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1.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 環境汚染物質の効率的無害化を目指した吸着性光触媒無機シートの開発 — Preparation and Environmental Applications of Paper-like Photocatalyst Composites
北岡 卓也 ; KITAOKA Takuya
研究期間: 2001-2003
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概要: 地球圏全体から身近な生活環境に至る種々の汚染環境の改善に向け、酸化チタン光触媒の活用が注目されている。しかし、粉末状の無機触媒は取り扱いや実効性能の点で問題が多く、固定化法のイノベーションが希求されている。そこで、紙抄きの技術を応用し、粉末触媒を紙状成型した新規触媒材料「ペーパー触媒」の開発を試みた。 1.ペーパーの触媒の調整 (1)無機粉体を均質なシート状に成型する技術の確立(デュアルファイバー/デュアルポリマーシステム)、(2)アルミナゾルバインダーと焼成処理による100%無機シートの調製と実用強度の発現、(3)光触媒・吸着剤など無機粉末の種類を問わないペーパー設計(均質性・多孔性・2次加工性)を達成した。 2.室内・大気・水循環浄化 (1)ホルムアルデヒドなど種々のシックハウス物質の高効率・連続分解、(2)ppbオーダーの窒素酸化物の光触媒酸化除去、(3)水系環境ホルモン物質ビスフェノールAの光触媒分解が可能であった。ペーパー触媒は粉末と比べて格段に取り扱い易く、回収が容易で繰り返し利用も可能、また繊維ネットワーク構造を保つことで見かけの光触媒効果を高い水準で維持など、種々の実用機能に秀でている。 3.繊維ネットワーク反応場の効果 (1)ゼオライト吸着剤の分子ふるい効果を利用した汚染物質の局所的濃縮・分解促進効果の発現、(2)吸着剤・金属酸化物の配合による触媒被毒物質除去・中和効果、(3)反応中間体捕捉効果による安全・安心な局所的分解、(4)元の触媒性能を上回るネットワーク担持触媒の空隙構造効果など、光触媒単独あるいは粉末混合では得られない、ペーパー構造特有の効果を見出した。ペーパー構造が固体触媒の好適な反応場を提供していると考えられる。 4.今後の展開 粉末状固体触媒のペーパー成型と光浄化に関する成果は、物質・エネルギー生産プロセスなどの触媒工業への展開が期待される。 続きを見る
2.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of DnaAドメインIVを用いた新規抗菌剤の探索開発プロセスの研究 — STUDY ON RATIONAL DEVELOPMENT OF NOVEL ANTIBIOTICS TAGRETING DnaA DOMAIN IV
片山 勉 ; KATAYAMA Tsutomu
研究期間: 2001-2004
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概要: 多剤耐性菌の出現や、新興感染症が次々と発生するなど、新規抗菌剤への社会的需要は高い。DnaA蛋白質は細菌類に広く保存されており、染色体の複製に必須である。DnaA蛋白質(52kDa)のC末端10kDa断片に、この特異的DNA結合能が担われていて、ドメインIVと呼ばれる。DnaA機能阻害剤開発のため、本研究計画前半では、このドメインIV蛋白断片を用いて、活性スクリーニング系の開発、3次元構造解析をまず目指すことにしている。実際、大量生産株を作成し、このドメインのみからなる蛋白断片の精製に成功し、かつ、このドメインIV蛋白には、特異的DNA結合能があることを証明した。さらに初めて、NMRによる構造解析を行い、DnaAドメインIVの^1H,^<13>C,^<15>Nの化学シフトを同定し各アミノ酸残基の帰属も決定した。この成果に基づき、DnaAドメインIVの溶液中での2次構造の決定に成功した。さらに並行して、X線結晶解析による構造解析を行うため、この蛋白ドメインとDNAとの複合体の結晶化を進めて、共結晶の2.5Å解像度での放射光回折データを得、さらに、重元素置換型結晶解析と構造計算を進め、3次元構造を解くことに成功した。この成果により、DnaAタンパク質とDNAとの相互作用機構が分子原子レベルで解明された。以上のような研究進展にあわせて、阻害剤のスクリーニングを行い、新規薬剤候補となる分子を見出した。以上のことから、本研究ではDnaAドメインIVの機能構造解析に基づき理論的に薬剤を選別し、新規抗菌剤の開発研究へと展開するシステムの確立に成功した。 続きを見る
3.
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Cover image of アポトーシス抵抗性神経幹細胞の分化・増殖および神経機能再生能への応用に関する研究 — Study of differentiation of apoptosis-resistant nerve stem cells and their application to neuroregeneration
吉田 裕樹 ; YOSHIDA Hiroki
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究の目的は、アポトーシス抵抗性神経幹細胞による神経機能再生を念頭に置き、Apaf1欠損神経上皮細胞の分化を解析することである。ニューロンの分化過程における細胞死の制御機構を解析する目的でApaf1、Bcl-xl両分子を欠損するマウスを作成した。両遺伝子欠損胎仔においては、Apaf1単独欠損マウスと同様に脳の変形やアポトーシスの低下が見られ、分化過程における神経幹細胞のアポトーシスはBcl-xlには影響を受けずApaf1により制御されていることが明らかにされた。 一方、我々は神経幹細胞を含む胎生期マウス未分化神経上皮細胞の培養系において、BMP2がLIFと相乗的に作用してアストロサイトへの分化を促進することを示してきたが、本研究ではBMP2が単独で神経上皮細胞の分化をアストロサイトへと運命付けることを明らかにした。すなわち、BMP2は抑制性HLH因子の発現を誘導し、ニューロン分化に促進的に働くbHLH転写因子の機能を阻害することによって神経上皮細胞のニューロンへの分化を抑制することを示した。 損傷脊髄などでは内在性あるいは移植された外来性神経幹細胞の分化は、グリア系細胞へと誘導されることが示されており神経機能再生における大きな問題点となっている。さらに、移植された神経幹細胞生着率が低いことも問題点となっている。Apaf1欠損胎仔より得た神経幹細胞は、さまざまなアポトーシス誘導刺激に対して細胞死抵抗性を示した。しかしながら、遺伝子欠損胎仔において神経の分化は正常に生じることが確認されている。今回得られた結果は、アポトーシス耐性の細胞を用いて生着率を高め、さらにニューロン分化抑制性因子のシグナルを阻害する因子を用いて、神経幹細胞の分化のバランスをニューロン側へと傾けることによって損傷したニューロンの再生を図るという新規治療法開発へとつながる可能性をもつと考えられる。 続きを見る
4.
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Cover image of 民族文化の境界領域に関する文化力学的研究--中国西域少数民族の場合 — Cultural Dynamics of Ethnic Boundaries-a case of minority peoples in Chinese West
丸山 孝一 ; MARUYAMA Koichi
研究期間: 2001-2004
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概要: 本研究の目的は次の5点に集約することが出来る。 1.民族研究の文化力学的理論化 2.文化力学の基礎的エスノグラフィックな研究 3.中国民族関係の実体論的研究 4.家庭内における民族教育の通文化的研究 5.変貌期における民族間関係論の研究 1.および2.において「文化力学」とは、近年中国において台頭してきた中華民族概念を中心として諸少数民族文化の関係性を問題とする。すなわち、56の民族を包括する概念としての「中華民族」が中国ナショナリズムの求心力によって統合的に顕在化するようになった。その一方では、一部の少数民族が伝統的多様性を遠心的に保持しようとしている。このような中国における漢民族あるいはナショナリズムの文化指向性は部分的に少数民族の文化のベクトルを相反する方向性を持ち、そこに文化のダイナミックスが見られる。3.については、より具体的にシボ族について記述分析した。4.については、国民教育と少数民族教育とを対比しつつ通文化的に考察しようとする今後の研究意図から、本研究でその基礎的資料を収集することが目的であった。今後発展させたい研究領域である。最後に5.は民族主義とナショナリズムの関係を、社会経済的変換期における葛藤状況の中で捉えた。少数民族文化の持続可能性は、国家政策により国語教育を強制して困難に陥るのみならず、漢民族との通婚増加傾向によっても徐々に、しかも確実に危機化しつつある。 続きを見る
5.
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Cover image of 中南米の民主国家建設における先住民文化運動の役割 — The Role of Indigenous Peoples in Rebuilding Democratic Nations in Latin America
太田 好信 ; OTA Yoshinobu
研究期間: 2001-2003
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概要: 本研究では、グアテマラ、ニカラグア、メキシコ、ならびにボリビアにおける国家と先住民社会との関係が、それぞれどのように変貌をとげているのか、具体的に実地調査をとおして明らかにした。まず、研究代表者と研究分担者は、中米のグアテマラ共和国で集中調査をおこなった。1996年末に和平合意が達成され、内戦が「軍による民族虐殺(ジェノサイド)」であったという判断がくだされた。ここでの課題は、過去の記憶-マヤ民族の虐殺-をどう対処し、民主国家へと向かうかという問題である。政治と文化の境界領域でも、過去の記憶を回腹する実践があった。たとえば、秘密墓地の発掘が一例である。 飯島と狐崎は、そのような文化と政治の境界線に注目した調査をニカラグア、メキシコ、ボリビアでおこなった。具体的には、飯島はニカラグアの法令445号が大西洋岸の先住民に与える影響を調査した。さらに、飯島はメキシコのサパティスタ運動は、政府との交渉が頓挫しているが、これまで以上に「政治的自立」が彼らの主張の大きな部分を占めるようになったことを明らかにしている。狐崎はボリビアで、政府の対外政策に敵対する先住民運動がボリビアのナショナリズムに回収局面について注意を喚起している。とくに、グアテマラから報告されたケースと比較し、ボリビアではいまだに先住民運動が対外政策に利用される歴史が不変であることに驚きを覚える。 本研究では、これらの4か国における先住民運動の展開を比較検討したが、共通点として人権や内戦被害の補償という政治的主張が文化により正当化される傾向がより顕著に見られることである。これは、近年地球規模で見受けられる傾向として注目に値する。イスラムという政治的アイデンティティも、目的や方向は異なるものの、きわめて類似した傾向である。 続きを見る
6.
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Cover image of ベトナムにおける攪乱をうけたマングローブ林の更新動態の分子集団遺伝学的研究 — Molecular population genetic study on regeneration processes of disturbed mangrove forests in Vietnam
舘田 英典 ; TACHIDA Hidenori
研究期間: 2001-2003
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概要: マングローブは熱帯、亜熱帯の感潮帯に生育する樹木群で、その森林面積は世界全体で2億ヘクタールを占めるとされる。本調査ではベトナム戦争による攪乱後、天然更新によって回復しつつあるベトナムのマングローブ林において、その生態系の構造を調べ、更に分子集団遺伝学的方法を用いて構成樹木集団の遺伝的変異を解析し、環境適応の様子と、更新の動態を解明する。これにより、天然更新のメカニズムを最大限に利用したマングローブ林生態系の再生修復の方法を検討した。 1.マングローブの更新動態については特にマングローブ根系の炭素蓄積の過程に注目し、北部Nam dinhおよびThai binhに調査区をもうけ、マングローブ林の土壌中の炭素量を測定した。その結果マンゴローブ林では多量の炭素が土壌中に蓄積されており、その量は潮汐頻度および林齢に大きく依存することが明らかになった。 2.遺伝的変異量については北部Don rui, Xuan thuy、中部、Canh duong,南部Can Gio, Vinh loi, Ngoc hienでヒルギダマシおよびメヒルギの葉のサンプルを採集し、AFLPおよびマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝的変異を解析した。ヒルギダマシについては変異量は他の地域と比較して少なかったが集団間の遺伝的分化の程度は大きかった。メヒルギは南部と北部で遺伝的に大きく異なり、北部の集団は西表島のメヒルギとの関連が見られた。また南部のものはボルネオのものと関連しており、それぞれ別種であると見なすのが妥当であると考えられた。遺伝的変異量は北部では大きく、南部では小さかった。 また葉緑体にコードされるMatKを含む領域(全長3kb)の配列を、系統が離れておりまた移動に関する形質等が異なる三種(上記二種とヒルギモドキ)で、北部、中部、南部の集団について解析した。その結果、種によって集団間分化の状態や変異量に大きな違いがあることを明らかにした。 続きを見る
7.
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Cover image of 東南アジア熱帯樹木種の遺伝学的研究のためのDNAデータベース作成 — Internet based DNA database for genetic studies on tropical species from South Eastern Asia
SZMIDT Alfred Edward ; SZMIDT Alfred edward
研究期間: 2001-2003
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概要: このプロジェクトの目的は、アジアに分布する生態的・経済的に有用な樹木の自然集団のDNAサンプルに関し、データベースを構築し、インターネット上で公開することである。データベースには分類、採集地、サンプルの状態などが明記してある。インターネットを介した通信販売のように、検索と注文ができるシステムになっている。データベースに登録してあるDNAサンプルは、利益が目的でない科学者であれば規定の信任状を確認の上、誰にでも送料のみで配っている。データベースは私達の研究室で管理している以下のウェブサイトからアクセスできる。 http://genetics.biology.kyushn-u.ac.jp. アジアには莫大な数の樹種が現存している。そのため全ての樹種について研究することは不可能であるし、また不必要である。そこで私たちは、材木、燃料、繊維、果実として特に生態的・経済的に有用な樹木に焦点を当てている。これまで、このような樹木はアジアのそれぞれの国で同定されてきた。特に私達はBambusa、Calamus、Rhizophora、Dipterocarpus、Shorea、Tectona属の収集に力を注いだ。またサンプルは日本、マレーシア、タイ、中国、インド、スリランカ、ベトナム、セイシェル諸島、マダガスカルから採集されたものである。これまでデータベースにはアジアとマダガスカルからの200種2000個体以上のサンプルが登録されている。最近、スウェーデンとロシアの科学者との協力で、アジアに分布するカラマツ属の全種の唯一のサンプルコレクションを手に入れた。これらのサンプルについて、現在データベースに入力中であり、今年の後半に公開する予定である。 このプロジェクトについて3人の修士課程の学生と2人の学部生が研究した。 続きを見る
8.
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Cover image of 東アジア(中国・朝鮮・日本)における血栓症発症要因の探索と血栓症の治療 — Risk Factors for Asian Thrombophilia
濱崎 直孝 ; HAMASAKI Naotaka
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究期間はH13-14年度で本年度は最終年度であった。非常に良い成果が出たので、下記に成果を列挙する。 1.我々は1994年から今日まで、約1000名の血栓症を疑われる患者の凝固関連諸因子の機能を網羅的・系統的に検索し機能異常分子の全遺伝子配列を解析しその遺伝子背景を明らかにしている。H13-14年度では約100症例について解析した。 2.その結果を分析してみると、日本人ではProtein S凝固制御系因子の分子異常が血栓症の非常に強い危険因子であることが判明した。 3.中国、タイの両国から約50名づつの健常人の血液サンプルとDNAを入手解析したところ、凝固制御因子に関連した遺伝子多系の種類、発生頻度が日本人の場合と同様であり、欧米人とは明らかに違うことが判明した。 4.韓国からのサンプルは諸般の事情で入手不可能であった。また、中国、タイの両国の血栓症患者の検体の解析は結論を出すには少々数が少なかったので、継続して調査することにした。 5.凝固制御因子に関連した遺伝子多系の種類、発生頻度の罰査から、日本人を含むアジア人では、欧米人の血栓性素因とは全く違い、日本人ではProtein S凝固制御系因子の分子異常が血栓症の非常に強い危険因子であることを明らかにした。 現在、我々はこの結果を踏まえてProtein S分子の高次構造変化を利用した治療薬の開発を試みている。 続きを見る
9.
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Cover image of カント哲学における判断と存在の関係について — The Relationship between Judgment and Being in Kant's Philosophy
圓谷 裕二 ; TSUBURAYA Yuji
研究期間: 2001-2003
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概要: 本研究の目的は、カント哲学における判断論を、彼の超越論的哲学の全体の中に位置づけながら考察し、それを通して、判断と存在の根源的な関わりを明らかにすることである。従来のカント研究においては、カントの判断論は、『純粋理性批判』の一部門である「超越論的分析論」に限定して論じられる傾向が強かった。しかしながら、理論哲学に限定した解釈は、カントの判断論のもつ哲学的意義を捉え損なうものである。本研究においては、「分析論」に偏向したカントの判断論の解釈の限界を次の二つの視点から批判することによって、カントの判断論のもつ存在論的意義を際立たせることにしたい。 第一の視点は、判断論を「分析論」にのみ位置づけるのではなく、それを、『純粋理性批判』の「弁証論」をも視野に収めながら捉え直すことによって、判断と「理性」、ないし判断と「理念」との深い関わりを明らかにする。すなわち、或る判断は、他の判断から孤立して成立しうるものではなく、判断相互の関係性において、さらには、理念的全体性との関係性においてしか成立しえないものである。カントのこの洞察を手がかりに、カントの判断論のもつ理念的ないし存在論的意義を明らかにする。 第二の視点は、『判断力批判』の趣味論や芸術論における反省的判断力の在り方に着目することによって、自然の生動性と多様性の表現としての判断の意義を浮き彫りにする。美の鑑賞や創作に関わる判断についての考察は、判断論を第一の視点における全体的理念との関係という側面のみならず、さらには、判断のもちうる創造的側面にも光を当てることになろう。 続きを見る
10.
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Cover image of 宗教とモダニティの関係についての総合的研究-世俗化論を超えるために — General Study on Religions and Modernity
竹沢 尚一郎 ; TAKEZAWA Shoichiro
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究は平成13年から14年まで、2年間にわたっておこなわれた。宗教とモダニティの観点から各自が研究した成果をもとに、通算で5回の研究会を組織し、問題意識の共有と相互の理解を深めた。 平成13年度には、イギリス、フランス、タイ、日本における宗教とモダニティの関係に関して研究発表をおこなった。平成14年度には、ルーマニア、ドイツ、マレーシア、中国、インド、日本の事例について、研究発表をおこなった。これにより、イギリスとフランスなどの近代化の先進諸国、日本とドイツなどの後発近代化諸国、インド、マレーシアという西洋の植民地支配とともに近代化の進行した諸国、そして中国、タイ、ルーマニアという植民地化はされなかったが、近代化の遅れた諸国の事例を集めることができた。 この比較研究により明らかになったのは、以下のことである。先進近代化社会としてのイギリスとフランスにおいては、19世紀後半には世俗と宗教の対立が深まったこと。日本とドイツ、ルーマニアといった後進近代化社会においては、近代化の過程で宗教とナショナリズム、ファシズムが密接に関係しながら社会の支配的イデオロギーを構成したこと。また、マレーシアやインドなど、西欧諸国の植民地支配を受けた国々では、本国における宗教政策と、現地における宗教運動および宗教研究の相関を考慮すべきこと。 本研究の過程で、宗教概念とモダニティの概念が、相反すると同時に相関するものであることも明らかにされた。それゆえ宗教とモダニティの関係を考察することは、これら両概念のより深い理解につながることが確認された。 また、宗教研究を深化させるために、儀礼、聖なるもの、世俗化、憑依、宗教実践、民俗と主教、植民地と宗教、宗教統制などの諸概念について、批判的な検討をおこなった。以上により、宗教研究のこれまでにない広がりと深まりが実現されたと確信している。 続きを見る
11.
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Cover image of 祭りと国家の比較宗教学的調査研究 — Field Research on Japanese Local Festivals and Nation-State
関 一敏 ; SEKI Kazutoshi
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究は、維新期から現在にいたる日本近現代史上の三点(明治初期、第二次大戦前後、高度成長期以後)を中心とする時系列の軸と、現代の都市と農山村、さらには島嶼部の祭の調査研究という現在時の軸からなっている。平成十三年度は、(1)対馬の民俗調査、(2)これにかかわる文献資料収集、(3)全国版図の他地域との比較を可能にする文献資料収集、の三点をおこなった。(1)ならびに(2)については、島嶼部(離島)・対馬東部の一漁村に地域を限定し、年中行事の全体像、漁業と中心とした生業全般、社会変動と過疎化、離島振興法と生活環境、教育問題、墓地問題、等々の集中調査をこころみた。主として第二次大戦以降の、法制・教育制度・流通運輸といった国家規模のシステムのなかで離島の経験してきた祭り(年中行事・先祖の祀り)の変動過程を(1)の聞き書きから、又(2)の文献資料・先行研究によってそれ以前の時代相をたどった。(3)は、明治期民俗統制(関)と戦後復興期の地域性の回復過程(竹沢)にそれぞれ焦点をあわせ、地域史資料の発掘とともに、主として神道関係の資料収集をおこなった。平成十四年度はひきつづきこれを継続し、とくに(1)の民俗調査を赤米の神事で知られる豆酘で集中的におこなった。上記の島嶼部をめぐる社会変動にともない、担い手が激減しながらもその性質上、観光化の困難な祭りの一例である。当初からの目的である九州地域内の都市・農山村部との比較はなお不十分な点があるものの、これによって以前からの博多山笠・椎葉神楽調査資料との比較検討の素地は整ったと判断している。 続きを見る
12.
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Cover image of 組織における慣行的制度の変革が成員とチーム活動に及ぼす影響に関する実証研究 — Studies on the effects of changes in traditional system in Japanese organization upon activities of member and teams
古川 久敬 ; FURUKAWA Hisataka
研究期間: 2001-2002
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概要: 1 人的資源とビジネスモデルの相互充足性原理について理論的な提案を行った 効果的な組織マネジメント、特にヒューマンマネジメントにおいて普遍性を持つ理論として、人的資源とビジネスモデルの相互充足性原理を提唱した。これによって、時代を超えて、文化を超えて、景気の良否を超えて、ヒューマンマネジメントの適切性を検討できる視点が得られる。 2 相互充足性原理について実証研究を行った この相互充足性原理について、日本企業511社の人事および経営企画責任者を対象とする調査を実施した(産業能率大学総合研究所との共同研究)。主な結果は、(1)成果主義の内容は多様であり、(2)成果重視の人事制度は、成員のモチベーションや能力には促進的であるが、対人関係には促進的と抑制的が相半ばするとみられており、そして(3)その効果性は、組織特性、職務課題特性、あるいは評価内容などと関連して大きな差異がみられることも判明した。 3 「時限性を持つチーム」の業績を左右するリーダーシップ要因を解明した 我が国の組織において時限性を持つチーム(プロジェクトチームなど)のリーダー155名を対象とする調査研究を実施した。またチームリーダーシップの測定尺度を開発した(産業能率大学研究開発部との共同研究)。チームの置かれている条件が厳しい場合、可能性を柔軟に探索し、試行や実験を積極的に行うチームほど、その活動は活性化し、業績も高いことを明らかにした。 4 新しい能力指標であるコンピテンシーの学習についても、理論的実践的まとめを行った 5 研究成果のまとめを行った 平成13年度および14年度の研究成果を報告書としてまとめた。本研究の成果は、効果的な組織変革のあり方に対して実践的な示唆を提供するものである。 続きを見る
13.
