを調節する結合分子の多様性が重要だと考えられている。さて、研究室では細胞シグナリング研究から見出したタンパク質PRIP(phospholipase C-related, but catalytically inactive protein)がホスファターゼの主要なファミリーであるタンパク質ホスファターゼ1(PP1)ならびにタンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)と複合体を形成すること示した。PRIPは他の結合分子と同様に、これらホスファターゼとの結合を介して細胞内のリン酸化シグナルの制御に関わることが予想される。しかし、2種類のホスファターゼの結合の相互関係などについては不明のままである。そこで、本研究ではPRIPと両ホスファターゼの結合の相互関係について組換え精製タンパク質を用いた試験管内実験から、培養細胞を用いた実験に至るまで詳細に検討した。大腸菌発現系によりPP1、PP2Aそれぞれの触媒サブユニット(PP1c、PP2Ac)およびグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を付加したPRIP-1(アミノ酸残基74-298;以下GST-PRIP-1)を調製し、プルダウンアッセイを行った。PP1c、PP2AcともにGST-PRIP-1と結合したが、両者のPRIPに対する結合は相互に排除的であった。したがってPP1cとPP2Acの結合部位は同一かあるいは立体的に近接していることが示唆された。PRIPに種々の変異を導入して同様の結合アッセイを行ったところ、PP1cとPP2Acとの結合に関与する領域は近接していたものの、直接に結合すると思われるアミノ酸は異なっていることが分かった。それぞれの酵素活性に及ぼす結合の影響も調べたところ、PP1cはPRIPとの結合によって抑制されたが、PP2Acは抑制されなかった。次にPRIPのリン酸化が両ホスファターゼとの結合に及ぼす影響を調べた。試験管内でGST-PRIP-1をプロテインキナーゼA(PKA)によりリン酸化するとPP1cの結合量は減少したが、PP2Acの結合量は変化しなかった。しかし両ホスファターゼが共存する実験系では、PP1cとの結合量の減少に伴ってPP2Acの結合量は増加した。両ホスファターゼを内在するものの、PRIPは内在しない培養細胞(アフリカミドリザル腎臓由来細胞株:COS7)にPRIP遺伝子(野生型とPP1cが結合出来ない変異体)を導入しそれぞれのタンパク質を発現させた細胞を、ホルスコリンで刺激した。細胞抽出液から抗PRIP抗体で免疫沈降し、共沈したPP1cやPP2Acを定量したところ、野生型PRIPを発現させた細胞ではホルスコリン処理によって試験管内実験と同様に PP1cの減少とPP2Acの増加を観察した。以上より、PRIPには異なる2種類のホスファターゼの触媒サブユニットが相互排除的に直接結合し、その結合はPRIP自身のリン酸化によって調節されることが分かった。PRIPはホスファターゼの脱リン酸化酵素活性や細胞内局在などを制御する調節サブユニットとして機能することが示唆された。続きを見る
目次 要旨 緒言 材料と方法 結果 考察 謝辞 参考文献

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登録日 2013.07.10
更新日 2023.11.21