昆虫の学習形成の神経解剖学的および神経生理学的基礎-昆虫の脳の可塑性

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昆虫の学習形成の神経解剖学的および神経生理学的基礎-昆虫の脳の可塑性

フォーマット:
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
タイトル(他言語):
Neuroanatomical and neurophysiological basis of learning : plasticity of the insect brain
責任表示:
藤 義博(九州大学・理学部・教授)
TOH Yoshihiro(九州大学・理学部・教授)
本文言語:
日本語
研究期間:
1993-1994
概要(最新報告):
本研究は脳の高次機能をその構造と電気生理学的特性を基礎に解析することを目的とした。その研究成果を要約した。 (1)昆虫の脳のニューロン構築:ハエ、ハンミョウについては幼虫と成虫、ゴキブリの若虫と成虫、ミツバチの成虫の脳のニューロン構築をゴルジ法と電子顕微鏡で調べた。 視覚情報を処理する視葉は何れの昆虫でも成虫では網膜内の位置関係を維持する第1シナプス層と、空間位置情報より視覚刺激の特徴を抽出する第3次シナプス層、およびこの2層の間にあり、空間情報を特徴抽出のため変換する第2次シナプス層から構成されている。幼虫では成虫の第1層と第3層に相当部分のみで、より簡単な構成になっていた。サル、ネコなどの高等動物の視覚系では特徴抽出機能は後頭葉の視覚野にあり、出生後の初期に形成されるが、この過程には視覚刺激が必要であることが知られている。ハエでも形態識別などの高次機能は羽化後の視覚刺激により形成されるとの報告もある。しかし、幼虫期、蛹期を完全暗黒中で飼育し、羽化後視葉のニューロン配列を調べたが、ニューロン構築には正常光条件化で飼育したものと有意の差は認められなかった。これらの結果は、神経系の可塑的変化はよりミクロなレベル、あるいは視葉よりさらに中枢の前大脳で生じる可能性を示した。ニューロンのミクロな変化は形態学的に捉えられないシナプスの分子レベルでの変化が予想される。本研究ではハエの視葉で光条件によりニューロンの軸索の直径が有意に変化することを統計的に示した。 脳の機能地図作成のため、視覚ニューロン、嗅覚ニューロンなどの応答を記録した後、細胞内蛍光染色を行ない、それらの出力部位である脳内での軸索終末部位を同定した。これらの結果を総合すると、感覚情報は視葉、嗅葉で処理された後、前大脳のキノコ体に送られ、ここで処理されることが明らかになった。処理された情報は動物の行動パターンに出力するが、運動に関する情報の起始の部位は明らかでなかった。自由に行動できる状態で昆虫の脳内の活動を極微銅線電極で検索し、これも前大脳のキノコ体にあることが明らかになった。 (2)昆虫の神経系の可塑性:記憶、学習、慣れなどの高次神経機能は神経系の可塑性を基礎としていることが繰返し強調されている。しかし、可塑性を論じる対象となるニューロン回路が明らかにされた例は極めてわずかである。行動に密接にかかわるニューロン回路の解析をまず行なった。対象としたのは、ゴキブリの逃避行動に関わるニューロン回路とハンミョウ幼虫の捕獲行動と逃避行動に関わるニューロン回路である。これらの行動は繰返し刺激に対する応答性が低下する。繰返し刺激に対して感覚器からの出力は変化しないことから、これらの情報を処理するニューロン回路のシナプスの効率等が変化することが示唆されたが、詳細な解析は現在進めている。 (3)記憶とニューロン:記憶の実体は神経生理学上の最大の問題点である。その実体はニューロン回路のなかにあると予想されている。もしこの仮定が正しければ、ある記憶に対し特異的に応答するニューロンが存在する可能性がある。この可能性をミツバチとゴキブリの視覚学習を手がかりに調べた。ミツバチでは行動学的に形態識別能が明確である。現在、学習した図形に特異的に応答するニューロンを脳内で検索しているが明確な結果を得ていない。ゴキブリでは視覚的手がかりで規定される場所で罰刺激を繰返し与えると、視覚刺激に特異的に応答するニューロンを同定した。 (4)以上の成果は昆虫の脳の高次機能と神経系の可塑性を直接、間接に関連付けるものである。 続きを見る
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