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Cover image of 高齢者サービスの整備と高齢者の地理的移動の関係についての研究 — Research on relations between services for older persons and senior migration
小川 全夫 ; OGAWA Takeo
研究期間: 2001-2003
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概要: 文献調査により、高齢者の地理的移動に関する高齢者人口移動転換仮説を検討することとした。 まず市町村レベルにおける1995年及び2000年国勢調査結果に基づいて、55歳から59歳人口が5年後60歳から64歳になった時に増えているかどうか、及び60歳から64歳人口が5年後65歳から69歳になった時に増えているかどうかを算定した結果、949市町村で増えていることが判明した。通常はコーホート人口は加齢とともに減少するので、これが増加を示すというのは、社会増があったと想定される。1990年から1995年においては、社会増と想定される市町村が559だったので、確実に向老期高齢者の流入があったと想定される市町村数は増加したといえる。 次にコーホート分析によって向老期高齢者の社会増があったと想定される市町村に対してファックスと電話によるアンケート調査を行った。回答者は市町村の企画、統計の担当者で、必要に応じて福祉担当者の協力を得た。その結果692の回答を得た。回答率は72.9%であった。その分析結果、向老期高齢者移動については、全人口の増減と必ずしも同調していないこと、農山村と郊外で生じていること、この事実についての認知度が低いこと、住宅地造成・Uターン・福祉施設や病院建設・田舎暮らしなど多様な理由が背景にあることなどが判った。 この調査結果を各市町村に配布して、調査結果の還元を図った。 市町村の地図に統計情報を描く作業を行った。 向老期高齢者の社会増があった市町村率と、社会福祉機能の整備の状況を都道府県レベルで相関分析を行い、現在は高齢者サービス機能の高いところに向けて高齢者の移動が生じている段階であると判断した。 こうした高齢者の社会増が生じる地域社会で再組織化を図る上で、参考になるアメリカのコロラド・スプリングスにあるリタイアメント・コミュニティの「入居契約書」を例示した。 続きを見る
14.
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Cover image of 病院ボランティアの実態とあり方に関する全国調査研究 — Nationwide research on Hospital Volunteers regarding status and action model
安立 清史 ; ADACHI Kiyoshi
研究期間: 2001-2002
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概要: 2001年度には、日本全体で病院ボランティア活動をしているグループがどれだけあるのかを、特定非営利活動法人日本病院ボランティア協会とともに調査した。また、先進的な活動をしているグループを訪問調査して、病院ボランティア活動受け入れシステムについての考察を行った。これをふまえて2002年度には、日本病院ボランティア協会加盟のすべての病院ボランティアグループ(162団体)を対象として、グループの実態と活動内容に関するアンケート調査を行った。第一次調査は、全国の病院ボランティアグループの概況と活動内容を把握するため2002年6月に実施し、152票(93.8%)を回収した。調査項目は、グループの設立経緯や概況、ボランティア活動内容などである。第二次調査は、第一次調査の結果をふまえて、病院ボランティアグループの機能を詳細に調査することとし、同様にして139票(87.4%)を回収した。この結果、病院ボランティア受け入れシステムに関して、次のようなことが明らかになった。(1)全国で病院ボランティア活動が、多様化しながら広がっていること。とりわけ1995年以降、国公立病院で増加傾向にある。ただし地域差も大きい。(2)ボランティアコーディネート機能が多様に果たされるようになりつつある。90年代以降、ボランティアコーディネートの重要性が認識され65%の病院にコーディネーターがいる。しかしまだ兼任も多くコーディネートに関しては課題も多い。(3)ボランティアグループとしての自覚や意識が形成されてきている。ボランティアが病院で活動する個々のままではなく、ボランティアグループとしての自己形成しはじめている。その中から病院を地域社会に開かれたものにしていきたいというような、ボランティアとしての新たな自覚や意識、目的や方向性などが現れてきている。病院ボランティアの全国への普及発展のためには、各地の病院ボランティアの連携・連帯を進めるネットワーク組織が必要である。 続きを見る
15.
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Cover image of 「文化」のグローバリゼーションとアジア地域主義:大衆文化と若者文化を中心に — THE GLOBALIZATION OF CULTURE AND ASIAN REGIONALISM FOCUSING ON POPULAR YOUTH (SUB)CULTURE
上野 俊哉 ; UENO Toshiya ; 毛利 嘉孝
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究は、当初、九州大学の毛利を代表とし、上野を分担者として韓国などアジアの大学(院)と連携したワークショップや会議、香港における現代美術やサブカルチャーの調査、日本におけるアジア美術、フットボール文化、ダンス・テクノ文化やミニコミなど若者大衆文化の状況を「心理地理学」的フィールドワークを通して展開した。次年度は毛利がロンドン滞在のため、上野が研究代表者となり、研究を進めた。基本的に、前年度までの人脈やネットワーク、問題意識をいかす方向で研究は継続された。 グローバリゼーションやアジア地域主義を文化研究が問題にする場合、最近の研究動向では「国民国家批判」、つまり「サブカルチャーのナショナルなものへの回収・動員」の批判的検討が主要な方法的視点となっている。これに対して、本ブロジェクトでは、より若者文化、大衆文化、若者文化のシーン(現場)の細部や雰囲気(アトモスフェア)に意識的にも無意識的にも密着したアプローチをとっている。フットボールの日韓共催ワールドカップや、アニメやマンガなど日本の大衆文化のアジア諸地域における消費行動、日本からオセアニアまでを巻き込みつつある野外パーティの文化、写真や建築における都市論的関心の広がり、フィリビンにおける実験映画製作と先住民文化教育のつながり、といった一見雑多で広範な対象に向かっているのはこのためである。こうした方法論的視座によって、サブカルチャーや大衆文化を政治的、イデオロギー的枠組みであらかじめ裁断するのではなく、むしろ、それぞれの文化の現場に内在する「政治的なもの」や係争のポイントを複数の領域で確認することができた。 ただし、このことは、われわれがサブカルチャーや大衆文化を単に美学的、趣味的、感覚的にセレブレートし、批判的に見つめるのを怠っていることを意味しない。ここでも逆に、それぞれのシーンの内側/ただなかに様々な抵抗や政治的、イデオロギー的葛藤がひそんでおり、これを直視することの困難もまた、本研究の記述や方法に反映していることに注意されたい。 続きを見る
16.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 現代日本の「子ども観」に関する実証的研究 — A Study of the Japanese Views of Children in the Present day
住田 正樹 ; SUMIDA Masaki
研究期間: 2001-2003
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概要: 本研究の目的は、人々が子どもについて抱いている観念、すなわち「子ども観」の現代的様相をとくに世代差を分析軸として明らかにすることにある。変動の激しい現代社会にあっては、世代によって「子ども観」は大きく異なっているだろう。 これまでの予備調査の結果を踏まえ、今年度は本調査としてK都市圏(1市2町)を調査対象地として層化2段階サンプリングを行い、2503名の対象者を抽出して郵送調査を実施した。調査結果から主要な知見を述べれば、以下のようである。 (1)若い成人世代は,「子ども期」を長く捉える傾向があり、そして子どもらしさを純粋性に求める傾向があるが、高年世代は子どもらしさを従順性に求めている。 (2)若い世代は子どもの発達にとって環境を重視しているが、高年世代は素質を重視している。しかし若年世代は個性を重視した発達を、高年世代は社会の一員としての社会性を重視した発達を是としている。しかしいずれの世代も協調型よりも自己主張型の子ども像を肯定的に評価している。 (3)いずれの世代の成人も、子どもの生活環境の利便性については評価しているが、安全性、快適性については相当に否定的である。 (4)総じて言えることは、いずれの世代も性善説的な「子ども観」を抱いているものの、今日の子どもたちに対する評価となると否定的である。そして否定的評価にならざるを得ない背景としてテレビゲームを初めとする遊びの変化と勉強に追いまくられるという子どもを取り巻く環境をあげている。 続きを見る
17.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 教育哲学的意味における〈子ども〉〈大人〉とその現代的諸相の研究 —
土戸 敏彦 ; TSUCHIDO Toshihiko
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究費補助金によって得られた研究成果を、以下の4点に集約する。 第一に、研究課題に示されている「教育哲学」という概念について吟味し、従来の概念の曖味さを払拭すべく、独創的な定義を試みた。すなわち、「教育哲学」の任務とは、「教育」がもつ前提を受容することなく、かつ「教育」なる事象およびそれがはらむ前提を根本から吟味することである。 第二に、これに基づいて<子ども>および<大人>なる概念の精緻化を行なった。この作業は、見田・河合・谷川『子どもと大人』(岩波書店)で交わされている議論を基底に、子ども性ないし子ども原理としての<子ども>(およびその対照的存在としての<大人>)を析出させている。そのうえで、一人の人間のなかに<子ども>と<大人>が生き、さまざまに活動しており、この均衡および葛藤がその時代や社会特有の諸現象を生み出すと推論している。 すなわち第三に、現代という時代および社会の特徴は、<子ども>の顕著な残存傾向にあり、したがってまた<大人>に対する<子ども>の比率が肥大・漸増していることであり、この見地に立って種々の現象について概括的なレビューを行なった。たとえば、「フリーター」「援助交際」「学級崩壊」などである。 第四の成果として、「共生」という問題をこの<子ども>との関連で追究した点を挙げておく。共生のパートナーは、,同化しえない異質な存在であるが、<子ども>こそが「教育」にとってそのような共生のパートナーではないか。なぜなら、「教育」は徹頭徹尾、<大人>原理に基づいているからである-以上のような問題提起を行なっている。 続きを見る
18.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 民俗神や民族神との関係分析を通した近世武家権力神の基礎的研究 — Research on deification of the samurai through the relation between God of folk customs or racial God
高野 信治 ; TAKANO Nobuharu
研究期間: 2001-2004
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概要: 本研究は日本近世の宗教世界を近世的「神」観念としてとらえ、民俗神・権力神・民族神という範疇を措定し、とくに申請者の研究履歴に照らし、権力神を中心にすえながら三者の関係性と変容の検討を目的とした。具体的には以下の二点に目的とその成果は要約できる。 第一の目的は、民俗神と武家権力神との関係性の解明である。権力神とは藩主(藩祖)や夫人、家中、さらに新田義貞等南朝方武将など、神格化された武家領主に関わる人物を想定している。民俗神の集団神的側面との関連では神格化された武家領主(権力神)の地域社会におけるシンボルとしての可能性が浮かび上がってきた。これは地域社会集団の成り立ち・歴史性と武家領主の関係性の指摘につながる。また「仁政」を展開した藩主・家中の民衆による神格化の事例収拾とその解析を行った。領主権力の政治支配は民衆の生活のあり方に直接関係し、生活に利益をおよぼす領主(藩主・代官など)が人神となるパターンの検出を通じて近世民衆の領主像がある程度明らかになったのではないかと考える。 第二の目的はかかる第一の目的をうけ、さらに権力神という視角からみた武家集団のアイデンティティのあり方と民族神・民俗神との関わりの考察であった。ここでは各藩における藩主(祖)神の事例をできるだけ収拾しながら、その成立の契機や性格などを、具体的な政治のあり方と相即させ分析した。藩主神の措定は藩の危機的状況下で、家臣団の統合イデオロギーの再生産装置としてなされるとの見方があるが、そこには武家領主集団・藩の自己認識・歴史意識が検出できた。そしてそのような武家領主の神格を民衆側が地域社会の精神的な核としてとらえ返す動向が、とくに近代都市形成のなかで顕著にあらわれてくる、つまり武士階層が歴史的に解消したのちに武士神格の意味が大きくなっていく見通しを得るにいたった。 続きを見る
19.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of カイロの墓地区「死者の街」のデータベース化による歴史研究 — A Historical Study on the Cairo Cemeteries of the City of the Dead Using A Database
大稔 哲也 ; OHTOSHI Tetsuya
研究期間: 2001-2003
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概要: まず第1に、エジプト死者の街や、その『参詣の書』に関連する史料・研究書について調査し、蒐集することが出来た。特にエジプトでは、国立図書館などにおいて貴重な資料のマイクロ複写を行った。次いで、イスラーム初期以来、エジプトの広大な墓地区「死者の街」に埋葬されてきた人々に関するデータベース作成に従事した。特に死者の街『参詣書』のデータを、情報の項目を整理したシートへ被葬者・参詣所ごとに入力した。項目としては、参詣所名、被葬者氏名(通称、尊称、添え名など)、性別、生没年、家系・家族全般の情報、身体的特徴、職業、空間移動、知的背景(ハディースの系譜、法学派、神学派、師弟、学歴、著作、スーフィーか、所属教団他)、被葬者の奇蹟譚、逸話、墓に関する情報(位置、形状・素材、縁起、参詣対象か、参詣慣行、祈願内容他)などが挙げられる。総数や全体の輪郭を把握すると共にかなりのデータを蓄積出来たため、今後につながる基礎的な作業はほぼ終了した。 第3にデータベース化された資料をもとに分析を行い、その中の特にスーフィズム関連の情報を事例研究として検討した。それによって、中世エジプト社会におけるスーフィズムの展開と呼応する、史料上に現れたスーフィー関連の呼称の増加や、スーフィー関連の修道施設の激増とその意味などが具体的に詳らかにされた。第4に、参詣の書に示された墓と参詣路路を、現地踏査した。加えて、墓地居住者などからも聞き取りを行うことが出来た。そして、墓地のトポグラフィーの再構成や変遷過程を跡づける作業を通じて、史料と歴史的な空間構成との対応を問う論文の作成が可能となった。さらに、本研究の成果は2004年春にカイロより出版予定のLe developpement du soufisme en Egypte a l'epoque mameloukeにも英文論文として収録される。 続きを見る
20.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 集落・墓地・祭祀・土器から見た弥生時代社会の変容過程の研究 — A study of the transformation process of the social atructure during Yayoi period as seen from settlement, cemetery, ritual and pottery.
岩永 省三 ; IWANAGA Shozo
研究期間: 2001-2004
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概要: 本研究は、弥生時代を主対象とし、集落や墓地の構造に反映される人間集団の編成原理、土器様式の構造や伝播現象に反映される集団間関係、祭祀に反映される価値観のあり方に着目し、それらの時間的・空間的変化を事象ごとに細かく分析した上で、その成果を総合することによって、当該期の社会全体の構造変化や集団間の政治的・文化的関係の変化相を明らかにする事を目的とした。 弥生時代の大規模環濠集落の評価について検討し、農耕市民都市・集住・多職種共生・農閑期分業・専業工人などの概念の再検討から、近年盛んな弥生都市論が妥当ではないと結論付けた。 一つの土器様式の様式構造に反映される人間集団の価値体系、土器様式間の空間的関係の時間的変化、土器の伝播現象から伺われる集団間関係の変化とその原因について分析し、それらを、集落や墓地の構造に反映される人間集団の編成原理とその変動と総合することによって、当該期の社会全体の構造変化や集団間の政治的・文化的関係の変化相を明らかにする見通しを立てた。 弥生時代後期から古墳時代初頭にかけて、社会の変化とりわけ階層化と地域的統合と信仰形態の変化が急速に進行した理由を、前段階すなわち弥生時代社会が稲作農耕を主生業とする社会として安定して以来、後期後半に至るまでの内的要因・外的要因にまで遡ることによって解明する基礎作業を行った。 さらに、婚姻制度・社会集団形態・社会組織の発展段階における大きな画期と政治組織の画期とが大枠で対応すると言うエンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』モデルの妥当性を検討し、首長制、擬制的同族関係、部族同盟、「世帯共同体」などの概念を検討し、日本古代における基層社会の出自原理、家族形態とその発展系列、世帯共同体の存否、家父長制の成立、などの問題について検討を加えた。 続きを見る
21.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 新出本による古活字版『源氏物語』本文の研究 — Research on the text of
今西 裕一郎 ; IMANISHI Yuichiro
研究期間: 2001-2003
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概要: 本研究は、川瀬一馬『古活字版之研究』(増補版)における古活字版『現時物語』の成果を踏まえ、その後に新たに出現した2点の古活字版『現時物語』を取り上げ、江戸時代における版本『源氏物語』本文の形成過程の追求を試みた。 古活字版『源氏物語』は川瀬氏等の研究によって、従来、慶長初期刊本、伝嵯峨本、元和九年刊本、寛永中刊本、同異植字版の5種が知られていたが、昭和40年代後半に相次いで2点の新出本が出現した。九州大学文学部蔵本と久邇宮家旧蔵本とである。 久邇宮家本は反町茂雄氏によって紹介された当初、九大本と酷似もしくは同一かと思われる写真版一葉のみの提示であったが、その後、全丁の写真版が学習院大学文学部に蔵されていることがわかった。その写真を得て九大・久邇宮両本の精密な比較検討を行ったところ、九大本に即していえば全2000余丁のうち600丁が久邇宮本と同版であるという結果を得、従ってこの両者が密接の関連する制作であったらしいこと、が判明した。 のみならず、久邇宮家本における九大本と一致しない残りの約七割の丁は、ことごとく寛永中異植字版と一致することも調査の結果判明した。この事実を単純に解釈すれば、久邇宮家本は、寛永異植字版を基にし、その足らざる部分を九大本と同版で補って出来た本、ということになる。古活字による出版活動においてこのような事があり得るのかについては、さらに慎重に検証しなければならない。 なお、本研究においては研究の基礎として整版本をも併せた版本源氏物語の本文総覧を作成した。研究成果報告書にはその一部を併載した。 続きを見る
22.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 散逸物語研究データ・ベースの構築と散逸物語を組み込んだ〈新しい物語史〉の構想 — Make of Data-base of Research of Lost Monogatari and Conception of the New
辛島 正雄 ; KARASHIMA Masao
研究期間: 2001-2003
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概要: 研究課題の第一である「散逸物語研究データ・ベースの構築」に関しては、特殊なソフトによることなく、広く普及している「マイクロソフト・エクセル」を用いることで、使用者の目的に応じて自在なアレンジが可能なようにとの配慮のもと、目録のデータ入力を3年間継続して行い、最終的に、3種類の目録を相互に検索できる環境を整えることができた。ただし、広く研究者の使用に堪えるようにするためには、さらに大掛かりな周辺情報・派生情報とのリンクが是非とも望まれるところであり、研究の規模として、今回はとうていそこまで及ばなかったため、その点は今後の課題である。 第二の課題である「散逸物語を組み込んだ<新しい物語史>の構想」については、平成14年度の熊本大学文学部、平成15年度の鹿児島大学法文学部における、二度の集中講義の機会をとらえて、その講義資料を作成するなかで、さまざまにアイディアを練ることができた。今後は、これを基礎としながら、より発展させたかたちで、論文ないし著書として公にすることを目指したい。 第二の課題と関わる個別論文は、三年間に四本を発表することができた。そこでは、『よそふるこひの一巻』『とりかへばや』『ひとりごと』などを取り扱っているが、いずれも、限られた資料をより精密に読み込みつつ、広く周辺の関連資料にも目を向けることで、従来にない新知見を提出しており、こうした地道な研究の蓄積が、「<新しい物語史>の構想」にとっても重要であること、言を埃たない。 続きを見る
23.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of ヘンリー・ソローの人と作品における宇宙意識 — Henry Thoneau's Consciousness of the Cosmic Universe in his Life and Works
小野 和人 ; ONO Kazuto
研究期間: 2001-2002
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概要: アメリカ・ルネッサンス期(19世紀前半期)における世界の主な天文学上の発見や成果について調査し、それらが当時のアメリカの文化・文学思潮に及ぼした種々の影響を考察し、分析した。即ち、当時の合衆国の主要な文人・文化人たち(エマスン、ポー、ホイットマン等)の作品や伝記を参照し、天文現象や天文学に関する描写と言及を抽出し、それらを検討することによって彼らが抱いた宇宙についての意識や宇宙観を概観し、その成果をまとめて論文化した。 次にこのような文人たちの中で特にヘンリー・ソローを選び、ソローの代表作『ウオールデン』を中心にして、ソローの宇宙や天文学に関する種々の表現と言及を抽出し、この方面における彼の意識を考察した。その結果、それらが彼の人生上の悟りを表す表現に使用され、また他者に対して人生の見直しを提唱する際にも比喩的に活用されていることが判明した。さらに、我々現代人たちの一般的な宇宙観も参照し、ソローの場合と比較した。ソローが人間を宇宙の中心的な存在と見なしたのに対し、現代人は、人間を宇宙の周辺に位置する孤児というように受け止めているという。このような両者の決定的な見解の相違を指摘した。以上の成果を集約し、論文として発表した。なお、ソローのエッセイ「月」は、彼の夜の散策と自然や天体の観察を主な内容とする作品であり、今回の研究に深い関わりを持つものであるので、作品全体を翻訳し、大学の紀要に発表した。 続きを見る
24.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 補文タイプのマーキングとCP構造の研究 — A Study of Complement Types and CP-Structures
稲田 俊明 ; INADA Toshiaki
研究期間: 2001-2003
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概要: 文タイプと法性に関わる問題(平叙文、疑問文、命令文等の表示)と極性に関わる問題(肯定文、否定文の表示)を節構造と意味との相関性に焦点をあてて総合的に研究した。これらの問題は、従来は、構文研究の問題として、あるいは否定文の諸特性の研究として、別個の課題のもとに研究されていたので、それらを統合してその統語的・意味的諸特性を関連付けて研究することは、新しい試みであった。またこのような統合的研究によって得られた知見は意義ある研究成果であると言える。 具体的には、埋め込み構造と英語の間接疑問文の多様性に関する理論的研究について、従来のCP構造に関する仮定には問題があることを指摘し、その解決法として日本語、英語をはじめとする諸言語の疑問文の類型化と問い返し疑問文の構造に関する詳細な研究に基づいて、普遍文法の理論の構成に関する新しい分析を示唆した。また、日・英語の否定対極表現の認可に関する従来の研究の問題点を指摘し、否定に関する2種類の機能範疇(PolP, NegP)の役割について、日・英語には非対称性が存在することを指摘した。また、強交差現象に関する理論的考察、再構築効果の統語的・意味的特性の研究において大きな成果をあげた。 これらの研究成果については、関連学会講演会、日本英語学会、日本英文学会九州支部大会シンポジウム、福岡言語学会等において発表し、また出版物で公表した。 続きを見る
25.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 19世紀アメリカ文学におけるピューリタニズムの変容-ディキンスンを中心に — Transformation of Puritanism in the 19th Century American Literature, Concerning Emily Dickinson
原口 三郎 ; HARAGUCHI Saburo
研究期間: 2001-2003
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概要: 1.広くピューリタニズムの変容を調べるに当たり、ディキンスンが当時書き送った手紙を翻訳することで、彼女の自然観・宗教観・社会観を検討した。それらの手紙とは、(1)文芸評論家T.W.Higginsonへの手紙、(2)親友であった新聞社主筆Samuel Bowlesへの手紙、(3)晩年の恋人であったLord判事への手紙、(4)学校時代の友達、兄、妹や従妹たちへの手紙である。 2.フルブライト研究員に選ばれ、ブラウン大で2001年に学んだ時の、St.Armand教授の助言を得て、Paul Ferlazzo, Emily Dickinsonの翻訳を進めて来た。 3.近い将来、ディキンスンの伝記を書く目的で、ディキンスンに関する年譜を整備した。 4.難解なディキンスン詩の翻訳がまだ十分でないわが国の事情に鑑み、秀詩100を翻訳し、発表した。また詩の特徴とその読み方例を示すことで、D詩への案内の役を果たした。 5.アマースト大学のカリキュラムを調べることで、当時の教育が地学や農政学等実利的科学に重きを置く反面、正統的キリスト教を重視した宗教的な色彩の強いものであることを確認した。 6.今後は19世紀アメリカと同時代のイギリスの文化・宗教との連続性の研究の必要性を痛感し、現在、伝統と反伝統の立場から研究中である。 続きを見る
26.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of アンドレ・ジッド草稿研究 — A STUDY OF ANDRE GIDE'S MANUSCRIPTS
吉井 亮雄 ; YOSHII Akio
研究期間: 2001-2003
