<学術雑誌論文>
産後うつ病考

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概要 産後うつ病(postpartum depression)は女性の精神疾患である.産後2〜3週から半年にかけて発症し,その頻度はわが国でおよそ15%のリスクにのぼる.その影響は,罹患者のみならず,家庭や社会にも及ぶ.罹患者の自殺は最も忌むべきとして知られるが,並んで深刻な問題は罹患者の女児が母子愛着行動の歪みを介して心理的な傷を負い,成長して自ら出産するに至った折,母親を再現することにある.厚労省は...母子の精神保健を政策課題に取り上げ,1992年に研究班を設置,2003年まで課題解決に取り組んだ.その中で,産後うつ病はもとより,妊娠中の不安,マタニティー・ブルーズなどの実像を明らかにしていった.頻度や精神病理の検証はもとより,公衆衛生の実現策としてコメディカルの関与が有効なことをも示した.産科・精神科の医師,並びにコメディカルが共同して,地域に展開し,あるいは施設においてすべての妊産褥婦を対象に,メンタルヘルスの支援介入を行うなかで産後うつ病ならびに関連する問題の発掘と対応を行う実効性が示された.その後,行政はもとより諸方面で上記の答申に基づく事業展開が図られてきた.しかし,その達成度たるや満足いくものではない.英国の場合と比べるとその違いは明らかである.つまるところ,この問題の認知度を高め,政治・行政の,いやそれ以上に社会と国民の受容性を確かなものにすることを前提としなければならない.迂遠なことながら,その端緒として医学教育を標的に取り上げ,その改善工夫のなかから,物質主義一辺倒の気配すら感じられる現状の営みのなかに精神主義の存在とその価値を再認識する運動を展開することが肝要である.いわばパラダイム・シフトとなる運動の効果は広くわが国民のマインドをより常識に満ちたスロー・ライフへと誘うものではないであろうか.続きを見る

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登録日 2016.07.19
更新日 2021.03.03

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