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概要: 研究期間における成果としては,アンドレ・ジッド『狭き門』の本文・異文の精密な一覧を作成したことと,同作品にかんする書評類の分析および関連書簡の具体的調査との2つに大別される。 まず前者としては,パリ大学附属ジャック・ドゥーセ文庫所蔵の初期草稿やパリ国立図書館所蔵の自筆断片稿・タイプ完全稿等にもとづき作成していた『狭き門』の本文および異文の暫定的な一覧を,新発見の雑誌初出テクストの校正刷を参照・調査することで,さらにいっそう精密なものとした。これによって『狭き門』のテクストがどのように生成し変化していったかが,いっそう容易にとらえられるようになった。 また初年度・第2年度に収集した書評類の分析によって『狭き門』にたいする初期の受容傾向を大まかに把握するとともに,関連未完書簡の具体的調査にかんしては,各年度ともフランスで実地調査をおこない,ドゥーセ文庫所蔵の書簡数百通の筆写を完了した。現在はこれらの書簡に付注するための文献的・実証的調査を進めている。 いずれの資料体も『狭き門』の生成や受容にかんする第一次資料として決定的な重要性をもつものであり,すでに少なからぬ新事実が発見・解明されている。 続きを見る
27.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of Webベースのドイツ語マルチメディア教材開発に関する研究 — On Development of Web-based Multimeia Teaching Materials of German
田畑 義之 ; TABATA Yoshiyuki
研究期間: 2001-2002
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概要: 13年度に撮影したドイツ人教員1名のインタビューのビデオ映像をPCに取り込み、ノンリニア編集して、Web上で公開できる形に加工した。さらにこのビデオ素材をWebベースの教材プラットフォームであるWeb Exerciseに組み込んでドイツ語の聴き取り訓練用の教材を作成した。作成した教材は、我々が担当するドイツ語の授業で実際に使いながらその効果を検証した。授業での検証結果をふまえて教材を改良し、さらに全体を統一の取れた内容にするためにはもう少し時間が必要であるが、なるべく早い時期に完成させ、Web上で公開する予定である。 また上記の教材開発と平行して、ドイツ語読解力訓練用の教材作成システムも自然言語処理の研究者の協力を得て開発した。これは辞書を引かずに多読ができるように、Webブラウザーの画面上で未知語にマウスポインターを置くとその単語の意味が表示される「注釈付きテクスト」が簡単に作成できるシステムで、Web上での簡単な加工作業で適切な訳語を付与できる。フリーウェアとして公開できるように、自前の独和辞書を使いながら拡充していくので、テクストを加工することによって、同時に辞書を鍛えることができるようになっている。こちらも現在辞書を整備している段階であるが、近い内に公開できる見通しである。 続きを見る
28.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 「身体部位・身ぶり」に関わるドイツ語連語関係記述のための基礎的研究 — A fundamental study on collocational expressions including parts of the body in German
恒川 元行 ; TSUNEKAWA Motoyuki
研究期間: 2001-2004
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概要: 1.「電子化の対象とした文学作品」リストの作成 身体部位表現を収集するためにこれまで電子化してきた約100冊のドイツ語文学テキスト(過去約30年間に「ドイツ青少年文学賞」を受賞、またはその候補となった作品)を整理し、リストにまとめた。 2.「からだことば(一般)」リストの作成 本研究において事例収集の対象とした「身体部位・身ぶり表現」のドイツ語キーワードを整理し、リストにまとめた。 3.「Herr der Diebeのからだことば」リストの作成 電子化した文学作品(上記1)のうち、身体部位語が極めて多量に含まれている作品としてFunke, Cornelia : Herr der Diebe. Hamburg, 2000を選び、この作品に含まれる本研究の対象となった身体部位語、およびその出現頻度をリストにまとめた。 4.「Herr der Diebeのからだことば」の抽出と整理 Funke, Cornelia : Herr der Diebe. Hamburg,2000に見られる身体部位語の事例をすべて拾い出し、統語的・意味的基準に基づいて配列する作業を行った。この配列(および見出し語の選定)作業には、恒川(2003)、恒川(2004)で行った考察が下敷きとしてあるが、本年度の作業では記述を簡略化し、身体部位語(名詞)と動詞との統語関係に基づく配列に限定した。 5.成果報告書の作成 上記1-3のリスト、および4のデータをまとめ、最終成果報告書を作成した。 続きを見る
29.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of トーマス・マン『魔の山』の錬金術的構造―ユングの錬金術心理の観点からの考察 — The Hermetic Structure of Thomas Mann's
池田 紘一 ; IKEDA Koichi
研究期間: 2001-2002
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概要: トーマス・マンは自ら『魔の山』を錬金術的と称し、主人公ハンス・カストルプの人間的成長を錬金術的「昇華」と呼んでいる。従来単なる比楡としてさほど真剣には受けとめられなかったこの発言の意義と射程をユングの錬金術心理学との関連において明らかにする。その要点は以下のごとくである。 1)ハンス・カストルプは「原質料」としてマダム・ショーシャをはじめとする諸元素ないしは物質との「分離」と「融合」を繰り返しながら「賢者の石」への道を辿る。この「精神」と「肉体」の錬金術的・エロス的結合の試みは失敗に帰する。それは錬金術の場合と同様、ヨーロッパ近代合理主義の批判を意味し、同時にその克服による新たな人間愛の模索を意味する。 2)物語のこのプロセスは、マンの「錬金術的物語術」と表裏一体をなしている。マンの語りは、諸元素を密封して火にかけ、昼夜を分かたず繰り返される錬金術の分離・融合の試みに等しい。諸々の偶然的出会いや偶然的出来事から必然の糸(真の結合の可能性)を紡ぎ出すその錬金術的物語技法の特質を明らかにした。 3)以上の『魔の山』の特質は、その現代的装いにも拘らず、『ファウスト』と見事に照応している。『ファウスト』もいわば、現世では失敗に帰する錬金術的実験の試みである。マンの『ファウスト』の現代的パロディーの試みは、錬金術心理学的観点を導入してはじめて、より根源的な意味での「まねび」であることが判明する。 続きを見る
30.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 日本語の文理解に関する心理言語学的研究 — Psycholinguistic research on Japanese sentence comprehension
坂本 勉 ; SAKAMOTO Tsutomu
研究期間: 2001-2003
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概要: 人間の言語理解のプロセスを明らかにするためには、心理学的な実験の成果を踏まえた上で言語学の理論に基づいた説明をめざす心理言語学的研究が必要である。しかし、日本においては、言語学と心理学という2つの異なった学問領域においてそれぞれ研究が進められてきたために、互いの分野の研究成果を共有し、十分に活用することはあまりなかった。それゆえに、本研究においては、「日本語の文理解」のプロセスに注目し、言語学・心理学の分野において今までに行われて来た研究を総合的に検討するとともに、今後の研究の方向性を示すことを目指した。そのためには、日本語の文理解研究において中心となる研究者集団が結集して、各自が蓄積してきた知見を集約・整理する必要があった。具体的には、主として次のような構文の研究を行った。(1)主語が省略された「空主語文」において、文末動詞が出現する以前にどのような処理が行われているのか。(2)通常の語順ではない「かき混ぜ文」の理解は困難であるのか。(3)途中まで間違った解釈をしてしまう「袋小路文」はなぜ理解困難なのか。(4)間違った解釈を訂正する「再分析」の際にどのようなことが起こっているのか。 本研究は、言語学者と心理学者の共同研究であるということから、理論と実験とのバランスの取れた方法論に基づいていると言えるであろう。また、脳神経科学や言語障害研究との連携や、海外の研究者との交流を通して、より深くかつ広く研究が進展していく可能性がある。人間の言語理解は、高度な認知処理のひとつの典型であるから、言語理解のメカニズムを解明することにより、人間の情報処理のメカニズム一般への洞察を得ることができる。 続きを見る
31.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 中国語圏における漫画文化の研究 — Research on Manga Culture in the Chinese Speaking World
日下 みどり ; KUSAKA Midori
研究期間: 2001-2003
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概要: 日本の「マンガ」は今や世界で認められており、文化輸出としては最大の領域となっている。これらのマンガ文化が世界に出て行くとき、それは各国でどのように評価され、受け入れられているのであろうか。この問題について、中国語圏地域(中国大陸・香港・台湾)にポイントをしぼり、それぞれの地域での日本マンガの影響及び受け入れ状況を調べるのが本研究の目的である。 13度から14年度にかけては収集した資料の整理と分類を行い、とりわけ中国・台湾・香港各地域における漫画研究・漫画批評に関する文献に重点を置いて収集した。 大きな成果としては、14年度に発行した『漫画学入門』が挙げられる。これは報告者が全学教育で行っている授業でテキストとして使う為、漫画に関する総合的な研究をまとめたものである。この中では「漫画の歴史」、「漫画作家紹介」、「作品研究」、「マンガの表現」、「アメリカン・コミックについて」、「中国漫画について」等の章を設け、解説を行った。15年度はそれまでの成果をふまえ、台湾・中国での漫画批評・評論を各新聞、雑誌などから集めて翻訳し、報告書として纏めた。こういった作業は国内では初めてであり、今後の漫画文化研究に対して極めて有益であると考えている。 続きを見る
32.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 日本中世における裁判制度および裁判外紛争処理手続きに関する総合的研究 — Comprehensive Research on the Trial System and Out-of Court Conflict Resolution in Mediaeval Japan
植田 信廣 ; UEDA Nobuhiro
研究期間: 2001-2003
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概要: 本研究においては、日本中世における紛争解決のあり方を実証的かつ総合的に研究するための前提作業として、主に『鎌倉幕府裁許状集』上・下巻のスキャナ入力によるテキストファイル化作業を進め、これをほぼ完成させた。 そこで、研究代表者は、この成果を踏まえた上で、さらに、そのDBとしての総合検索システムを構築すること、および、その公開に向けて効率的な作業方法を獲得すること、などの課題を、早期に実現するべく検討作業に取りかかっている。 また、この作業と並行して研究代表者は、前近代中国における法文化の全容解明に取り組んだ意欲的な書物である、武樹臣著『中国伝統法律文化鳥瞰』の翻訳を完成させ、植田訳『中国の伝統法文化』(九州大学出版会、2003年9月)として公表した。これは本研究の重要な副産物だったと考えている。 つぎに、研究分担者は、鎌倉幕府の裁判と和与に関する実証的研究を進めることが出来た。第一に、和与関係史料の網羅的な収集を行った。第二に、裁判外の紛争処理手続において行われた和解(私和与)に関する史料についても、網羅的な蒐集を行うとともに、整理を試みた。この作業によって、裁判外において成立した和与に関するこれまでの伝統的な理解について、これを再検討するための有意な素材が提供されることになるであろう。第三に、この際に検討した「近衛家文書」については、その史料研究を行った成果を公けにしている。 以上に加えて研究分担者は、「鎌倉幕府裁許状」に関してデータを総合的に整理していく必要から、個々の裁許状に関係する裁判関係文書の網羅的整理および検討作業を開始している。また、本研究の成果として公表するには至らなかったけれども、本間美術館所蔵「市河文書」(いちかわもんじょ)および東京大学法学部法制史資料室所蔵「周防國与田保文書」(すおうのくによだのほもんじょ)についても、調査の成果を、早期に公けにする予定である。 続きを見る
33.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of ヴィーコにおける法学の構想の再検討-『弁論術構義』を中心とする総合的研究- — A review of Vico's concept ion of jurisprudence -A study of Vico's
児玉 寛 ; KODAMA Hiroshi
研究期間: 2001-2003
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概要: ヴィーコ(1688〜1744)は、『弁論術講義』のなかで「訴訟類について」と題して、推定・定義・属性という3つの争点(status)ごとに、伝統的な修辞学のトポスの応用を例解している。このかぎりではキケローやクインティリアーヌスの弁論術と大差はない。しかし、ヴィーコにおける修辞学と法学との関係は、単純ではない。その結節点は、そのような例解にではなくて、伝統的な修辞学を「個別事情を考慮した自然的衡平の実現」という法学の構想に接合した点にある。ヴィーコにおける法学は、(1)ingeniumによって適切な中名辞を帰納的に発見すること、(2)中名辞による連結をエピケイレーマによって補強すること、(3)中名辞をメタバシスによって重層的に操作すること、を通じて可能となるというのが、本研究の結論である。Ingeniumとは、「遠く離れた相異なっている事物において類似的関係を見る能力」であり、これによって、大命題と小命題を連結する中名辞を見出す。三段論法の推論形式では、キケローと同じく5分肢説によるエピケイレーマが妥当とされ、小前提を補強するための論拠や敷衍が推論の説得力を強めるために導入される。メタバシスでは、論証を三段論法の二つの前提には含まれていない論点へと移行させる手法であり、これによって、大前提の射程が個別事情に応じて制約されて、より妥当な結論に導くことが可能となる。 続きを見る
34.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 既成市街地整備における市民参加・合意形成のための自治体行政手法の研究 — Study on governmental tools for public involvement in the system of inner city planning
大橋 洋一 ; OHASHI Yoichi
研究期間: 2001-2003
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概要: 研究は、郊外における新開発ではなく、既成市街地における街作りを対象として、そのための計画策定手法・策定手続を深めたものである。既成市街地ということで、権利関係も錯綜し、居住者が既に存在するため、計画策定過程における市民参加が不可欠となる。これまでも、このテーマに関しては、都市計画の視点から、市民参加と計画策定手続を扱った研究は多数存在する。こうした中にあって、本研究の特色は、上記の計画に関しては、そうした都市計画という政策分野に限定した視点からアプローチするのでは不十分であるという点にある。 近時では、都市計画の策定主体である地方公共団体が、自治体総合計画の変革に着手している。これは都市計画、街作り計画に限定した計画ではないが、現代行政の計画手法としては、斬新な手法を多数含んでいる。この計画手続では、例えば、予め市民に計画に関する情報が極めて大量に提供されたり、早期の段階で市民は参加することができるなどの制度的工夫が尽くされている。また、計画が実現した後には、独立性を有した第三者委員会が、計画評価を行い、計画内容・計画の進行管理・計画マネージメントについて提言を行うものとされている。 本研究では総合計画に見るイノベーションに着目して、こうした新しいタイプの総合計画の法的仕組みに、本研究の考察対象である街作り計画を位置づけていくこと、それを通じて、上記の斬新的特徴を街作り計画においても活用すること、こうした計画志制度結合により計画間調整を図るべきであること、を結論とした。 研究期間の最終年度にあたるため、以下に記すような形で、折を見て研究成果の公表に努めた。 続きを見る
35.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 心療内科を受診したうつ病患者の費用対効果性のプロスペクティブ・スタディ — A prospective study of depressed outpatients who visited the internal psychosomatic medicine
野崎 剛弘 ; NOZAKI Takehiro
研究期間: 2001-2003
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概要: 1.うつ病患者の病型と治療成績との関係 九州大学心療内科を受診したうつ病またはうつ状態患者の病型と予後の関係をプロスペクティブに検討した。1999年12月1日から2000年5月31日までの間に新患外来を受診した患者で、DSM-IVの大うつ病性障害、気分変調性障害、抑うつ気分を伴う適応障害および特定不能のうつ病性障害の診断基準を満たした者は計157名であった。この中で、6ヶ月間完全に外来でフォローされた65名について、Hamiltonうつ症状評価尺度(HAM-D)およびZungうつ症状自己評価尺度(SDS)でうつ症状の改善度を経時的に評価した。抑うつ症状を呈するどの病型も治療開始3ヶ月で、良好な治療成績が得られた。その効果は6ヶ月後においてもほぼ維持された。とくに大うつ病性障害でその成果が著しかった。軽症うつ病が心療内科における治療でも、その病型にかかわりなく効果が得られることが証明された。また初回面接のみで、他院に紹介または助言を加えて前医に戻した患者45名中回答のあった29名での3ヶ月後の成績は、約半数で「改善」以上の効果が得られた。このことは、軽症うつ病においては、専門科にかかわず薬物中心の治療で対応できることを示唆する。(心身医学42:575-584,2002) 2.うつ病既治療群と未治療群の心身医学的治療による医療経済学的効果 治療費は外来通院の未治療者が既治療者より高かったが、治療効果を考慮した評価では、未治療群の方が高いcost-effectivenessが得られた。うつ病については発症早期より適切な診断と治療をすれば費用効果面においても経済的であることが明らかになった。この事実は軽症うつ病には、薬物療法に支持的心理療法を加えた心身医学的治療の医療経済学的効果が高いことを証明するものである(第42回日本心身医学会総会ワークショップにて発表)。 続きを見る
36.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of ヨード造影剤による肺障害におけるNO及びヒスタミンの関与と予防法の確立 — Involvements of NO and histamine in radiographic contrast medium-induced pulmonary dysfunction
大石 了三 ; OISHI Ryozo
研究期間: 2001-2002
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概要: 画像診断の進歩によりヨード造影剤(RCM)の使用は益々増加しているが、RCMによる肺障害及びアレルギー様症状等の副作用の発現に関する問題は依然として解決されていない。本研究ではこれらの副作用発現機序の解明と予防法の確立を目的としてラット血管透過性亢進in vivoモデル,ラット単離肥満細胞を用いて以下の成果を得ることができた。 1.RCMによるラット肺浮腫における肥満細胞由来ヒスタミン(HA)の関与 イオン性RCMであるイオキサグレートはラット肺における肥満細胞の脱顆粒を引き起こし,HAを遊離することによって血管透過性亢進作用を発現すること,また,この作用にはH_1及びH_2両HA受容体が関与することが判明した。 2.RCMによるラット単離肥満細胞からのHA遊離機構 種々のRCMは肥満細胞からのHA遊離を濃度依存的に亢進し,その作用はイオン性RCMにおいてより顕著である。さらにイオン性RCMによるHA遊離には細胞内cAMPの低下及び細胞内Ca^<2+>濃度上昇が関与することを明らかにした。 3.RCMによるラット肺血管透過性亢進機序の解明 RCMは肥満細胞からHAのみならずトリプターゼも遊離させ,トリプターゼは血管内皮細胞に存在するproteinase-activated receptor-2(PAR-2)を刺激することによりカドヘリン等の細胞間接着蛋白の構造を変化させ,透過性元進を引き起こすことを明らかにした。さらに,トリプターゼ阻害薬であるナファモスタットは,ヒトトリプターゼに対して極めて強力な阻害活性を示し,RCMの副作用に対する有用な治療薬になることが期待された。 4.培養ウシ血管内皮細胞におけるPAR-2を介したタンパク透過性亢進作用 血管内皮上にあるPAR-2は肥満細胞由来トリプターゼ等により活性化され,PLC活性化/細胞内Ca^<2+>上昇/PKC活性化により内皮細胞バリア機能に破綻を来たすと考えられ,これは造影剤による血管透過性亢進の発現機序に深く関与することを提示することができた。 5.RCMによるラット肺血管透過性亢進ならびに肺機能低下に対するカルバゾクロムスルホン酸の改善作用 カルバゾクロムスルホン酸は血管内皮細胞におけるバリア機能を強化することによってRCM誘発性血管透過性亢進を抑制することが見出され,RCMによる透過性亢進に基づく副作用の予防もしくは治療薬としての有用性を明らかにした。 続きを見る
37.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 時計遺伝子に着目した時間治療法の開発 — Development of Chronotherapy Based on Clock Genes
大戸 茂弘 ; OHDO Shigehiro
研究期間: 2001-2002
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概要: 体内時計の本体は、視神経が交差する視交叉上核(SCN)に位置し、時計遺伝子により制御されている。この遺伝子は中枢のみならず末梢組織でも発現しており、ローカル時計として機能している。すなわち、生体は体内時計の階層構造をうまく利用し、生体のホメオスタシス機構を維持している。時計遺伝子の機能と役割が生理学的側面より明らかにされつつあるが、今後の重要な課題として臨床応用があげられる。本研究では、時計遺伝子に着目した時間治療法を開発することを目的とし、以下の点を明らかにした。実験1:薬物代謝酵素、レセプターの日周リズムの成因としての時計遺伝子およびステロイドの役割を明らかにした。実験2:これらの生体リズムマーカーに着目し、生体リズム(生体内環境)を操作することにより新規時間治療法を開発できることを示した。実験3:SCNの時計遣伝子の日周リズムが薬物投与中に如何に変容するかを明らかにし、新規副作用(時計遺伝子の変容)を克服するための至適投薬設計を構築できることを示した。以上の研究をとおして、時計遺伝子やステロイドなどの生体リズムマーカーのモニタリングを基盤とした最適投薬タイミングの設計が可能となり、薬物治療の個別化、薬物誘発リズム障害の防止につながるものと思われる。 続きを見る
38.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 人工透析技術に関する社会史的研究 — A SOCIAL HISTORY OF HEMODIALYSIS IN JAPAN
吉岡 斉 ; YOSHIOKA Hitoshi
研究期間: 2001-2003
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概要: この研究の目的は、日本における人工透析技術の開発利用の歴史的発展について社会史的な見取り図を描くとともに、人工透析医療の現状およびその問題点について検討を行うことである。そのさい国際比較の観点を重視する。将来的には、このパイロットスタディーを土台として、医療関係者を巻き込んだ共同研究を組織する構想をもっている。 この研究は3年間にわたって実施された。その間に実施した主な作業は、次の4種類に分けられる。第1は、文献調査である。そのために、日本透析医学会および日本腎臓病学会の双方に入会し、その和文・欧文の専門雑誌について、サーベイを行った。また同時に、人工透析関係の記事が掲載される種々の医学雑誌、たとえば『腎と透析』、『メディカル・エンジニアリング』などについても、サーベイを行った。さらに図書や報告書類についても収集を進めた。第2は、日本透析医学会等の関連学会の年会・研究会等に出席し、研究課題に関連する報告を聞き、また意見交換を行った。第3は、神奈川県川崎市の虎ノ門病院分院の医師等からの聞き取りである。ただしこれは予備的な性格のものであり、アーカイブとなるような記録は作成しなかった。第4は、海外透析施設の視察である。これは国際比較のために不可欠の作業である。 以上の4種類の作業の成果を、以下に5点にわけて箇条書きとする。第1に、日本の人工透析および腎移植に関するデータを収集することができた。その一部を、冊子体の研究成果報告書に転載した。第2に、人工透析が技術面でも意識面でも、かつての実験的な高度医療から、標準的業務を中心とする一大産業へと変容している状況を把握できた。第3に、コスト削減のための種々の手法が導入され、あるいは導入が検討されている状況を把握できた。第4に、透析医療の患者リスクが高く、将来的な増加も懸念されている状況を把握できた。第5に、以上に述べたような動きは基本的に先進国共通であり、特殊日本的なものではないことが確認できた。 続きを見る
39.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 抱合型カテコラミンとトレーニングおよび血圧の関係 — Relationship between the plasma concentration of sulfoconjugated catecholamines and physical training and blood pressure
大柿 哲朗 ; OGAKI Tetsuro
研究期間: 2001-2003
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概要: 身体運動トレーニングおよび血圧と抱合型カテコラミンの関係を検討した。初年度は、長距離走者・柔道選手・座業的な一般成人の安静時における抱合型カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)の血漿濃度の横断的比較研究を実施した。また非鍛錬成人7名に3ヶ月間の持久的トレーニングを行わせ、非運動実施群(7名)との比較およびトレーニング経過に伴う血漿の抱合型カテコラミンを測定した。血漿の抱合型カテコラミン濃度は、鍛錬度の違いによって差異が認められなかった。また持久的トレーニングによって最大酸素摂取量や高比重リポタンパクの上昇が認められたが、血漿の抱合型カテコラミンには差異が認められなかった。2年度は、初年度にトレーニングを行った被験者(6名)が、トレーニングを中止して6ヶ月経過した時点で安静時の抱合型カテコラミンを測定した。最大酸素摂取量はトレーニング前値へ低下していたが、この脱トレーニングによっても血漿の抱合型カテコラミンに変化が認められなかった。また淡水と海水へ入浴時の低刺激負荷した時の血圧と抱合型カテコラミンの関係を検討した。その結果、交感神経-副腎系への低刺激負荷は、入浴中の血圧の低下が認められたが、抱合型カテコラミンは有意な変化をしなかった。最終年度はさらにトレーニング中止者の12ヶ月後の抱合型カテコラミンを追跡測定したが、やはり血漿濃度に変化を認めなかった。以上の研究結果から、少なくともヒトにおいては、血漿抱合型カテコラミンは運動トレーニングの影響を受けないことが明らかになった。また比較的若くかつ正常血圧者においては、抱合型カテコラミンと血圧とは関係ないと結論される。 続きを見る
40.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 現代フランス語圏人文地理学の学的構造をめぐる議論 — Paradigms of Contemporary Francophone Geography-?
野澤 秀樹 ; NOZAWA Hideki
研究期間: 2001-2003
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概要: 1)現代人文社会科学の多くは、60年代末から70年代前半における社会情勢の中で、68年のフランスの「5月革命」に象徴されるように、既成の制度や学問への異議申し立て経て、現在にいたっている。人文地理学においては、それは第二次戦後の地理学の方法をリードしてきた英米系の理論計量地理学=実証主義地理学に対する批判というかたちで進められてきた。フランス語圏では、現代地理学の学をめぐる論争が、理論計量地理学の導入を契機として起こり、他諸国とは異なった特色を持っている。 2)フランス語圏の地理学者は、70年代前半の時代を「危機の時代」と捉え、それに対する地理学の無力を「地理学の危機」と認識した。これが、かれらの現代地理学の出発点である。したがってかれらの地理学に対する反省は、理論計量地理学におけるような方法の革新であるよりも認識の問題にあった。 3)ジュネーヴ大学のC.ラフェスタンが地理学認識論を説き、新しい理論地理学として「領域性」の概念を提唱するのもそのためである。(報告書には、ラフェスタンの地理学認識論と「領域性」の概念に関するノート、およびブレッソとの共著『労働・空間・権力』の翻訳を付した。) 4)「地理学の危機と危機の地理学」を表題に掲げ、ミッシェル・フーコーを創刊号に登場させたイーヴ・ラコストの『ヘロドトス』の発刊は、これまでのアカデミックな枠にとらわれていた地理学のイメージを一変させた。かれは、『地理学、それはまず戦争に役立つ』という衝撃的な著書を著わし、「空間戦略」としての地理学を提唱している。(報告書には、ミッシェル・フーコーと地理学、Y.ラコストの「空間戦略」の地理学のノートをのせている。) 5)現代地理学の学的構造をめぐる議論は、「空間」をめぐる議論と言っても過言ではない。本研究では、「地理学における空間の思想史」、および「F.ブローデルの空間概念」について報告した。 続きを見る
41.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 複雑系の逆問題における人工知能を用いた非線形状態方程式の自動推定 — Automatic Derivation of Nonlinear State Equations by Using Artificial Intelligence in Inverse Problem of Complex Systems
岡本 正宏 ; OKAMOTO Masahiro
研究期間: 2001-2002
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概要: 現在、遺伝子発現量の時系列データが得られるようになっており、複数の遺伝子間の機能予測、すなわち遺伝子間相互作用ネットワークの構造を推定することが現実的なものになっている。遺伝子発現量の時系列データからこれを再現する数理モデルを推定することができれば、この数理モデルを基にして遺伝子間の相互作用ネットワークを推定することができると考えられる。しかし実際に未知のネットワークを推定するにあたって、遺伝子間相互作用ネットワークについての知見は十分でなく、どのような形式の数理モデルによって近似するかが問題となる。本研究では、時系列データを用いてそれを再現するGMA(一般質量作用則)に基づいた非線形連立微分方程式を自動導出するプログラムを設計・開発し、その有用性を明らかにすることを目的とする。数理モデルの構造それ自身を最適化するために進化的計算の位一手法である遺伝的プログラミング(Genetic Programming, GP)を採用した。さらに、GPは求める数理モデルに含まれる係数の最適化に関しては進化戦略(Evolution Strategy, ES)アルゴリズムを採用した。開発したプログラムを用いて以下の数値実験を行った。なお、使用した計算機は(Alpha21264-667Mhz,SPECfp95:75.3,SPECint95:37.0)である。まず、テストケースとして実数定数を持つ2元連立微分方程式を計算して得られるデータをサンプリングポイントとして与え、数理モデルを推定できるかどうか実験した。次に、次元数を増やし、3元連立微分方程式の探索を同様の方法で行った。その結果、GPによる連立微分方程式の探索は、次元数が増加するにつれて、1つのタイムコースから1つの数理モデルを推定することは困難で、複数の解候補を与えるため、拘束条件として複数のセットのタイムコースを与えることが解を絞り込む上で重要であることが明らかになった。今後、開発したプログラムを、さらに次元数を増加させたり、カオスのような複雑系の時系列データに適用することで有用性を明らかにする予定である。 続きを見る
42.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 不完全データに基づく数量化II類と語の共起性判定への応用 — Discriminant Analysis with Incomplete Data and its Application to Estimation of Words' Cooccurrency
冨浦 洋一 ; TOMIURA Yoichi
研究期間: 2001-2003
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概要: 語彙の共起性は自然言語処理における基本的な知識の一つであり,これを利用して自然言語文の統語的曖昧さや多義語の語義の曖昧さを解消することができる.しかし,共起し得る語の組は膨大であり,大規模な構文解析済みコーパスを用いたとしても,共起可能な語の組を網羅的に収集することは困難である.そこで,本研究では,構文解析済みのコーパスから得られる共起データを学習データとして,語の共起性を推定する手法を開発した.提案する推定法では,語を実ベクトル(ワードベクトル)に対応させ,語wが関係fで語w'に係る係りやすさの程度(共起性)を,wのワードベクトルと<f,w'>に対応した重みベクトルとの内積とする重回帰モデルで表現する.通常の重回帰分析と異なり,重みベクトルだけではなく,説明変量であるワードベクトルも同時に学習すること,モデルの学習では,学習データに存在しない語の組に対する共起を信頼度付の擬似的な負例(共起性なし)として扱っていることが,本手法の特徴である. EDRコーパスから抽出した共起データを学習データとして,名詞と助詞・動詞の共起性推定実験を行い,推定された共起性を次の2通りの方法で評価したところ,良好な結果を得た. 1.学習データには存在しないが,他のコーパスで共起が観測された語の組に対する推定された共起性の値の分布の調査による直接的な評価, 2.統語的曖昧さ解消実験による間接的な評価. 続きを見る
43.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 図書目録カードイメージを用いた統合的書誌情報検索システムに関する研究
南 俊朗
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究は「図書館自動化&電子化(Library Automation & Digitization LA&D)」の観点から図書館蔵書の電子的検索機能を実現することが大きな狙いである特に従来の電子図書館化の流れの中で忘れられがちであった図書目録カードを画像化し,Webによる検索を可能とすることにより,遡及入力の完了を待たずに全ての蔵書の検索を実現することに重点をおいている. 本研究によって開発された目録カード検索システムにおいては,図書館内にある目録カードと同等のインターフェースを採用した.すなわち,目的の目録カードを検索するためには大きく,所蔵学部→和書・洋書の区分→目録ボックスの選択→見出しカードによる位置の見当づけ→目的カードの検索という手順を踏む.本研究においては簡単なキーワード検索機能を導入することにより,目的のカードの位置を推定し,それに近い目録カードを表示する機能を実現した. 蔵書検索の質をさらに向上させる1つの手段としてRFID(Radio Frequency Identification)技術を利用した蔵書管理手法がある.これはICチップとアンテナからなるラベル状のタグを蔵書に貼付することにより,近距離から非接触で蔵書識別を行うことを可能とする技術である.本技術と図書目録カード検索システムを統合的に用いることで,利用者は目的の蔵書の識別情報などを入手するだけではなく,その位置やその利用状況などの情報を多角的に入手できるようになる. 更に,RFIDタグによるICカードを利用者カードとして採用することにより,更に高度な検索機能が実現できる.たとえば,利用者が館内である蔵書を閲覧した際,書架に組み込まれたタグリーダが蔵書の取り出し・返却と,その利用者の識別を同時に行うことにより,蔵書の利用頻度情報のみならず利用者の興味情報なども自動的に収集できる.これらの情報を利用することにより,蔵書の利用頻度を考慮した購入ができる.また,新しく購入された蔵書に関する情報を,それに興味を抱くであろう利用者に提供することもできる. 本研究においては,このような将来の電子図書館時代における高度な蔵書検索機能や利用者支援機能に関しても基本的な考察を行った. 続きを見る
44.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 長時間高周波電流駆動プラズマにおける電流駆動効率の改善に関する研究 — Study on enhancement of current drive efficiency in long RF current drive plasmas
花田 和明 ; HANADA Kazuaki
研究期間: 2001-2002
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概要: 超伝導強トロイダル磁場実験装置TRIAM-1Mでは、超伝導装置の特長を活かして、低域混成波や電子サイクロトロン波を利用した非誘導電流駆動を用いてトカマクの長時間運転を実施している。最近ではある一定値以上の低域混成波(LHW)を入射することで電流駆動効率や閉じ込めの改善が自発的に起こるECD(Enhanced Current Drive)モードが見つかり、その物理機構の解明を行うべく実験を実施している。ECDモードはバルクプラズマの閉じ込め改善とともに電流駆動効率の改善も起こっている。電流駆動効率改善の一つの可能性としてLHWと共鳴し、加速された高速電子の直接損失が減少することが考えられる。 平成13年度に高速電子の閉じ込めを調べるために弱磁場側に可動リミタを設置してがリミタへの熱入力を調べる実験を行った。リミタへの熱入力には周辺プラズマからの寄与と高速電子からの寄与があるので周辺プラズマの状態を可動リミタに設置した静電プローブによって測定し周辺プラズマからの寄与を差し引いた。この実験で以下のことが明確になった。 1)可動リミタへの熱入力は入射電力65kWに対して0.5kWと極めて小さい。 2)最外殻磁気面からの距離を変えて熱入力を測定したところその分布は周辺プラズマからの熱入力の寄与に極めて近い分布となった。定量評価にやや不確定性が残るものの高速電子からの寄与は測定範囲以下である。 平成14年度は高速電子の軌道損失を調べたが、今年度は高速電子のリップル損失について調べた。イオンドリフト側に設置されているダイバータ板への熱入力と真空容器への熱入力の比の密度依存性からリップル損失を定量的に測定する方法を考案し、定量的測定を実施した。この結果、ECDモードへの遷移に伴い、リップル損失が増加することが確認された。昨年度の結果をあわせると小型装置で電流駆動効率の低下原因の主要因と考えられていた高速電子の直接損失は効率悪化を招くほど大きくはなく効率改善や低下には別の要因を考える必要があることが明確になった。 電流駆動効率の改善に伴いリップル損失が増加することはピッチ角の大きな高速電子が効率改善に寄与している可能性を示唆している。このような現象の説明として大角散乱の増加を候補と考えている。 続きを見る
45.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 長時間プラズマ・壁相互作用時の壁飽和と壁再排気の機構解明 — Investigation about The mechanism of wall saturation and refreshment in long time plasma-wall interaction
坂本 瑞樹 ; SAKAMOTO Mizuki
研究期間: 2001-2003
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概要: 今後の核融合研究においてはプラズマの長時間定常維持が重要な課題となる。長時間プラズマにおいては、放電時間の短いプラズマでは観測され得なかった時定数の長い現象が発生する。このような現象のひとつである「長時間放電中に壁が飽和と再排気(吸蔵)を繰り返す現象」の機構解明のために、プラズマのH_α線強度の空間分布を測定するための多チャンネル可視分光システムの製作及び3次元中性粒子輸送コードDEGASの導入を行い、それらを超伝導トカマクTRIAM-1Mの長時間放電に適用するとともに粒子バランスの解析を行った。 TRIAM-1Mで達成された3時間放電においては、放電開始後約30分からH_α線強度が自発的に増加し、密度制御のための外部からのガス供給が自動的に停止し、プラズマの密度が壁からのリサイクリング粒子のみにより維持される現象、いわゆる壁の飽和が観測された。この放電におけるH_α線強度のトロイダル方向分布の測定結果から、壁飽和時の中性粒子束(リサイクリング粒子束)の増加はトロイダル方向全体からの寄与であることを明らかにした。また、この放電のプラズマ対向壁(ポロイダルリミター、真空容器)の温度の時間変化を測定し、それらの温度変化の時定数から、壁の飽和は真空容器壁の温度上昇に起因する水素ガス放出によることを明らかにした。さらに、壁が飽和と再排気を繰り返す現象は、壁の持つ水素インベントリーすなわちそれまでの放電の履歴に依存することを示唆した。DEGASコードのシミュレーションにおいては、プラズマ真空容器全体から一様に水素を放出させるモデルを適用して長時間のポロイダル方向のH_α線強度分布のシミュレーションを実施し、概ね計測結果を再現する結果が得られた。 続きを見る
46.
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Cover image of 新古典テアリングモードに関する理論研究 — Theoretical Study on Neoclassical Tearing Mode
矢木 雅敏 ; YAGI Masatoshi
研究期間: 2001-2003
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概要: 高ベータトカマク実験で観測されている「新古典テアリングモード」と呼ばれる磁気島の発生原因の物理機構の解明、その制御法の確立をめざし、理論モデルの構築およびシミュレーションコードの開発研究を行った。新古典テアリングモードが非線形的に励起されるためには磁気島の幅がある閾値を超えることが必要であり(island seedの問題として注目されている)、その値を解析的に評価することが話題となっている。しかし直接シミュレーションによる検証はないので、数値シミュレーションにより解析的評価の妥当性を確認するとともに、外的要因によるトリガーの可能性を調べることを目的とする。従来の解析で用いられてきた3場モデルにはイオンの新古典粘性の効果や圧縮性の効果が考慮されていないため、これらの効果を含んだ4場モデルを構築し、線形安定性に関して3場モデルと比較を行った。その結果、バナナ領域においてはテアリングモードを駆動する自由エネルギーの項が正でも安定化が起こることを見いだした。その機構を調べた結果、イオンの新古典粘性効果とイオン・電子の反磁性ドリフト効果の競合効果により安定化が起こることを明らかにした。さらに衝突領域において単一ヘリシティの非線形シミュレーションを行った結果、短波長領域において衝突性ドリフト波不安定性が存在し、これが非線形的に2/1の磁気島を励起することを発見した。衝突性ドリフト波はバナナ領域では安定であり、このシナリオを直接新古典テアリングモードに適応できない。しかしドリフトアルフベンITGモード乱流を導入すれば同様のことが起こり得る可能性がある。このためにはモデルの拡張が必要であり今後の検討課題である。いずれにしても乱流・MHDの非線形相互作用を導入すればisland seedの問題を解決できる可能性があることを見いだした。 続きを見る
47.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 中高エネルギー領域の荷電粒子,特に重陽子が介在する原子力用核データに関する研究 — Nuclear Data for Atomic Energy related to Charged Particles in Medium- and High- Energy Region, especially, deuterons
的場 優 ; MASARU Matoba
研究期間: 2001-2002
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概要: 近年、中高エネルギー領域の荷電粒子に関わる原子核反応のデータは、イオンビーム応用、がん治療、宇宙放射線影響、放射光科学、中性子科学、核燃料廃棄物処理、新型原子力システム、基礎物理科学など極めて広く利用されるようになり、大型プロジェクトが多様に進められているが、これらを効率的に、安全に推進するためには、核データのデータベース化が不可欠である。従来の原子力発電のみを念頭に置いた核反応データと異なり、エネルギー領域においても、標的核種についても、多岐にわたり、実験のみから与えることは困難であり、理論とシミュレーションを考慮した作業が必要となる。現在、核データとして、まず重要な核子の弾性・非弾性散乱や(p,n),(n,p)など、1個の核子が関わる反応の評価は研究が進みつつあるが、次に重要となる1粒子が移行する(p,d),(n,d)反応やその逆反応に関する研究はほとんどなされていない。 本研究では、このような重陽子が介在する核データに関する実験的・理論的研究を行った。実験は、筑波大学と九州大学のタンデム加速器からの偏極陽子を使用し中重核を標的として断面積を測定し、直接反応モデルによりグローバルな解析を行って、連続スペクトルが支配的な励起エネルギー領域のスペクトルの解析法を開発することに成功した。この様な解析は、世界で初めての試みである。同時に、データが少ないため測定が必要とされる(n,d)反応について、九州大学の中性子源による測定を可能にするための多くの技術開発研究を行い、その根幹となる中性子の位置検出に関する新しい方法を編み出し、実験によってその原理を確かめることが出来、新たな研究の展開に向けた準備が整った。これらの成果は、以下に示すように、学会などにおいて、報告・公表を行っている。 続きを見る
48.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 宇宙線生成核種による森林や草原でのエアロゾル及び硫黄降下物の推定 — Estimation of the deposition rates of aerosol and sulfur compounds on forest and grassland with cosmic-ray produced radionuclides
大崎 進 ; OSAKI Susumu
研究期間: 2001-2002
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概要: 宇宙線生成核種、^7Be(半減期53.3d),^<32>P(同14.26d),^<33>P(同25.3d),^<35>S(同87.5d)は大気中で、宇宙線と空気粒子とが衝突することにより、ほぼ一定量生成され続けており、直ちに空気中のエアロゾル(主成分は細かい土壌粒子や海塩、工場排煙物質など)や硫黄化合物(工場排煙物質や海水から発生する亜硫酸ガスや硫酸塩粒子など)に結合する。したがってエアロゾルや硫黄化合物中の宇宙線生成核種を解析することにより、それらの大気中における履歴、滞留時間や起源などが明らかになる。一方地表からは放射性の気体(^<222>Rnや^<220>Rn)が放出されており、それらの壊変生成物である^<210>Pb(半減期22y),^<210>Po(同138d),^<212>Pb(同10h)も宇宙線生成核種の類似核種として使用できる。 大気中の亜硫酸ガス、エアロゾル、降雨、乾式降下物を10日毎に採取し、それらの試料中の硫黄量および上記の放射性核種を1年間測定した。それらを大気2ボックスモデルから解析し、各月ごとのエアロゾルおよび亜硫酸ガスおよび硫酸粒子の上空での移動量、地表への降下量を求めた。 一方半減時の短い^<212>Pbを利用して用種々の地表面へのエアロゾルの降下(乾式)を直接測定した。半減期が短いので3日ぐらい雨で降下した記録が消え、後は乾式で降下したエアロゾルのみ測定できる。この手法をもちいて、水面、草原、森林、舗装面など種々の地表面への乾式降下量を測定した。その結果は予測されるように起伏の多い地表面ほど乾式降下が多いことが分かった。 さらに森林系生態におけるエアロゾルの挙動を解明するため、杉林において一年間林内雨、樹幹流、および林外雨を10日毎に採取し、放射性核種を測定した。その結果、^7Beの平均滞留時間は60日程度と短く、^<210>Pbは510日と大変長いことがわかった。 続きを見る
49.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 山村の持続型社会への転換と森林保全の地域連携に関する研究 — Study on Changeover of Mountain Villages into the sustainable society and Regional Relationship for Forest Conservation
佐藤 宣子 ; SATO Noriko
研究期間: 2001-2002
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概要: ズギ人工林地帯である九州をフィールドとして、高度経済成長以降、過疎化が進行している山村の持続的な社会への転換と森林、農地、景観等の資源保全に向けた地域連携の課題を明らかにするために、主に、宮崎県諸塚村と大分県上津江村においてアンケートや聞き取り調査を実施した。特に、(1)山村問題を歴史的に概観し、(2)現段階の山村を持続可能な社会へ転換するための課題を、農林経済学、社会学、環境設計論の各立場から明らかにすること、(3)持続的な山村社会形成と森林保全にとって不可欠となっている山村と都市との連携の現況と問題点について検討をおこなった。 諸塚村での村民アンケート(1400部強)と小集落アンケート(72集落)によって、近年、道路の維持管理が困難となっており、山村コミュニティにとって、(1)山村社会を支える主体形成のあり方(男性壮年層中心から女性や高齢者、Iタ-ン者などが参加しやすい活動への転換)、(2)集落組織の再編方向(小集落組織合併、集落機能の見直し、村内NPOなど「選択縁」的組織と地縁組織の連携)、(3)地域連携・都市山村交流活動を推進するための山村側の課題(自治体による住民に対する説明責任、都市住民との対等な関係作り、住民の意識改革)といった3点が明らかとなった。 また、都市との連携に関して、産直住宅運動、草地景観保全ボランティア、農産物産直について考察を行い、活動を通じて山村住民の意識変化と同時に都市住民との意識差異が依然として存在していることが示された。 続きを見る
50.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 新規遺伝子多型解析プローブとしての環状フェロセン化インターカレータ — Cyclic ferrocenyl intercalator as a novel probe for gene polymorphism analysis
竹中 繁織 ; TAKENAKA Shigeori
研究期間: 2001-2002
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概要: ヒトゲノムプロジェクトの終結を迎え,個人レベルでのSNP(single nucleotide polymorphism一塩基多型)解析が重要となってきている.これはSNPが遺伝病などの致命的な病気を引き起こさないまでも高ストレスにより生ずる病気に関連していることが示されてきていることや,薬の投与量による副作用の有無にも関連していることが証明されてきているからである.当該年度では,ナフタレンジミドとフェロセンとからなる環状インターカレータCyNDIFcをSNP分析のための分子プローブとして発展させること目的として研究を行った.正常遺伝子と変異遺伝子とのヘテロ二本鎖はSNP領域にミスマッチ核酸(一本鎖核酸)を含むことになるので,CyNDIFcがその部位に好んで結合すればこの部位を電気化学的に検出できる可能性がある.X線構造解析によりCyNDIFcが予想どおり環状構造を取っていることが証明された。核酸のTmを用いてCyNDIFcのミスマッチ部位に対する影響を評価した。その結果ミスマッチ部位が存在することにより、大きくTmが上昇することが明らかとなった。CyNDIFcによるミスマッチの電気化学的検出のために,DNA修飾電極を用いてCyNDIFc存在下の電気学的測定を行った。電極上に固定化されたDNAの1本鎖領域の増加に伴ってCyNDIFcに由来する電流値の増大が見られた。これらの結果によりSNP解析のための分子プローブの可能性を開くことができた。今後,CyNDIFcの構造をさらに最適化すれば,選択性・感度ともに高い分子プローブが構築できるものと考えられる. 続きを見る
51.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 2本鎖DNAに対して選択的な反応を誘起する新規反応性核酸の開発 — The Development of the Novel Reactive Nucleobases to the Duplex DNA
永次 史 ; NAGATSUGI Fumi
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究者は2本鎖DNAに対して選択的に反応する分子の開発及びそれを用いた選択的点変異誘導の実現を目指して研究を展開している。平成13年度には独自にデザインした反応性核酸2-アミノ-6-ビニルプリンを糖からスペーサーで結合した分子を含むオリゴヌクレオチドが、2本鎖に対してシチジンあるいはアデノシンに対して非常に選択的に反応することを明らかにした。さらに平成14年度はこの反応性オリゴヌクレオチドを反応させたプラスミドDNAが修復酵素欠損細胞内で複製させることで反応点であるシチジンあるいはアデノシンに対してのみ非常に選択的に点変異が誘導されることを明らかにした。また3本鎖を安定に形成できる誘導体からなるオリゴヌクレオチドにこの反応性核酸を組み込んだオリゴヌクレオチドを用いて、その変異の位置のみではなくその変異の種類までコントロールできることを明らかにした。変異効率は低いものの標的に対してピンポイント的に変異を誘導できたことは、今後その反応の効率を改善することで新たなバイオテクノロジーとしての展開も期待できると考えている。 さらに反応性を向上させる試みとしてビニル基に電子吸引基としてスルフォキシド基を導入したビニル誘導体を糖とスペーサーでつないだ新たな反応性核酸の合成も行った。この反応性部分は既に2本鎖内で中性条件下でも反応することを確認しており3本鎖内でも中性条件において反応することを期待し設計したものである。それらの反応性を評価したところ残念ながら中性あるいは酸性条件下でもまったく反応しないことがわかった。これらの誘導体を含むオリゴヌクレオチドの3本鎖形成能を調べたところ、いずれの誘導体も反応条件下では3本鎖を形成しておらず、安定な3本鎖を形成できないことが反応しなかったことの原因であることが考えられる。今後は様々な反応性塩基を含むオリゴヌクレオチドを簡便に合成する方法(ポストモディフィケーション法)を用いて、スペーサーの長さあるいは反応性部分の構造を検索することで反応性の高い分子の開発を行う予定である。 続きを見る
52.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of カブトガニのリポ多糖受容体の構造解析 — Structural Analysis of Lipopolysaccharide-receptor on hemocytes of horseshoe crab
川畑 俊一郎 ; KAWABATA Shun-ichiro
研究期間: 2001-2002
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概要: カブトガニの顆粒細胞は、大・小2種類の顆粒で満たされており、両顆粒中には生体防御に関与するタンパク質が選択的に貯蔵されている。これらの生体防御タンパク質は、グラム陰性菌の表層成分であるリポ多糖(LPS)の刺激により引き起こされる開口放出により細胞外へ分泌され、生体防御反応に携わる。顆粒細胞の開口放出は、カブトガニの自然免疫において最も重要な反応の一つであるが、細胞表面でのLPS認識のメカニズムは不明のままである。最近、ショウジョウバエやヒトにおいては、LPS認識受容体として、Toll類似受容体(TLR)が注目されている。開口放出は遺伝子発現を必要としない反応であり、さらに、カブトガニにおいては、TLRが顆粒細胞だけでなく非特異的に種々の組織に発現していることから、顆粒細胞には開口放出に関与する新規のLPS受容体の存在が推定された。そこで、大顆粒成分のコアギュローゲンやタキレクチン-2に対する抗体を用いて開口放出を定量的に測定する方法を確立し、顆粒細胞のLPS受容体の機能を解析した。その結果、顆粒細胞においては、LPS刺激がG蛋白質を経由していることを見いだした。さらに、種々のカブトガニ生体防御因子に対する抗体を用いたFACScanによる解析の結果、興味深いことに、大顆粒成分であるFactorCに類似した抗原が細胞表面に存在することが明らかとなった。FactorCは、LPSと特異的に結合してセリンプロテアーゼ活性を発現する前駆体で、体液凝固カスケードの開始因子である。したがって、この抗原がLPS認識の受容体として細胞膜上で機能している可能性が高い。 続きを見る
53.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of ペルオキシソーム生合成における新規形成因子の同定とPexlpの機能解析 — Identification of novel PEX gene and functional analysis of Pexlp in peroxisome biogenesis
田村 茂彦 ; TAMURA Shigehiko
研究期間: 2001-2002
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概要: 1)E群(米国1群)の病因となる遺伝子変異を系統的に解析したところ、比較的軽症型の乳児型Refsum病患者由来の細胞ではPEX1の843番目のGlyがAspに置換した変異が存在していた。これはペルオキシソーム形成の回復が温度感受性を示す原因変異であり、この温度感受性変異は患者の臨床症状において軽症型を与えるという非常に興味深いかつ重要な知見を見いだした。また重症型のZellweger症候群で同定されたL664Pおよび634de1690変異は、Pex6pとの結合能を著しく低下させることも明らかにした。つまりこれらの変異近傍のATP結合モチーフを含んだ領域はPex6pとの結合に重要な役割を果たしていることを示唆していた。 2)ペルオキシソーム欠損症における相補性群の中でA群(米国8群)および6群については相補遺伝子が単離されていなかった。そこで、6群の患者由来線維芽細胞の表現型および相補性について再検討を行った。その結果、4群の相補遺伝子として単離されているPEX6が同様に相補遺伝子であることを示した。つまり6群は4群と同一の相補性群であり、ヒトペルオキシソーム欠損症は最終的に12の相補性群に分類されることを明らかにした。 3)A群に属するペルオキシソーム欠損性の変異CHO細胞ZP167を用い、機能相補クローニングを行った。その結果、ペルオキシソーム形成能を回復させるヒトcDNAの単離に成功した。このcDNAクローンの塩基配列は305アミノ酸からなるタンパク質をコードし、これまでに報告されているすべてのペルオキシンとも顕著な相同性が認められないことから新規ペルオキシンPex26p(PEX26)と名づけた。Pex26pはPex6pを介してPex1pと複合体を形成し、Pex6pおよびPex1pの細胞内局在やこれらの機能に密接な相関を持つことを明らかにした。また、ヒト欠損症患者におけるPEX26変異と機能障害の相関について解析し、病因となる遺伝子変異と臨床病型との相関について興味深い知見を得た。以上のようにA群の相補遺伝子であるPEX26を単離することで、ヒトペルオキシソーム欠損症における全病因(遺伝子)の解明を達成できた。 続きを見る
54.
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Cover image of 瞹味構造を持つ基質に対する酸素認識の全体像解明 — Whole Statue of Recognition by Enzyme Toward Substarates with Vague Signals
荻島 正 ; OGISHIMA Tadashi
研究期間: 2001-2002
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概要: (1)基質にはこれまでの研究によりいくつかの認識に重要なアミノ酸残基が存在することが判明している。しかし、それらの切断部位からの距離は、一次構造上では様々である。そこで、蛍光の共鳴エネルギー移動の原理に基づき、酵素および基質を設計して測定したところ、基質中の重要なアミノ酸は基質によらずほぼ同じ距離で酵素中に存在でしていることが判明した。 (2)基質の中にはこれまで明らかにした認識シグナルの一部を持たないものが少なからず存在する。そこでは、このような前駆体をより切断に有利になるようなアミノ酸に置換した。その結果、基質は変異を加えなくとも切断されたが、アミノ酸置換により切断効率の向上が見られた。これらの結果は、酵素側が認識シグナルの中から最適な組み合わせを選ぶため、基質は認識シグナルの全てを持たなくとも良いことを意味した。 (3)これまでに明らかになったミトコンドリアプロセシングペプチダーゼの基質は、延長ペプチドが10から50残基のアミノ酸からなるものである。前駆体はアミノ末端からミトコンドリアマトリクスに入るため、延長ペプチドは膜透過後に切れる。このため、延長ペプチドは高次構造をとらず、切断点も露出しているものと予想された。しかし、植物には二種のタンパク質の融合前駆体として合成され、ミトコンドリアマトリクスに移入後、機能タンパク質が切り出されるものが存在する。そこで、この反応を解析したところ、プロセシングはミトコンドリアプロセシングペプチダーゼでなされることが判明した。さらに、切断を受けるのが二種のタンパク質が構造をとる前か後かを調べたところ、酵素切断は構造形成の後でも行われるが、切断部位は堅固な構造をとっていないことが判明した。 (4)最近得られた酵素と基質のX-線結晶解析によって基質の切断部位付近の基質-酵素相互作用は明らかになった。しかし、他の重要な認識部位に関しては不明のままである。そこで、蛍光共鳴エネルギー移動法を用いて切断部位からの距離を算出し、X-線結晶解析の結果と合わせ、位置を推定しようと試みた。その結果、基質の切断部位からカルボキシ末端側に約10残基下った領域で、基質は酵素の空洞から出ることが予想された。 続きを見る
55.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 自然免疫におけるTLR4を介したリポ多糖(LPS)認識と活性化の分子機構 — Molecular Mechanisms of Recongnition of Lipopolysaccharide (LPS) via TLR4 and Activation in Innate Immunity
牟田 達史 ; MUTA Tatsushi
研究期間: 2001-2002
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概要: 哺乳動物では、リポ多糖(LPS)に代表される様々な細菌由来成分、あるいはウイルス由来の成分が、Toll-like receptor(TLR)を介して自然免疫担当細胞を活性化することが明らかにされている。一方、細菌と並んで重要な病原微生物である真菌に対する細胞応答反応については、未だ不明な点が多い。本研究では、TLRによる病原微生物の分子認識と細胞活性化の分子機構の解明を目的に、真菌表層のβ-glucanに着目し、そのマクロファージ活性化能について解析した。 様々なβ-glucanの活性をNF-κBの活性化を指標に検討したところ、直鎖状(1→3)-β-D-glucanであるcurdlanに最も強い活性を認めた。中性の水溶液に不溶のcurdlanは、50-300 mMのNaOHを用いて溶解することによって、その活性が著しく増強された。curdlanは、NF-κBを活性化すると共に、tumor necrosis factor-α、macrophage inflammatory protein-2、inducible nitric-oxide synthaseの発現を誘導した。この活性は、LPSの活性を中和するpolymyxin B処理によって抑制されなかった。一方curdlanの活性は、カブトガニFactor Gのβ-glucan結合ドメインや、短鎖(1→3)-β-D-glucanによって濃度依存的に抑制された。さらに、curdlanに対する細胞応答は、TLR/IL-1受容体に共通するアダプター分子MyD88の変異体の遺伝子導入により抑制された。従って、直鎖状(1→3)-β-D-glucanは、その高次構造に依存してマクロファージ刺激活性をもつことが明らかになり、その受容体は、TLRのようなToll/IL-1 receptor-like(TIR)ドメインを含む膜タンパク質であることが強く示唆された。 続きを見る
56.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 転写とDNA修復に関与するXAB2複合体の機能解析 — Functional analysis of XAB2 complex involved in transcription and DNA repair
中津 可道 ; NAKATSU Yoshimichi
研究期間: 2001-2002
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概要: ヌクレオチド除去修復(NER)にはゲノム全般で働く機構と転写と共役した機構(TC-NER)の2つのサブ機構がある。これまでに我々はXAB2はXPA,CSA,CSB/RNAポリメラーゼII複合体と相互作用し、転写とTC-NERの両機構に関与していることを示した。XAB2の機能を解明するためにFlag-XAB2をHeLa細胞で発現させ、抗Flag抗体、ゲル濾過、miniQを用いて精製すると、Flag-XAB2は5種の蛋白質(p160,p57,p50,p42,p35)と同一画分に精製され、これら5種の蛋白質はXAB2と強固な複合体を細胞内で形成していると考えられた。p160はPTGSへの関与が示唆されており、p57は核マトリクス因子、p50はU1-like Zn-fingerをもつRNA結合タンパク質、p42は酵母のスプライス因子ISY1のホモログで、p35はRNA結合能を持つpeptidyl Prolyl cis-trans isomerase Eであった。これらのことはXAB2複合体がRNA代謝に関与していることを強く示唆する。精製XAB2複合体を、RNAポリメラーゼIIによるin vitro転写系に加えると転写伸長反応を促進する効果がみられ、抗XAB2抗体の細胞内マイクロインジェクションがTC-NER及びRNAの転写を阻害すること一致する。これまでに、遺伝子ターゲティング法を用いてXAB2欠損マウスの作成を行い、XAB2が生存に必須であることを示した。XAB2は必須遺伝子なので完全欠損マウスおよび細胞は得ることができなかった。欠失変異体を用いた解析の結果、p35のRNA結合ドメインがXAB2と直接結合することが判明したので、XAB2複合体の機能解析のためにp35遺伝子ターゲティングベクターの作製を行い、p35欠損マウスおよび細胞の樹立を行っている。 続きを見る
57.
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Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of mRNAの品質管理機構(Quality Control) — Quality Control of mRNA
早川 浩 ; HAYAKAWA Hiroshi
研究期間: 2001-2002
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概要: 酸化RNAに特異的に、且つ強固に結合する蛋白を大腸菌およびマウス細胞抽出液中に検出し、大腸菌についてはこれがPNP蛋白(pnp遺伝子)であることを報告した(Biochemistry 2001)、この成果をもとに、以下に述べる2つのアプローチでヒト酸化RNA結合蛋白・遺伝子のクローニングを試みた。それぞれのアプローチについて研究実績を記す。 1)構造的ホモログの検索 大腸菌PNP蛋白のアミノ酸配列情報を元にESTデータベースから構造的ホモログを同定しこれをクローニングした。現在クローニングしたcDNAを大腸菌で発現させ、その遺伝子産物について生化学的解析を〓めつつある。 2)機能的ホモログの検索 酸化RNA結合蛋白を生化学的に検索し、ヒトYB-1蛋白にそのような活性があることを明らかにした。さらに様々なdeletion変異蛋白を合成し、結合ドメインを明らかにした。また、このヒト蛋白を大腸菌で過剰発現させると酸化ストレスを引き起こすパラコートに対して耐性になることが明らかとなった。これらの結果は既に下記の論文として報告した。(Biochemistry 2002)。 3)上記の1)2)のRNAの酸化に関する研究と並行して、ヌクレオチドの酸化に対する生体防御機構について解析を行い、酸化型dGTPを分解するヒト酵素(MTH1)について新たな生化学的知見を報告した(J.M.B.2002)。 続きを見る
58.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of サイクリンA/cdK2の染色体凝縮に対する機能解析 — Functional analysis of Cyclin A/Cdk2 for chromosome condensation
古野 伸明 ; FURUNO Nobuaki
研究期間: 2001-2002
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概要: 今までの我々の結果から、培養細胞においては染色体凝縮がMPFによるのではなくむしろサイクリンA/cdk2であること、また、MPFの活性化にもサイクリンA(or E)/Cdk2が必要であることが強く示唆された。カエル卵においても、MPFの活性化・染色体の凝縮にサイクリンA/Cdk2(orサイクリンE/CDK2)が必要かどうかを、そのインヒビターであるP21(cip)タンパク質をカエルの2細胞期の両割球に注入し調べた。p21(Cip)をサイクリンA(or E)/Cdk2のみを阻害する濃度になるように受精卵に注入すると、細胞分裂は停止した。そして、この分裂阻害効果はp21(Cip)濃度に依存的であった。この時、生化学的にMPFの活性を調べると活性化していなかった。これらの結果から、初期胚において、in vivoにおいてもサイクリンA(or E)/Cdk2の活性が、MPFの活性化に必要であることが示唆された。また、中心体の複製サイクリンA/Cdk2(orサイクリンE/CDK2)が必要とされているが、今回、中心体の複製・分離にサイクリンB2が関与する事を見い出した。サイクリンB2のN末をアフリカツメガエルの卵母細胞に過剰発現させると第一減数分裂時に正常な紡錘体が形成されず単極の紡錘体が形成された。これはサイクリンB1のN末を過剰発現させた時には観察されず、サイクリンB2に特異的であった。さらにサイクリンB2のN末の欠失突然変異を用いた実験から、サイクリンB2のN末115番目から121番目の7アミノ酸が正常な紡錘体形成に必要である事を見い出した。中心体複製にはサイクリンA/cdk2が関与する事を考えると、中心体の分離にもサイクリンA/Cdk2がモータータンパク質やサイクリンB2のリン酸化を介して関与している可能性が示唆された。 続きを見る
59.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 嗅球情報単位である嗅球糸球体、小巣についての定量的、定性的解析 — The qualitative and quantitative analysis of olfactory glomerulus and nidus in the olfactory bulb
小坂 克子 ; KOSAKA Katsuko
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究の目的は齧歯目と食虫目をはじめとする様々な哺乳類を比較しながら、嗅球における嗅入力、投射ニューロン、介在ニューロンの相互結合関係を、定性的、定量的に詳細に解明することで、嗅覚情報処理の初段階の構造的基盤を明らかにすることである。嗅覚情報処理の機能的ユニットである嗅球糸球体を調べるために次のような解析を行った。 1 哺乳類嗅球の比較解剖学的解析:1)ジャコウネズ嗅球には糸球体-僧帽細胞/房飾細胞系と小巣体-タッセル細胞系の2つの平行した投射系が存在する。食虫目のモグラにのみ、ジャコウネズミで発見した特別なシナプス領域である小巣体が存在した。モグラにおいても同様な2つの平行した投射系が存在する可能性がきわめて高いと思われる。2)げっ歯目におけると同様、他の哺乳類(食虫目、ツパイ目、翼手目)においても嗅球糸球体の介在ニューロンが、嗅入力の有無により大きく2グループに分かれることを確認した。3)ジャコウネズ嗅球における両方向性のトレーサーの細胞外注入実験より、嗅球内から小巣体に向かって、軸索突起が限局して収束していることが判明した。 2 ラット嗅球の解析:1)投射ニューロンである僧帽細胞樹状突起tuftにおいて、嗅入力及び傍糸球体細胞とのシナプス結合両方ともに、tuftの遠位、近位を選ばずパッチ状に分布していた。従って、僧帽細胞樹状突起でのスパイク発生制御が従来考えられてきたものより、はるかに複雑であることがわかった。2)介在ニューロンについては、これまで我々は、嗅入力を受けるGABA陽性のタイプ1と嗅入力を受けないタイプ2グループを化学的性質から分類していた。ところが、電子顕微鏡による解析から僧帽細胞とギャップ結合をつくる傍糸球体細胞は、嗅入力を受けるが、GABA陽性ではなく、これまでの免疫細胞化学的解析から捉えられていなかったタイプであることが判明した。 以上から哺乳類嗅球の構成の複雑さが捉えられ始めたといえる。 続きを見る
60.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 中枢神経疾患における神経性グルタミン酸トランスポーターの役割 — Role of the neuronal glutamate transporter in neurological disorders
古田 晶子 ; FURUTA Akiko
研究期間: 2001-2002
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概要: グルタミン酸トランスポーターはてんかん、脳虚血及び神経変性疾患等、種々の神経疾患において興奮毒性から神経細胞を保護する役割があると考えられている。我々は神経性グルタミン酸トランスポーターEAAC1(EAAT3)の発現が脳低酸素・虚血やてんかんにおいてダイナミックに変化することを報告してきた。すなわち、新生児ラット脳低酸素・虚血モデルにおいてEAAC1は梗塞境界領域(ペナンブラ)の神経細胞に高発現しており、低酸素・虚血刺激で誘導される可能性が示唆された。カイニン酸投与ラットてんかんモデルでは、痙攣重積後に大型錐体神経細胞のEAAC1が一過性に形質膜からゴルジ体に移動していた。このような現象はヒトてんかん組織である皮質異形成のdysplastic neuronにおいても同様に観察された。EAAC1の細胞内局在変化は細胞内への過剰なグルタミン酸の取り込みを防ぐことにより神経細胞の保護に重要と考えられた。さらに、EAAC1蛋白の細胞内局在変化のメカニズムを明らかにするため培養系においてGFP遺伝子を導入したEAAC1を用いてその機能を調べている。 続きを見る
61.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of ニューロン・アストロサイト・ミクログリア・ネットワークの分子基盤の解明 — Molecular analyses of neuron-astrocyte-microglia network
野田 百美 ; NODA Mami
研究期間: 2001-2002
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概要: 細胞生物学的に研究が遅れているミクログリアの機能解明に焦点を当て、以下の項目について解析を行った。 1)虚血後の記憶障害を改善する薬(PEPA:ピーパ)の作用機序について PEPAはミクログリアのAMPA型グルタミン酸受容体反応を増強し、最終的にグルタミン酸によるTNF-a(腫瘍壊死因子)の放出を減少させることがわかった。TNF-aは高濃度では細胞毒性を有すると考えられているため、このような機序が記憶改善作用に寄与していることが示唆された。 2)ミクログリアとアストロサイト・ニューロンとのネットワークについて 炎症性メデイエーターであるブラジキニンの受容体がミクログリアに発現していることを証明した。末梢の組織で報告されているように、通常はB2受容体サブタイプが発現しているものの、ブラジキニン処置後24時間で、炎症時に発現してくると言われているB1受容体サブタイプが新たに発現してくることを定量的RT-PCRで示した。あるいはミクログリア・アストロサイトからブラジキニンによってどのような各種サイトカインが放出されるかを検討することによって、発痛物質ブラジキニンを介したグリア細胞とニューロン、さらには脳血管壁との関連が新たに解明され、脳傷害の新たな治療薬開発につながる可能性がある。 当初、グリア・ニューロン連関の研究の一環として始めた以下の研究についても有意義な結果が得られた。 3)神経疾患発症に関与する受容体の機能解明 新規セロトニン受容体(5-HT5A受容体)はアストロサイトに主に発現し、その遺伝子多型と精神疾患(統合失調症)との関連が報告されたが、我々はまずグリア特有ではなく神経型受容体であることを発見した。またその機能解明のために正常型の5-HT5A受容体遺伝子ベクターを入手し、培養細胞に遺伝子導入して受容体・細胞内シグナル伝達系を解明した。その結果、すでに報告されている系(アデニル酸シクラーゼ系)のみならず、新たなシグナル伝達系として注目を浴びており、我々独自の方法で測定可能になったアデニル酸リボース系を抑制することが判明した。さらにクロスカップリングによってイノシトールリン酸系を亢進させることを解明した。このように一つの受容体が多様な細胞内シグナル伝達系にリンクしていること、カルシウム制御の上で相反するシグナル伝達系に同時にカップルしていることは、それだけセロトニンの作用が複雑であり、どの系が異常をきたすかによって精神疾患と結びつくのかという問題を解決する鍵となる。このようにセロトニンには多様なシグナリングが存在するということを世界で初めて報告した。 続きを見る
62.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 遺伝子導入動物における導入遺伝子構造と発現遺伝子産物の機能について — Function of transgene structure and its products on conformational changes in transgenic model mice of prion disease
毛利 資郎 ; MOHRI Shirou
研究期間: 2001-2003
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概要: プリオン病のモデル動物としての遺伝子改変マウスは、プリオン複製の仮説からすると、正常なプリオン蛋白質を過剰に発現する方が有利であると考えられる。実際にハムスターやマウス型のプリオン蛋白発現系マウスでは過剰発現による高感受性マウスの系統が樹立されている。我々は、ヒト・プリオンに対するバイオアッセイ系の確立を目指している。ヒト/マウスキメラ型プリオン蛋白質(キメラ型)を発現する遺伝子改変マウスは、ヒト・プリオンに対して高い感受性を示すことが判明したが、過剰発現になると抵抗性を示すことも明らかになった。次に、C末端までヒト型プリオン蛋白質を発現する、全ヒト型プリオン蛋白質遺伝子導入マウス、同じ導入ベクターを用いた全マウス型プリオン蛋白質遺伝子導入マウスについても検討した。その結果、全ヒト型マウスと全マウス型プリオン蛋白質遺伝子導入マウスでは共に発現量が高くなるにつれて感受性が高くなることが判明した。このことから、プリオン病モデル動物作製時の導入遺伝子のキメラ型遺伝子産物は、必ずしもプリオン複製の仮説にそぐわないことが推定された。このことは、導入遺伝子産物の一次構造がその機能発現に影響していることを示唆するものであった。 続きを見る
63.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of ソフィスト思潮の歴史的・哲学的考察
納富 信留
研究期間: 2001-2002
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概要: 本年度は、前五〜四世紀の「ソフィスト思潮」の全体像について、前年度の研究を引き継いで、次の六点の研究を行った。 (1)ソフィストに関する伝承資料の扱いについて、特に、ディールス・クランツによる断片編集がもつ基本的な問題を調査した。 (2)ゴルギアスの『ヘレネ頌』の翻訳を行い、そこに見られるゴルギアスの「弁論術(レトリック)」の理念について検討した。ゴルギアスが表明する「力」の行使という理念に対して、プラトンが『ゴルギアス』篇(特に第1部)で哲学の立場から徹底した批判を加えている様を明らかにし、論文にまとめた。 (3)つづいて、ゴルギアスの『無について』を取り上げ、偽アリストテレス『メリッソス・クセノファネス、ゴルギアス』に報告されるヴァージョンからの復元作業を試みた。セクストス・エンペイリコスが報告するヴァージョンとの異同は、今後の研究課題とした。 (4)アルキダマスの『書かれた言論を書く人々について、あるいは、ソフィストについて』を翻訳し、研究会においてその思想史的重要性を発表して、哲学・西洋古典学・文学・歴史学の専門家と意見を交換した。 (5)プロタゴラス、『両論』に見られる古代相対主義の特徴について、現代の相対主義についての議論を参照しながら検討を加えた。 (6)ゴルギアスとアルキダマスを中心にした、欧米(特に、イタリア)の研究状況を調査し、必要な賛料を英国・ケンブリッジ大学図書館において収集した。 続きを見る
64.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 応用倫理学に対する功利主義的アプローチの研究
中野 満里子
研究期間: 2001-2002
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概要: 本年度は、第一年度に収集した資料等を活用し、医科学研究、および医療情報の活用をめぐる倫理的問題について研究成果を三本の論文にまとめた。 1.まず、アイスランドの医科学研究用複合データベース(家系・遺伝子・診療記録データベース)計画をめぐる論議について検討した。この計画に伴う倫理問題--個人情報の保護、インフォームド・コンセントの必要性、科学研究の自由の侵害など--を検討し、その教訓と今後の課題を明らかにするとともに、日本の疫学研究指針や遺伝子解析研究の指針についても今後考慮すべきだと思われる問題点を指摘した。またアイスランドで成立した関連法規も検討し、法の成立後も残される問題を明らかにした。 2.さらに、診療録の開示等にみられる患者や市民への医療情報の提供のあり方について、英国とスウェーデンの実践例を参考に考察した。二国の取り組みの背後には「自律・自己決定の尊重」の理念があるとして、この理念の背景と意味を検討し、これらの国において自律の尊重とは、患者や市民にただ決定を任せ責任を負わせるものというより、むしろ「自己決定に必要な判断能力を向上・熟成させるためにも、積極的に患者や市民に情報を提供する」という形でとらえられ、積極的な情報提供の動きにつながっていることを指摘した。 その他、本年度夏には米国に赴き、倫理学・政治哲学理論の専門的研究者と交流するとともに、遺伝子治療・研究や幹細胞研究など主に医科学研究にかかわる倫理的論議や環境問題をめぐる政策論議等について情報を収集し、倫理学理論と応用倫理学の両面の研究に役立てた。こうして得られた知識をもとに、現在は現代功利主義の入門書を執筆中である。その中では、功利主義倫理学の理論構造を明らかにするほか、医療倫理等の個々の社会問題に功利主義がいかに一貫した理論的アプローチをとりうるかを明らかにする予定である。 続きを見る
65.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of いじめられ体験をもつ被害者のアイデンティティ
田中 健夫
研究期間: 2001-2002
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概要: 1.昨年度に施行した質問紙調査(回顧法)および半構造化面接の逐語録を作成して分析を行った。結果の一部は論文(11.欄に記載)にまとめており、その概略は以下の通りである; (1)いじめ被害経験者の約1/4が何らかの"物語"をもって対処をしており、その内容は(1)マスメディアが流す情報や伝記などが供給する、社会に既存の物語に依拠する場合と、(2)一般的な言葉や格言ではあるものの重要な他者(多くは親)がもたらした場合の大きく二つが認められた。これらの物語は、いじめた加害者の側にみいだされる理由、なぜこの自分が被害にあったのか、そのような被害を受けた者の将来像などの手がかりをもたらすことによって被害者の対処とアイデンティティに影響を及ぼし、また物語によっていじめに対する認識も変化していく可能性が示唆された。 (2)以上をふまえ"物語"の内容分類(5カテゴリー)それぞれについて、事例分析を行った。「加害者を取るに足らないと見下す物語」は、加害にまつわる物語をもつことにより、たまたま自分が標的になったに過ぎないという事態の相対化には寄与するものの否定的な影響が残ること、「加害者への復讐や仕返しとしての自殺の空想」は共同体感覚をもたらしうること、「特別という感覚を生む物語」は、違いに不寛容となる思春期から青年期前期においてアイデンティティ感覚を支える非常に強力なモデルとして作用すること、「被害の意味づけを肯定的な方向に移行させる物語」はいじめ自体を利用する方略であること、「格言など」は対人関係の敏感さ等の長期の亘る影響を及ぼすことが考察された。 2.1998年に施行した、いじめ被害者に対する質問紙およびロールシャッハ・テストのフォローアップ面接を2002年8月に行った。 3.2003年3月23〜25日、ACA(アメリカ・カウンセリング学会)総会に参加して、関連研究のレビューを行う予定である。 続きを見る
66.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 東大寺文書の形成と伝来に関する基礎的研究
森 哲也
研究期間: 2001
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67.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 徽州文書を主たる史料とする明清中国の社会結合と村落構造の研究
中島 楽章
研究期間: 2001-2002
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概要: 本年度も研究課題に関する史料の調査・収集、国内外との研究者との交流、研究成果の発表を行った。史料収集に関しては、日本国内の各種機関に収蔵される徽州関係の族譜・文集・地方志などの史料調査を継続し、また4月には台湾の歴史語言研究所、8月には中国社会科学員歴史研究所において、徽州文書などの調査に従事した。同時に中国・台湾の文書史料・明清社会経済史研究者との学術交流を行い、歴史語言研究所では日本における文書研究の現況について報告した。また8月には、上海師範大学における「国家、地方、民衆的互動与社会変遷国際学術研討会」において清代徽州の山林経営・宗族形成について発表した。このほか国内では、京都大学人文科学研究所における「中国近世の秩序形成」研究班をはじめ、広島大学・大阪大学・東京学芸大学・早稲田大学などで開催された、宋代〜近代の地域社会・元〜明代の法制史料などに関する研究会に参加・報告を行っている。 研究成果としては、まず2月に博士論文を大幅に増補して、著書『明代郷村の紛争と秩序』を刊行した。ついで明代徽州における小規模同族の山林経営・社会結合・紛争処理を、一連の徽州文書により検討し、その成果を本年7月に論文として刊行する予定である。また関連するテーマとして、明代初期に寧波へ輸出された日本産品についての新出史料を分析し、本年3月に論文として発表する。以上の研究活動を通じて、従来の進めてきた徽州文書研究を、宋代〜近代における地域社会や社会結合の展開という文脈の上に位置付け、特に山林経営・同族結合・紛争処理といった諸点に焦点を当て、明清期の華中山間部における基層社会の実態を民衆レヴェルの史料によって明らかにする作業を進展させ、上記の研究成果を得るとともに、今後の文書資料・宗族・村落社会研究への展望を得ることができたと考えている。 続きを見る
68.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 清末民初・文言小説の文体に関する研究
中里見 敬
研究期間: 2001-2003
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概要: 1.研究資料収集の状況 (1)第一次資料 清末民初の文言小説、および同時期の関連する第一次資料の収集に努めた。主なものとしてこれまで本学未所蔵だった『小説林』、『中国近代孤本小説精品』、『増注官場現形記』、『飲冰室文集点校』、『李大〓全集』などがある。 (2)研究資料 (1)と平行して、文体論関係の最新の理論的成果を吸収するために、和書・中国書・洋書の関連書籍および研究誌を収集した。主なものとして、これまで本学未所蔵だった『中国近代文学辞典』、『中国近現代通俗社会言情小説史』、『清末民初小説目録』、『清末民初小説年表』、Tom Guldemann, Reported Discourseなどがある。 2.研究の内容 (1)第一次資料の読解と用例の抽出 上述の資料収集をふまえて、本年度は文言小説、および白話小説を含む同時期の関連する資料を読み込み、用例の抽出や文体特徴の検出を行った。用例の抽出にあたっては、「語りの形式」や「自由間接話法」といった点に重点をおいた。また、成果の一部を発表した。 (2)理論的研究 (1)と同時に理論的研究を平行して行った。本年度は主として、オリエンタリズム、ポスト・コロニアリズム、構築主義といった近年の人文・社会科学全般で注目される思潮について、広く関連文献を読み、理解に努めた。なかでも、本研究に密接に関わるLydia Liu, Translingual Practice : Literature, National Culture, and Translated Modernity -China, 1900-1937 (Stanford UP, 1995)は、その理論的射程の広さにもかかわらず、日本の学界では十分に知られていないため、私を含む三人の共訳により、全訳刊行をめざして翻訳中である。 (3)資料の公開 民国初期の代表的文言小説である『玉梨魂』初版本を、画像化して公開する準備を行った。 続きを見る
69.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 黙示録文化の弁証法とその行方―終末の終末は可能か―
小黒 康正
研究期間: 2001-2002
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概要: ヨーロッパ文化に現れた脱黙示録志向の考察を中心に進めながら、黙示録文化の弁証法の実相の解明を目指す本研究の成果は、次の三点にまとめられる。 第一に、黙示録文化特有の屈折した現象、すなわち黙示録と脱黙示録の相反する二つの志向が黙示録に精通する同一の人物の内に宿るという特異な現象を、トポス論を踏まえながら明らかにしたことである。その際、黙示録と脱黙示録の二つの志向の混淆を初めて文学化した表現主義抒情詩集『人類の薄明』を主たる考察対象に据えた。本成果は韓国独文学会の国際学会誌(平成13年)にドイツ語論文として公表されている。 第二に、インゲボルク・バッハマンの『ウンディーネ行く』におけるユートピア志向と黙示録志向との混淆の解明が挙げられる。その際、日本における水の精の物語であり同時に黙示録志向を有する泉鏡花の『夜叉ヶ池』と比較対照とすることで、ヨーロッパ的黙示録における一回性と日本的黙示録における循環性を問題にした。本成果はドイツ・ベルリン大学教授のHannelore Scholz氏によって編集され、平成13年冬にベルリンで刊行されたバッハマン論集に掲載されている。 第三に、黙示録的な音に関する文学的トポスがドイツ文学に頻出することを指摘し、トーマス・マンの作品などから具体的事例を挙げて考察した。本成果は日本独文学会の国際学会誌(平成15年夏)にドイツ語論文として掲載されることになっている。 続きを見る
70.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 12世紀イングランドにおける重罪聖職者をめぐる裁判実務と法理の形成
苑田 亜矢
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究は、12世紀イングランドにおける重罪聖職者をめぐる国家(俗権)と教会(教権)の関係およびコモン・ローとローマ・カノン法の法理形成を、1154年に起きた大助祭オズバートによるヨーク大司教ウィリアムの毒殺事件を主たる考察対象としてこれに関係する史料群を検討することにより、解明することを目的としたものであるが、昨年度中に達成することができた、(1)ヨーク大司教ウィリアムの毒殺事件に関わる研究史の整理、(2)関連史料の精読、(3)イギリスにおける未刊行史料の収集をふまえて、今年度に達成することができたのは、以下に示す諸点である。 まず、第一に、ヨーク大司教毒殺事件について、その背景・経過を整理することにより事件を再構成するとともに、相対化のために別の事件についても整理することができた。 第二に、ヨーク大司教毒殺事件等の実務に関与した知識人達(とくに注目すべきはギルバート・フォリオット)による重罪聖職者の取り扱いをめぐる法理論を分析することができた。 第三に、最近発表されたマックハーディーの論文を含め、12世紀における重罪聖職者をめぐる国家(俗権)と教会(教権)との争いの結果たる「聖職者の特権」に関わる先行研究をおおむね整理することができた。 第四に、国内では入手不可能な未刊公史料を中心に、ケムブリッジ大学図書館、オクスフォード大学ボドリアン図書館において史料を収集することができた。この際、12世紀に作成されたとされている法集成(重罪聖職者の問題にも関わる法令が収録されている)を閲覧・検討することができた。 第五に、前述のイギリスの各図書館に保管されている史料について検討をすすめることにより、従来の重罪聖職者に関する研究に用いられてきた史料は「伝記」が中心であったという、従来の研究の史料上の限界を指摘することができた。 第六に、以上の成果の一部を、2002年8月開催の西欧中世史研究会で発表し、有益な意見を得ることができた。 続きを見る
71.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 経済社会の変革と「契約の相対効」の浸食-「歴史」と「法と経済学」からのアプローチ
曽野 裕夫
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究は、IT革命期である現在において《経済社会の変革に応じて契約法がいかに変容するか、すべきか》という一般的問題を、「契約の相対効」という伝統的契約法の原則を素材として検討することを目的とする。本年度は、次の3つの作業を予定していた。 【1】UCITAと経済産業省『電子商取引等に関する準則』の比較検討 【2】UCC第2編改正作業の法的背景および政治的背景の分析 【3】UCC第2編改正作業にみられる「保証書」に関する理論分析 これらに関連して、今期においては、改正UCC第2編の起草者ヘンリー・ゲイブリエル教授との共同研究関係を確立できたことが特筆すべきである(九州大学に非常勤講師としての招聘もおこなった)。これによって、アメリカの法状況の情報収集が一段とスムーズに行えるようになった。今期においては、上記について裏面掲記の業績を公表したのに加えて、【1】については、平成15年中に論文公表を予定している。【2】については、当初予定していた現地調査(海外出張)は、ゲイブリエル教授の来日、および、調査対象としていた会議での実質的な審議が平成15年5月に順延になったために中止した。平成15年5月の会議後に論文を公表することを予定している。【3】については、「契約の相対効」という観点から、消費者契約との関連で内閣府国民生活局で講演と、医療関係者向けの講演(直接の契約関係にたたない医師と患者の関係という観点から)を行った。「保証書」に関する研究成果は、【2】に関する論文のなかであわせて公表する予定である。 続きを見る
72.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 少年司法における新しい処遇プログラムに関する研究
武内 謙治
研究期間: 2001
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73.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 韓国政党制における「冷戦体制」―その形成・発展・変容
出水 薫
研究期間: 2001-2002
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概要: (1)本研究は韓国政党制に対する冷戦の影響を解明しようとするものである。本年は最終年度である。研究目標の一部として設定したように、成果を出版のための草稿としてとりまとめるための作業が中心となった。 本研究では韓国の政党制の基本的な特徴を整理し、それらの特徴が朝鮮戦争後の1950年代、すなわち冷戦の前期にかたちづくられたという結論にいたった。すなわち権力掌握後に「与党」が形成される、「反共」という理念を共有する範囲内で「野党」の存在が許される、与野党間では「民主化」が象徴的な争点とされること、さらに憲法が具体的な争点となることが、韓国政党制の特徴である。そこでは朝鮮戦争という冷戦史上の画期をなす事件の影響が色濃く反映している。また冷戦の国際環境を与件として、国内政治を制約していることが判る。 しかも、そのような政党制の諸特徴は数度の政治体制の変動にもかかわらず、1987年の「民主化」まで継続した。そこでも紆余曲折を経ながらも、冷戦という国際環境の規定力が一定発揮されたことを示している。 他方で、南北間の体制間競争の帰趨が明らかになる1980年代には「民主化」への過程が開始した。与件としての冷戦の「変質」は、国内政治過程において諸アクターの行動様式の変容をもたらし、最終的に「民主化」をもたらした。しかし「民主化」後の政党制にも、なお冷戦期の影響が残存している。そのような知見は政党制論の範疇を超えて政治体制論的な射程をも持つと考える。 (2)以上の結論の概観については、2002年10月8日におこなったポーランドの国立ポズナン大学の招待講演で整理し報告した。また同様に本研究の成果のアウトラインは、後掲の石川・平井編『終わらない20世紀』法律文化社、2003年2月刊において、韓国政治史の通史というかたちでも公開している。 (3)出版草稿の最終的な補足のため、年度の末ではあるが3月に渡米する。 (4)本研究の成果は最終的に平成15年度中に出版される予定である。ただ出版草稿は、本研究が当初設定した冷戦期全般にわたるものではなく、その一部、とりわけ形成期(大韓民国の建国から1960年の「4月革命」にいたる李承晩政権期)に焦点をあてたものとなる。 続きを見る
74.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of イスラエル建国過程におけるシオニスト運動
池田 有日子
研究期間: 2001
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75.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 文革期中国における「保守派」の政治動態
三宅 浩之
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究の目的は、中国地域(中国政治)研究における60年代中国社会の政治動態の分析、政治学における社会主義体制研究および大衆行動論研究の理論枠組の構築、に置かれるものであった。この2つの目的より、当該研究期間においては、文革期における大衆組織とりわけ「保守派」組織の政治動向の解明、およびそれによってもたらされた文革期における政治変動=中国社会主義体制の動揺・変容の具体的過程の解明という研究目標を設定した。これらの研究目標は(1)資料収集・聞き取り調査による基礎データの整理・分析、(2)従来の中華人民共和国史・中国社会主義体制史・文革史をめぐる国内外の諸研究の批判的検討、(3)新たな理論枠組の提示という作業プロセスによって進められた。以下、こうした具体的作業プロセスにそって研究目標の達成度および当該研究によって得られた新たな知見等の成果を述べる。 (1)については、資料収集を進め、おもに同時代資料の収集に努めると共に、関連中国語文献の収集による資料の補強と資料批判を行った。とりわけ『新編紅衛兵資料』全20巻(総頁数9644頁)を入手し、これに基づいて諸組織の政治動向に関するデータの整理・分析を行った。また研究期間後期においては、香港中文大学中国研究サービスセンター編集のCHINESE CULTURAL REVOLUTION DATABASEを入手することにより、より基礎的かつ総体的な政治動向と地域における動向との連動に関するデータの整理・分析を行った。これらの作業の一部は資料紹介という形式で公表した。(2)・(3)については、従来の共和国史研究における文革以前(社会主義建設期)、文革期、文革以後(改革・開放期)という断絶的視点を、独自の社会主義体制構築への一貫したプロセスとして連続的に把握することを試みた。この作業の一部は、東アジア政治史通史の分担執筆という形式で公表した。 続きを見る
76.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 人の国際移動の管理と人権保護のための国際制度づくりにおける国際機関の取り組み
柄谷 利恵子
研究期間: 2001-2003
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概要: 平成13年度においては、本研究に関連した1次及び2次資料の国内での収集に専念した。また、2001年度は難民条約採択50周年だったため、国連高等難民弁務官事務所による難民保護及び庇護政策の変遷に関する資料及び研究が多数発表された。そこでこれらを使って、1980年代以降のヨーロッパ諸国とくに英国の庇護及ぴ移民政策に関する論文を執筆した。 論文の中では、1980年代以降、英国をはじめとする西欧の先進国が、以下の3つの問題意識のもとで移民及び庇護政策を進めてきていると論じた。その3つとはまず第1に、庇讃希望者の大半が経済目的の移民であり、第2に、庇護希望者と移民の境界が交錯している状況において、移民法と庇護法を統括した枠組みが必要であるという点である。さらに第3に、迫害や拷問から逃れてきた真の難民を助けるはずのシステムが、経済目的の移民によって悪用されているため、難民保護の観点からいっても、移民・庇護法を強化し、虚偽の庇護希望者の入国規制を徹底的におこなうべきだと考えられている。英国のブレア首相はさらにもう一歩踏み込んで、1951年難民条約を「時代遅れの法律」と評し、大量かつ頻繁に人の国際移動が行われる現状に合致した、新たな国際的枠組みの必要性まで示唆している。結論としては以下の2点を指摘した。まず第1に、現在西欧各国は、悪質な移民斡旋業者の手引きで不法入国を行う非熟練労働者を一定程度受け入れることで、彼らを劣悪な状況から救いだそうとの試みをはじめている。その一方で第2に、海外からの高技能移民の獲得にむけた世界規模の競争が始まっており、その狭間で切り捨てられようとしているのが、庇護申請が受理された時点から、高度に権利が保障されるという意味で、国家に大きな経済・社会的負担を課すと危惧される庇護希望者である。 平成14年度は、13年度に出来なかったジュネーブでの資料収集及びインタビューを夏季に集中的に実施する予定である。その後、研究成果を論文としてまとめ発表したいと考えている。 続きを見る
77.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 労動市場制度の慣性とそのリフォームについての政治経済学的分析
堀 宣昭
研究期間: 2001-2002
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概要: 企業のライフサイクルと労働市場の分析では、(1)若年企業が自前で必要な人材を育てるのは難しい。 (2)若年企業ほど生存率が低い といった企業のライフサイクルの重要な特徴を考慮した場合に、労働市場でどのような均衡が達成されるかを、労働市場のサーチ・マッチング・モデルを用いて分析した。 定常状態において、賃金の下方硬直性が存在する場合に、経済には、高開業率・低失業率の均衡と、低開業率・高失業率の均衡とが同一のパラメータ下で複数均衡として存在することが確認された。これは、賃金の下方硬直性が存在するケースでは、高失業のケースほど、非雇用者の失業者に対するレントが大きくなり、これが既存の企業の内部にいる労働者を雇用するにあたって、新規企業が負担しなければならないコストの拡大を通じて開業率を低下させ、ひいては全体の失業率の上昇につながるというメカニズムのためである。 「市場調整」対「企業内調整」と労働市場の分析では、企業と労働者が恒常的に発生する、スキルのミスマッチをどのように解決するかをモデル化した労働市場のサーチ・マッチング・モデルを発展させた。労働市場での情報の非対称性の効果を考慮すると、労働者が、自分がこれまでに蓄えた人的資本を犠牲にしてまでも、自分のキャリアを企業の変化に合わせていく「企業内調整」均衡と、ミスマッチが生じた場合に、常に自分の専門に即した企業を労働市場でサーチする「市場調整」均衡が、複数均衡として両立することが示され、また、均衡の失業率がどちらが高くなるかは一概に言えないが、中古労働市場と新人労働市場の活発度が両均衡で逆になることが確認された。またラーニング・バイ・ドゥーイングの期間が長くなると、複数均衡が発生する余地が大きくなるケースが存在することも示された。 続きを見る
78.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 不完全競争論とサインズ経済学―カレツキアンとニュー・ケインジアンの対比から
池田 毅
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究の目的は,不完全競争論にともに着目しているカレツキアンとニュー・ケインジアンの対比から,ケインズ的なマクロ経済学の展開を検討することである。とくに,所得分配の関係から彫琢されたカレツキの不完全競争論に着目し,そこでのケインズ的な有効需要論のロジックに注目することが本研究の特色である。 昨年度は主として,市場機構と所得分配との関係を題材に,カレツキの議論の含意を明らかにしてきたが,本年度は,より直裁に不完全競争論を援用しながらマクロ経済学を展開しているニュー・ケインジアンのモデルをとりあげ,カレツキの不完全競争論の観点からそれらを再検討した。研究論文,池田(2002)ならびにIKEDA(2003)はこうした観点から,マクロ経済政策,とりわけ総需要管理的な財政政策について検討したものである。 これらの研究において得られた新たな知見の一つは,財政政策は,所得再分配を通じておこなわれた場合,伝統的ケインズ経済学やニュー・ケインジアンの議論が想定しているより高い政策効果を発揮する可能性がある,ということである。さらに,こうした所得再分配の観点から財政政策を捉えた場合,ニュー・ケインジアンが指摘する,伝統的な財政政策の財源負担による厚生水準へのマイナスの影響は必ずしも必然的なものではないこと,むしろ,そのマイナスの影響は「同質的な代表的家計」というモデル上の特定の仮定に依存している可能性があること,が明らかにされた。いうまでもなく,これらの新たな知見は,カレツキ的な所得分配と有効需要の相互作用のメカニズムに着目したが故に得られたものである。したがって,今後もまたこうした観点からマクロ経済学の研究を続ける予定である。 続きを見る
79.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of SH3ドメインをもつアダプター蛋白質の活性化と高次構造変化のメカニズム
住本 英樹
研究期間: 2001
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概要: 食細胞NADPHオキシダーゼの酵素本体は、細胞膜のシトクロムb_<558>である。本酵素の活性化には、特異的アダプター蛋白質(p47^<phox>,p67^<phox>とp40^<phox>:各々SH3ドメインをもつ)が刺激依存性に細胞質から細胞膜に移行してシトクロムb_<558>と相互作用する必要がある。私共はオキシダーゼの活性化機構を研究し、平成13年度は以下のような成果を得た。 (1)p40^<phox>は休止時細胞でp67^<phox>と会合している蛋白質であるが、この両者の結合は、新規なドメイン間(p40^<phox>のPCモチーフとp67^<phox>のPB1ドメイン)の全く新しいタイプの蛋白質間相互作用によるものであることを示した。更に、これら新規なドメインが酵母のシグナル伝達蛋白質(Cdc24pとBem1p)にも存在し、酵母のシグナル伝達においても重要な役割を担うことも明らかにするとともに、Bem1pのPB1ドメインの3次構造決定に成功した。p40^<phox>の役割は今まで不明だったが、PB1-PC相互作用によるp67^<phox>との結合を介してp67^<phox>とp47^<phox>の膜移行を促進させ、オキシダーゼ活性化を正に制御していることを明らかにした。 (2)p47^<phox>とp40^<phox>(オキシダーゼの調節因子)のN末領域に新規ドメインを見い出していたが(PX/PB2ドメイン)、更に、P47^<phox>PXドメインの3次構造を決定するとともに、PXドメインがphosphoinositides結合能をもつこと、P47^<phox>のPXドメインはp47^<phox>の膜移行およびオキシダーゼ活性化に必須であることを示した。またp47^<phox>のPXドメインがSH3ドメインとの分子内結合により負に制御されていることを明らかにした。 続きを見る
80.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of Gp160発現CD4陽性細胞におけるカルシウム依存性アポトーシスの解析
吉田 裕樹
研究期間: 2001
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概要: これまで、HIVenv gp160発現細胞を用いた実験系において、gp160とCD4との相互作用により細胞内カルシウムの上昇を伴うアポトーシスが生じることを報告してきた。本研究では、このカルシウム依存性アポトーシスが、いかなる機序で生じるのかを明らかにすることである。 まず、gp160発現後にミトコンドリアよりシトクロムcが放出されることから、このアポトーシスにミトコンドリア依存性経路が関与していることが示された。また、アポトーシスがカルシウムシグナルにより引き起こされることをカルシウムキレート剤を用いることで確認した。また、特異的阻害剤を用いることにより、このアポトーシスにカルシウムにより活性化されるカルシニューリンが関与していることを確認した。カルシニューリンの基質としては、Bc1-2ファミリーに属するBADが考えられ、カルシウム上昇により、BADが脱リン酸化されアポトーシス阻害分子Bc1-xLと結合することを確認した。BADの脱リン酸化は、カルシニューリン阻害剤により抑制された。以上より、カルシウム上昇によりカルシニューリンが活性化し、これにより脱リン参加されたBADがBc1-xLと結合、この機能を阻害することによりミトコンドリアを傷害し、シトクロムcの放出、そして下流のアポトーシスカスケードが活性化を介してアポトーシスが生じることが示された。これは、AIDSにおけるCD4陽性細胞の減少を引き起こすメカニズムの一つと考えられ、AIDSの病態解明や治療法の開発に新しい情報をもたらすものである。 続きを見る
81.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 植物遺伝子の新しい温度依存的発現制御機構
射場 厚
研究期間: 2001
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概要: (1)イネ核由来プラスチドRNA polymerase遺伝子の解析 イネから、複数のプラスチド局在ファージ型RNA polymerase(NEP)遺伝子Osrpo Tpのクローンを単離し、それらの塩基配列を調べたところ、ORFの5'側に、367bpの欠失があるクローンが一定の割合で存在することを見出した。イネゲノムチーム(RGP)の完全長cDNAクローンと比較したところ、RGP由来のcDNAクローンの配列も同様の欠失を含んでいた。この欠失はフレームシフトを引き起こすため、活性のあるNEPは合成されないと考えられる。また、プラスチド局在型NEPに対する特異的ペプチド抗体を用いて、タンパク質レベルでのNEPの発現パターンを調べたところ、野生株においてはrpoBなど、NEPによって転写される遺伝子の転写パターンと一致していた。しかし、virescent変異株においては、葉の発生ステージ後期でrpoBのmRNA蓄積量が上昇するが、NEPタンパク量は逆に減少していた。このようなNEPの発現パターンはOsrpoTp mRNAの蓄積パターンと一致することから、NEPの翻訳後の活性化にvirescent遺伝子が関与することが示唆された。 (2)イネvirescent遺伝子のクローニング (1)V_1遺伝子:遺伝子座近傍のAFLPをスクリーニングし、約1cMの距離にあるCAPSマーカーを見つけ、そこを基点に染色体歩行を進めている。(2)V_2遺伝子:V_2が座乗するBACクローンを同定し、V2の座乗領域を物理距離28kbpの範囲に絞り込んだ。アノテーションとcDNA検索の結果から、この領域上に2つの候補遺伝子を見いだし、その1つにアミノ酸置換を引き起こす点変異があることがわかった。(3)V_3遺伝子:第6染色体長腕側の約5.0cMの位置に存在する約40kbpの領域に絞り込んだ。アノテーションの結果から、この領域上に9個の候補遺伝子を見いだした。 続きを見る
82.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of アサガオにおける形態形成突然変異体の解析
仁田坂 英二
研究期間: 2001
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概要: アサガオの突然変異体の原因遺伝子に挿入しているTpn1ファミリーを利用して遺伝子クローニングを行うためにSTD(Simplified Transposon Display)法を用いて、葉や花が細くなる立田(maple)遺伝子の原因遺伝子の単離を試みた。この突然変異体は易変性を示すため、トランスポゾンの挿入によって誘発されていると考えられる。STD法で立田突然変異体で特異的なDNA断片が1つだけ得られ、現在対応するゲノム領域とcDNAを単離解析している。またこの柳変異特異的なプライマーを設計し、表現型との連鎖を20個体程度について調べたところ、完全に連鎖しており、立田遺伝子に非常に近い領域を得ていることが明らかになった。 アサガオにも茎がリボン状になる帯化変異体が知られており、シロイヌナズナのfasciata変異の原因遺伝子であるFAS1,FAS2,AtMSI1と相同な遺伝子をスクリーニングした結果、InFAS2,InMSI1-A, InMSI1-Bが得られた。突然変異体と野生型の転写産物の比較をこれらの相同遺伝子について行ったところ、野生型と差がみられなかった。 吹詰(fukitsume ; fu)は、我々の研究室で新規に単離された分裂組織が巨大化する突然変異体で、その表現型からシロイヌナズナのCLV経路に関わる変異と相同な変異だと考えられる。そのためCLV1〜3と相同性のあるアサガオの遺伝子のスクリーニングを行った結果、InCLV1-A, B, InCLV1LP1,InCLV2を単離した。突然変異体と野生型の転写産物および塩基配列の比較をこれらの相同遺伝子について行ったところ、突然変異形質には関与していなかった。現在、まだ単離できていない相同遺伝子のスクリーニングを行っている。 続きを見る
83.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 平安時代物語文の比較計量的研究
今西 裕一郎
研究期間: 2001-2002
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概要: すでに初期入力を終え、コンピューター辞書による単語分割の施されているデータベース底本(前田家本)本文をもとに、前年度までと同様の手順により、作成済みの巻以降のデータベースを作成し、「うつほ物語」の本文データベースを完成させた。 それを用いて、品詞分布および形容詞、形容動詞、助動詞、助詞、副詞の5品詞(使用度数上位20語)につき、数量化3類による分析を行い、「源氏物語」の数量化3類分析のデータとの比較検討を試みた。 ただし、データベースの不備により数量化3類の分析に使用できたのは、「うつほ物語」20巻中の12巻にとどまり、また、分析を上記の5品詞に対してしか施せなかったのは遺憾であった(3月末には全20巻、全品詞を対象とした分析態勢が整う予定である)。 上記5品詞に即しての数量化3類による分析は、物語の文章の性格において「源氏物語」と「うつほ物語」とが、統計的に有意味的な相違を示すという結果を導き出した。 もっとも、この二つの物語の文体の相違は、従来も直感的な印象としては指摘されていた。しかし、今回の数量化3類による分析の結果、その相違は、具体的な主要語彙と両物語の各巻との相関という形で、客観的に示されることになった。 一例を挙げれば、形容詞、形容動詞、副詞の場合、基本的・客観的な意味の語が「うつほ物語」の各巻の近くにまとまって分布するのに対し、主情的意味の語は「源氏物語」の各巻の近くに集まるという、かなり明確な差異が見られる。これは「うつほ物語」の文が客観的な語の多用による平板な叙述を基調とするのに対し、「源氏物語」の文が感情・心理の起伏に裏付けられた陰翳に富むものであることを、具体的に証明するものである。 続きを見る
84.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of インド古典における言語論の比較論的再検討
赤松 明彦
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究は、古典インドの言語論・言語哲学の特質と展開を、テキストの精密な読解と比較論的な観点からの再検討を通じて明らかにすることを目的としたものであった。前年度までにほぼ完了していた、古代インドの言語哲学者バルトリハリの主著『ヴァーキヤ・パディーヤ』全体の読解研究を受けて、最終年度である本年度は、ジャイナ教論書のうちの『ドゥヴァーダシャーラ・ナヤ・チャクラム』および『サンマティ・タルカ・プラカラナ』に見られるプラフマニズム言語論に対する批判を分析することを個人研究における課題とした。また同時に、他分野・多領域の研究者との討議・共同研究を通じて、西洋やイスラーム世界における言語論・言語哲学についての知識を深化させ、古典インドの言語論・言語哲学の比較論的再検討を行うことを目的とした。 ジャイナ教論書に見られる言語論批判の検討については、『ドゥヴァーダシャーラ・ナヤ・チャクラム』第5章の研究を終え、ジャイナ教論書における正統文法学派とバルトリハリ思想の位置づけについての検討を終えた。 言語論・言語哲学を専門とする諸領域の古典研究者との討議・共同研究の方は、所属する「古典の世界像」班の共同研究テーマが「魂論の諸相」となったことから、十分には行えなかったが、「魂と言語」の問題については十分に考究する機会を得た。 所属するA04班「古典の世界像」班の共同研究テーマ「魂論の諸相」に関連しては、その成果として「魂論の諸相-古代インドにおける魂と自己の問題」を論文として提出した。 さらに申請者は公募研究に採択された者であるが、総括班報告の一部として「インド学史:近代インド学の成立(サンスクリットの発見から第2次世界大戦まで)」の執筆を分担した。 続きを見る
85.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of CMCを利用した外国語教育における学生のコミュニケーションの研究
井上 奈良彦
研究期間: 2001
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概要: 1.文献収集 (1)コミュニケーション関連(特にCMCとCMCを利用した外国語教育関連)の図書・論文などの目録データベースを作成した。特に、CMC研究についてはアメリカの大学を中心とする最新の博士論文を入手した。 (2)また、その一部を収集しCMCの外国語教育への利用を中心に概要をデータベースに付した。 2.CMCを用いた英語授業中の学生のコミュニケーション行動分析 (1)データの収集。平成13年度に研究代表者が担当したCMCを利用した実際の英語授業において、学生のグループのなかのコミュニケーションを、学生の行動のビデオとチャットのログを記録した。 (2)データの記号化。談話分析の手法を中心に、学生の行動と会話の内容を、文字化・範疇化し、時間軸に沿ったコミュニケーションの推移を記号化した。 (3)上記の分析から、学生が英語授業でチャットを用いる場合の問題点、英語によるコミュニケーションのパターンや問題点を分析した。ここではいわゆる「会話分析(エスノメソドロジー)」的手法を併用した。 (4)分析の結果、学生は高度な内容の論題を話題とする英語教育ディベートにおいて、チャットを用いて反対尋問を行う際、一見発話頻度が非常に少なく、「会話」は断続的に進行しているように見受けられる。しかし、そこには参加者から見れば連続するコミュニケーションの過程があり、学生はかならずしも「さぼっている」わけではないことが明らかになった。このようなチャットの英語教育での有効性は同様の口頭での活動と厳密に比較して検討する必要がある。 続きを見る
86.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 多方向性コミュニケーションツールを用いた法学教育の試み―IT時代の真の高等教育のあるべき姿を求めて
河野 俊行
研究期間: 2001
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概要: 本研究では、株式会社システムソフトのソフトウェアEDU-Projectの機能を利用しながら、6回の「バーチャルゼミナール」を試行した。この場合の1回のゼミは最低4度のセッションからなっており、1セッションには1週間の時間の余裕をみたため、結局1回のゼミは1ヶ月、6回行うには夏休みをはさむと8ヶ月かかったことになる。 各回のゼミナールの最初には、事例問題を学生全員が見られる形でアップロードした。参加者はその問題に含まれている論点を抽出してアップロードする。教師側がこれに対してコメントあるいはサジェスチョンを出す。そこで再度参加学生は論点を見直して修正版をアップロードする。次いで教師の指示に従い、参加者の一人が回答例をファイルの形でアップロードする。それに対してコメンテーター役の学生が回答にコメントする。そのコメントを受けて第二回答者が自分の見解をアップロードする。この時点で参加者全員がコメントを求められ、アップロードする。それを受けて第一回答者が最終回答をまとめる。この段階で教師がコメントを出してその回のゼミナールを締めくくる。こういう形で6回のゼミナールを持ったわけである。工夫した点としては、事例問題を当初は簡単に、だんだん難しくした点、さらにはすぐに解答を与えるのではなくコメントによって自分に考えさせるようにした点である。 6回終了後参加者のアンケートをとったところ、肯定的回答40%、否定的回答40%、無回答20%といった傾向を示した。肯定的回答としては「手法が斬新」「自宅で学習できる」が最も多く、他方否定的回答には「実際のゼミですればいいことをなぜこういうことをする必要があるのか」「PC立ち上げるのが面倒」といったものがあった。 今回の最大の問題は、科研の決定時期との関係で、これ専用のゼミナールをあらかじめ募集しておくわけに行かず、既存のゼミナールを本研究用にも併用したわけであるが、その結果参加者の中に、インターネットに対する親近度に大きな差がみられた。それはおのずとバーチャルゼミに対する主体的参加態度にも影響した。法学部におけるゼミは、唯一の少人数教育の実現の場として学生は教師とのナマのコンタクトを求めて集まってくる。それをバーチャルで転用しても、学生の意識がまだそれに追いついていない、という感を強くした。 続きを見る
87.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 教育科学系における社会人学生とメディア活用に関する開発的研究
吉本 圭一
研究期間: 2001
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概要: 本研究は教育科学系における「社会人ブラッシュアップ教育」の検討を課題とし、対象の特性を考慮したメディア活用による学習システム開発について検討した。とくに本研究では、個別講義等でのメディア活用にとどまらず、そうした社会人学習者の学習環境適応ツールとしてのメデイア活用の普及可能性や、それを手掛かりとする教育科学系でのプロフェッショナル・スクール化の条件等を考察した。 研究方法としては、一方で、国内での教育科学系社会人向け高度専門職業人養成カリキュラムにおける諸課題とメディア活用可能性について更に具体的に明らかにしていくために、九州大学大学院人間環境学府教育学部門の社会人大学院での事例検討をおこなった。他方で、海外の先端的事例として、オーストラリアの南クイーンズランド大学(The University of Southern Queensland)とディーキン大学(Deakin University)等の訪問調査を実施し、遠隔教育プログラム開発担当の専門職・教員や、教育科学系学習プログラムの担当教員へのヒアリングをおこない、これらの両者の事例の検討・考察を行った。 こうした研究方法によって、わが国の教育科学系大学院における社会人受入がオンキャンパスモードから脱却するためは、多くの検討すべき点が明らかになった。第1には、遠隔高等教育プログラムの提供そのものは、現在の我が国の教育職員と事務職員という区分にとどまらず、教授・学習支援のためのあらゆる専門職層の連携・協力があって初めて可能となるのであり、この点を検討・改革する必要がある。 また、教育専門職市場での資質向上のための高度職業専門人養成を考えれば、学位制度の改革、学習内容の革新など、労働市場と学位取得プログラムとの明確な対応関係を意識した、従来の研究者養成とは別の系列の養成システムを構築すべきである。その際、研究者養成プログラムと高度専門職業人養成プログラムとは全く別物ではなく、共通に学ぶべき基本的な領域があり、カリキュラムを積極的にモジュール構造へと転換していく必要性が明らかになった。 続きを見る
88.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 3次元仮想空間チャットシステムにおける英語の授業方法の開発
鈴木 右文
研究期間: 2001
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概要: 1999年度から九州大学と野村総合研究所が3次元仮想空間チャツトシステムの外国語授業への応用と改良に取り組んできたのを受け、本研究においては、北海道大学言語文化部・京都大学大学院教育学研究科・野村総合研究所の協力を得て、九州大学と北海道大学をインターネットで接続して遠隔英語実験授業を実施し、よりよい授業方法を探り、またその中で得られた知見をフィードバックして、より快適な授業を可能とするようなさらなる改良をシステムに施した。 授業方法としては、受講者を対象としたアンケート調査により、タスクの形式は非日常的なもの、内容は日常的なものが望ましいことがわかった。 システム上の改善点には授業の成立自体に必須と思われるものもあり、遠隔地で受講中の参加者に確実に授業進行上の指示内容を伝えるためのテロップ表示や、タスクをこなす上で遠隔地に散らばる参加者をグループに分けることができるグルーピング機能などがそれにあたる。この他、細部にわたる様々な改良を加え、LL並の使い勝手の良さを目指した。 この他、授業実践やアンケート調査によって、3次元仮想空間の存在意義・学習意欲の増進効果、チャットログの計量的評価のみでもかなり妥当な成績評価ができることなどが確認された。 今後の課題としては、文字チャットのみならず音声チャットも実施する場合の諸問題、複数大学を接続しながら一人の教員で実施する遠隔授業の各実施大学での単位化などがある。 続きを見る
89.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 朝鮮本に関する書誌学的データベースの構築
松原 孝俊
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究の目的は、文部科学省科学研究費特定領域研究「東アジア出版文化の研究」における、研究組織G班「出版情報・書目研究」の公募研究であることを鑑みて、「朝鮮本に関する書誌学的データベースの構築」として、明治6(1873)年から平成14(2002)年までこ日本語で公表された、朝鮮本に関する書誌的研究や書誌データ(目録類など)、あるいはそれらと関連する研究を、網羅的に集成する事にあった。したがって、研究代表者の判断によって集められた情報は、単行書や各種の雑誌において活字化された、論文・目録・研究紹介・研究ノート・資料紹介・解題・書評・著作年表・対談録・学会通信、加えて録音テープなど多彩な内容となっており、これらの約7000種の多様な情報を、初出年・著者名・編者名・論文名・書名・掲載雑誌名・号数・発行地・発行所・発行年月日・版(謄写版・木版・写本・油印本等)・頁数(単行書については総頁数・論文については掲載頁)などの各項目にわたって記述した(全234頁)。再掲・再版に関する情報もできる限り、拾い上げ、記述した。これらのデジタル情報については、さらに検索が容易になるように、検索フォームを備えたデータベースを作成した。日本語で公表された情報を集成したため、韓国語や欧米諸語などで公表された書誌情報は含まれていない。また、現在すべての論文や単行書についての調査を継続して行う予定であり,それらすべての項目についての頁数の記載については今後の研究に期すところである。 続きを見る
90.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 機能性核酸DNA複合体形成によるシンクロナイゼーション活性化
佐々木 茂貴
研究期間: 2001-2002
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概要: 背景:合成オリゴヌクレオチドは生体内においてmRNAあるいは2本鎖DNAと複合体を形成することによって、特異的に遺伝子発現阻害を行うことが可能であり、アンチセンス、アンチジーン法として新時代の医薬品への発展が期待されている。高い阻害効率を実現するため、これらの複合体の安定化が必要であり、特に、機能性核酸を利用した核酸間を共有結合で固定化するクロスリンク反応の適用が検討されている。我々は、効率的かつ特異的な反応が、目的の標的部位でのみ活性化される分子の開発を目指し、標的核酸との複合体形成→活性化→クロスリンク反応と一連の反応がシンクロナイズして誘起される、新規機能性核酸誘導体の開発を目指している。 結果:標的塩基をシチジンとし、高い塩基選択性を実現するため、認識構造と反応部位を同一分子内に持つ機能性核酸2-アミノ-6-ビニルプリン誘導体を設計した。このビニル基を2本鎖DNA内で効率よく発生する安定前駆体としてフェニルスルフォキシド体、ならびにフェニルスルフィド体を用いることによって、「シンクロナイゼーション活性化」機構による機能発現を立案した。 フェニルスルフォキシド体を組み込んだオリゴDNAは効率的なクロスリンクを実現した。シンクロナイゼーション活性化概念を最も理想的な形で実現したのはフェニルスルフィド体(X=2-COOH)であった。つまり、この分子は非常に安定でチオールやアミンなどの強い求核剤とは全く反応しないが、相補的DNAとのハイブリダイゼーションによって速やかにクロスリンクを形成した。二本鎖内でシトシンのアミノ基とカルボキシル基によるpush-pull機構による活性化によりビニル基が再生し、引き続きクロスリンク反応が起こったものと考えられる。上記の検討によって、二本鎖内での分子シンクロ活性化の概念を確立した。さらに反応効率の高いダブル活性化構造を開発することもできた。現在これらのin vivoへの利用を計画中である。 遺伝子そのものへの特異的反応を実現するため三本鎖形成クロスリンク反応を検討した。三本鎖の遠い側のフリップアウトした塩基に接近させるためエチルおよびブチルスペーサーで糖部に連結した化合物を用いて検討したところ、エチルスペーサー化合物はTA塩基対のアデニンとブチルスペーサー化合物はGC塩基対のシトシンと非常に高い選択性で反応することが明らかになった。 続きを見る
91.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 分子組織性ハイドロゲルの創成に基づく蛋白質機能の時空間制御
君塚 信夫
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究では、分子組織性ハイドロゲルの分子設計の確立および、分子組織性ハイドロゲル中における蛋白質の機能制御を目的とした。その結果、短いアルキル鎖を含む疎水部構造および、複数のアミド結合を含むグルタミン酸骨格を有するアンモニウム脂質が芳香族スルホン酸イオンや、過塩素酸イオンなどの疎水性アニオンと疎水性イオン対を形成することで、分子組織性ハイドロゲルを形成することを明らかとした。例えば、カウンターアニオンとして2-ナフタレンスルホン酸イオンを用いたハイドロゲルにおいては、光捕集機能を有するハイドロゲルとなる。このハイドロゲルにおいては、ナフタレンが二分子膜ゲルファイバー中に高密度に集積化されており、光励起エネルギーはこのファイバー上を効率的に移動する。アクセプターとして1mol%の9,10-ジメトキシ-2-アントラセンスルホン酸イオンの添加により、ナフタレン由来の蛍光は大きく消光し、かわりにアントラセン由来の増感蛍光が大きく現れた。エネルギー移動効率は低濃度の水溶液状態よりも、ハイドロゲル状態において著しかった。これは、2-ナフタレンスルホン酸の二分子膜ファイバーへの結合率と相関しており、ハイドロゲル状態においての高い結合率が、高効率のエネルギー移動をもたらした。また、光捕集性のハイドロゲルのみならず、フェロセンカルボン酸などをカウンターアニオンに用いると、レドックス応答を有するゲルが得られる。このレドックス応答性ゲルはアクチュエーターやバイオセンサーなどの応用が期待される。このように、我々は、共有結合を使うことなく、機能性のアニオンと、自己集合性の短鎖アルキル脂質を用いることで、効率的に機能性アニオンを集積化させ、それに伴い機能性のハイドロゲルを作製することに成功した。 続きを見る
92.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 情報応答性DNA複合体を用いる遺伝子情報制御システム
前田 瑞夫
研究期間: 2001-2002
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概要: 遺伝子DNAと刺激応答性高分子の複合化により、遺伝子の持つ情報を人工的に制御・利用することを目的として研究を行った。昨年度までにアンチセンス活性を持つオリゴヌクレオチド(ODN)と温度応答性ポリマーpoly(N-isopropylacrylamide)(polyNIPAAm)のグラフト型複合体の合成に成功し、これを用いて細胞抽出液からの転写・翻訳システムの制御が可能であることを明らかにしている。本年度は、この複合体のアンチセンス機構を明らかにする目的で、アンチセンスODNの分子認識能について詳細に検討した。具体的には目的配列を含むRNAに対し、0.5,1,2,4等量のアンチセンス複合体を加え、ここでRNA/DNAハイブリッドをつくらなかったRNA(free RNA)をマイクロチップゲル電気泳動装置で定量することにより、アンチセンスODNの結合能力を評価した。その結果、25℃においては1等量加えた時点で既にfree RNAはほとんど存在せず(ca.10%)、アンチセンス複合体の標的配列捕捉能力が十分に高いことが示された。これに対し、ランダム配列の複合体を用いた場合には、4等量加えた後でも、これに対する標的RNAの結合はほとんど観察されなかった。一方、37℃での同じ実験では、アンチセンス配列の場合もスクランブル配列の場合も、標的RNAの捕捉はほとんど観察されなかった。37℃ではpolyNIPAAm鎖が温度相転移を起こし、グロビュール状態へとそのコンホメーションを変化させているため、アンチセンスODNの標的RNAへの結合が阻害されたものと考えられる。以上の結果から、本研究で合成した情報応答性DNA複合体は、外部情報に応じて標的への結合能力を変化させ、これをもって遺伝子情報の発現を制御しうることが強く示唆された。 続きを見る
93.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 分子シンクロ現象を利用した有機薄膜の超微細加工
田中 敬二 ; 梶山 千里
研究期間: 2001-2002
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概要: ラングミュア・ブロジェット(LB)膜を始めとする有機薄膜は種々の機能特性への応用展開が計られている。しかし、それらの機能は集合系として分子固有の極限機能の総和値として発現させるには至っていない。本研究では、有機薄膜の極微小情報素子としての可能性を探索するため、光・電場と分子の化学構造との刺激-応答のシンクロ現象を利用した有機薄膜の新規微細加工法を提案することを目的として実験を行った。 始めに、構造制御され、かつ、欠陥が著しく少ない結晶性(光応答性分子/脂肪酸)混合単分子膜を構築する必要がある。ツビッターイオン型のアゾベンゼン誘導体4-(4'-octyloxyazobenzene)oxydecyl(2-hydroxyethyl)dimethylammonium bromide(8Az10)とステアリン酸(SA)からなる混合単分子膜を水面上で調製し、種々のキャラクタリゼーションを行った。固体基板状に一層移し取った混合単分子膜の室温での電子線回折および全反射X線回折測定に基づき、単分子膜が結晶状態にあることを確認した。この単分子膜に波長365nmの紫外光を照射するとその表面形態が変化したことから、8Az10分子は二次元結晶中においても光異性化できると考えられる。また、8Az10分子の単分子膜中での光異性化挙動は紫外-可視吸収分光測定においても確認した。混合単分子膜の表面形態は、8Az10分率が20mol%程度の狭い組成範囲で均一であった。このため、(8Az10/SA)(20/80mol%)混合単分子膜を用いて超微細加工の検討を検討した。その結果、膜中に直径1Onm程度のピットを作製することが可能となった。また、8Az10分率が40mol%の混合単分子膜では明確なストライプ状の相分離構造が観察された。このような相分離構造が単分子膜で形成された報告例は皆無であるため、詳細な検討も行った。 続きを見る
94.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 光同調性分子組織体を用いる光電変換デバイスの構築
山田 淳
研究期間: 2001-2002
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概要: 電気化学的傾斜構造を持つ光同調性分子ユニットを二次元、三次元空間に配列させた分子組織系を構成し、色素間のシンクロ現象によるカスケード的な電子移動の向上と電子拡散効果の発現による画期的な光電変換システムの実現を本研究の目的とする。 すなわち、電荷分離型色素を金電極や金微粒子表面に化学修飾し、光に同調した色素間のシンクロ現象による電子拡散効果や、表面プラズモン効果による光-色素シンクロ現象を利用した電荷分離状態を原理とする光電変換システムを構築する。さらに、分子シンクロ現象を活用して、光電流の方向を制御できる多機能型光電変換素子も開発する。本年度の成果を以下にまとめる。 (1)分子シンクロ現象の効果 電解分離型色素としてルテニウム錯体(D)とビオローゲン(A)を連結した色素を合成した。D:A=1:0,1:1,1:2の系や、D-A間距離、A-電極間距離の異なる系について比較検討した結果、光電変換効率は1:2>1:1>1:0の順となった。また、A-電極間は短いほど有利であるのに対し、D-A間には最適距離が存在することを明らかにした。 (2)金ナノ粒子-色素ハイブリッドシステム 金ナノ粒子とルテニウム錯体、あるいはポルフィリンとのハイブリッド光電変換素子を構築した。ポルフィリン系で数百nAに及ぶ大きな光電流を得た。また、金ナノ粒子の表面プラズモンに基づく光電流の増強効果を世界で初めて見出した。 (3)双方向性光電変換素子 カソード方向、アノード方向の光電流を発する2種類の色素を混合した単分子膜を作製した。この素子において、500nm以下と600nm以上では逆方向の光電流が発生した。波長でスイッチできる双方向性光電変換素子を創出した。 続きを見る
95.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of π共役電子系とフォトクロミック分子団のシンクロナイゼーションによる発光特性制御
河合 壯
研究期間: 2001-2002
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概要: フォトクロミック分子であるジアリールエテンとπ共役系からなる蛍光ユニットを連結させることにより、高効率で蛍光発光がスイッチできる分子を開発した。得られた分子は、ジアリルエテンユニットの開環・閉環反応に伴い、蛍光量子収率が70%と0.1%以下の間で可逆的にスイッチ可能である。さらに単一分子蛍光測定システムを新たに構築し、この分子の蛍光スイッチング挙動を単一分子レベルで観測した。単一分子蛍光測定システムでは、共焦点光学系を採用し、100倍の対物レンズで集光照射した局所領域からの蛍光を同じ対物レンズで集光し、ピンホールを通すことで非焦点面からの散乱光を除去し、高いSNで一分子からの蛍光を観測した。検出器としてはシングルフォトンカウンティングAPDを用いた。488nmCW光を照射すると一段階で蛍光強度が低下する単一分子に特有のブリーチィング挙動が観測できた。紫外光を同時に照射すると、蛍光がON-OFFを繰り返す現象が見られた。これは、ジアリールエテンユニットの閉環反応および開環反応によるものであることが明らかになった。OFF状態の平均持続時間は可視光強度と反比例した。また、ON状態の平均持続時間は紫外光の照射強度に反比例した。これらの結果から、一分子観察に基づく光開環反応量子収率は6x10-6と見積もられた。これはバルク測定の結果とほぼ一致した。これらの結果から、単一分子フォトクロミック反応の観測に成功したと結論した。 続きを見る
96.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 分子認識における分子シンクロ -合成ペプチド/コンビケムによるアプローチ-
中村 成夫
研究期間: 2001-2002
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概要: 本研究の目的は、精密に分子設計されたホスト化合物のように堅い相互作用ではなく、ターゲット分子に応じてシンクロナイゼーションを行うフレキシブルな合成ペプチドを、コンビケムの手法により開発することである。さらにシンクロナイゼーションを情報変換することにより分子センサとしての機能を持たせる。 情報変換部位として、p-ニトロフェノールを色素部位とする脂溶性ペプチド誘導体を7種類合成した。前年度はこれらの化合物を用いて、疎水場での有機アミン類との相互作用について検討した。その結果、脂溶性ペプチドの分子認識能は、そのアミノ酸配列によって大きく影響を受けることが分かった。脂溶性ペプチド1〜7はモノプロトン酸(HL)であり、カチオン(Q^+)を水相から有機相へ抽出する能力があると考えられる。そこで今年度は、1〜7による4級アンモニウムイオンの抽出挙動について検討した。 テトラブチルアンモニウムイオンの場合、いずれの脂溶性ペプチドにおいても、水相のpHが高くなるにつれて、有機相に(QL)_oが生成し、431nm付近における吸光度が増大した。中でも脂溶性ペプチド4を用いたときには、その他の脂溶性ペプチドと比べて、pK_<ex>が約2小さくなり、テトラブチルアンモニウムイオンを効率よく有機相へ抽出することが分かった。抽出定数K_<ex>=([QL]_o[H^+]_a)/([HL]_o[Q^+]_a)は、水相のpHに対して、有機相の吸光度変化をプロットし、カーブフィッティングすることによって求めた。 脂溶性ペプチド4、7を用いたときのみ、テトラメチルアンモニウムイオン、アセチルコリン、コリンを有機相へ抽出することができた。1〜7の脂溶性パラメーターlogP_<o/w>はほとんど同じであるため、4級アンモニウムイオンとの結合・抽出能力には、Leu-Leu-Leuというアミノ酸配列が重要であることが示唆された。 続きを見る
97.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 細胞周期による線虫の個体の大きさの制御
大島 靖美
研究期間: 2002-2003
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概要: 1.sma-5変異体において、sma-5のcDNAを下皮、腸、下皮および腸で発現させたところ、下皮のみで発現させた時に最もよく大きさの回復が見られ、sma-5遺伝子のプロモーターによって発現した時と同じ程度であった。このことから、sma-5遺伝子の下皮における発現が体全体の大きさの制御に重要であると考えられる。 2.sma-5変異体のニューロンと核のDNA含量を測定し、ニューロンの核DNAが2Cであると仮定して腸の核のプロイド数を計算すると34Cとなり、野生型の結果と有意な違いがなかった。下皮についてはまだ結論がでていない。 3.sma-5変異体の腸の核数は成虫において野生型よりわずかに減少している(84%)が、この違いはL2期以降に生ずる。 4.S期特異的に発現するといわれるcye-1::gfp遺伝子によって、腸の核分裂のS期に異常があるかを調べることを試みたが、この発現が必ずしも明瞭でなく、また野生型との違いが小さいので、結論は不明である。 5.哺乳動物のBMK1/ERK5の上流で働くMEK5(MAPKK),MEKK3(MAPKKK)のC.elegansのホモログである可能性のある計約20の遺伝子について、feeding RNAiを行った。MEK5のホモログと思われるCO9B8.7のRNAiでは、rrf-3株、N2株とも子どもの体積が1/2程度以下に減少し、成長速度、腸の顆粒の分布についてもsma-5変異体に似た表現型が示された。従って、この遺伝子がSMA-5の上流でMAPKK(またはMAPKKK)としてSMA-5の機能に必要である可能性が強い。 続きを見る
98.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of マウスGemininの発生工学的手法を用いた機能解析
中山 啓子
研究期間: 2002-2003
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概要: Gemininは、mitosisの間にだけに分解される分子を網羅的にスクリーングすることによつて発見された分子である。G1期には全く存在しないが、S期からG2期、M期の開始にかけて蓄積し、有糸分裂の中期(metaphase)から後期(anaphase)への移行期に急速に消失する。このタンパク量の急激な変化はAPC/Cによるユビキチン化によって分解を受けるためである。また、Gemininを過剰発現するとDNA複製が抑制されることから、DNA複製のライセンシングに関与する分子であると考えられてきた。このように細胞周期の進行に強く関わっていると考えられる分子Gemininのノックアウトマウスを作製することによって、そのin vivoでの生物学的役割を検討することが本研究の目的である。 Geminin遺伝子をクローニングし遺伝子構造を明らかにした後、Cdt1結合領域をコードするエクソンをネマイシン耐性遺伝子に置換するターゲティングベクターを作製し、定法に則りノックアウトマウスを作製したところ、胎生早期に致死であることが確認された。現在までの解析では、ノックアウト胚は胎生7.5日には観察されていない。このような胎生初期の死亡からも細胞の正常な分裂に必須の分子であることが予想される。 一方、2004年には、Gemininは、Polycomb遺伝子との相互作用によって、Hox遺伝子を制御することが報告された。今後は、分化におけるHox遺伝子との相互作用も検討したいと考えている。 続きを見る
99.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 細肪周期におけるサイクリン分解制御因子の機能解析
小林 英紀
研究期間: 2002-2003
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概要: ユビキチン依存性で分解されるサイクリンAとサイクリンBは、細胞周期における選択的蛋白質分解のしくみの解明にとって重要なモデル蛋白質として位置付けられる。我々は、サイクリンAと結合する蛋白質XDRP1を同定してサイクリン分解に対する効果を調べたところ、XDRP1がM期でポリユビキチン化したサイクリンA、Bに結合すること、しかし、サイクリンAの蛋白分解を阻害するが、サイクリンBの分解は阻害しないという選択的阻害効果をみられた。本年度は、ツメガエルの卵抽出液を用いて細胞周期における分解と選択阻害のしくみを解析した。XDRP1と高い相同性を示す新たなXDRPファミリー遺伝子(XDRP1-600)をクローニングして、サイクリンAとの結合を調べると、このXDRP1-600はサクリンAと結合しないし、またサイクリンAの分解も阻害しなかった。サイクリンAとの結合の違いはN末端のUbLドメインの違いによるものであった。XDRP1のUbLはサイクリンAに結合した。しかし、XDRP1-600のubLは15アミノ残基の挿入があり、サイクリンAに結合しなかった。UbLはプロテアソームと結合するが、サイクリンAのUbLドメインへの結合により、UbL-プロテアソーム間の結合が阻害されて、サイクリンAの分解が阻害されると考えられる。現在そのしくみの解析を継続している。さらに、XDRP1はサイクリンA依存性キナーゼによりリン酸化され、核に局在し、細胞周期に依存して脱リン酸化されるリン酸化蛋白質である。サイクリンAへの結合とXDRP1のリン酸化を介してサイクリンAとサイクリンBの選択的分解がいかに制御されているかを現在解析中である。 続きを見る
100.
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
Cover image of 卵成熟過程におけるWee1翻訳調節の機構解析
古野 伸明
研究期間: 2002-2003
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概要: ツメガエルのWee1Aタンパク質は、卵形成や卵成熟において特殊な調節を受けている。すなわち、そのタンパク質は卵形成過程の進行とともに徐々に減少しst.IVから検出されなくなる。その後卵成熟が開始すると、卵核胞崩壊(GVBD)後約1時間して再合成される。この間、Wee1A mRNA量はほぼ一定であることから、この合成は翻訳の段階で調節されていることが強く示唆された。今までの我々の研究から、Wee1A mRNAの3'の非翻訳領域(3'UTR)に存在する3ケ所のcytoplasmic polyadenylation signal(CPE)が翻訳制御(翻訳抑制)の重要なcis elementであることが明らかになった。今回、その翻訳抑制機構を明らかにする目的で、まずWee1Aの3'UTRを大量に卵母細胞に注入した時に観察されたホルモン刺激無しの卵成熟がなぜおこるかを解析した。Western blottingの結果、Mosが初期に合成されその後Wee1Aが合成されていた。MosのmRNAの3'UTRにはCPEが1個しかないがWee1Aのそれには3個のCPEが存在する。このことは、CPEの数が卵成熟における翻訳時期を決定している可能性がある。そこで、CPEの数を変えたWee1A mRNAを作製し卵に注入した。その結果、予想に反してCPEの数と翻訳時期には関係が無かった。さらに、Wee1Aの翻訳抑制に関与するタンパク質を調べるため、Cyclin B1mRNAの翻訳抑制に関与しているとされているMaskin, CPEBをコードするmRNAを注入してWee1A mRNAの翻訳が抑制されるかどうか調べた。その結果、Maskin, CPEBの過剰発現でWee1A mRNAの翻訳は抑制された。これらの結果から、Wee1A mRNAの翻訳抑制にMaskin, CPEBが関与する事が示唆された。 続きを見る