ショウジョウバエの分子神経生物学に関する共同研究

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ショウジョウバエの分子神経生物学に関する共同研究

フォーマット:
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
責任表示:
谷村 てい(九州大学・理学部・助教授)
本文言語:
日本語
研究期間:
1993-1994
概要(最新報告):
1.視細胞の分化を調節するargos遺伝子解析 代表者の谷村、東大の岡野、ジョンズホプキンス大学のモンテルの共同研究により同定されたargos遺伝子の機能を明らかにする研究を行った。argosはその機能欠損型の突然変異体では、複眼視細胞の数が増加し、規則的な複眼構造が乱れることが電顕による組織学的研究などからわかった。遺伝子クローニングによって、argosは細胞成長因子と一部相同性をもつ分泌性のタンパク質をコードしていることが明らかとなり、視細胞、神経系で発現していることがわかった。熱ショックタンパク質のプロモーターの下流にargos遺伝子をつないだベクターをP因子井形質転換法でハエのゲノムに導入して、argos遺伝子の過剰発現を誘導できる形質転換系統を確立した。突然変異体においてargos遺伝子の過剰発現を行ったところ、複眼の形態異常が回復した。したがって、クローニングされた遺伝子の異常によって複眼異常が生ずることが証明された。野生型において、複眼の細胞が発生分化する幼虫後期においてargos遺伝子の過剰発現をおこなったところ、視細胞、色素細胞、晶体細胞の減少が観察された。したがって、argos遺伝子は抑制性のシグナルを近隣の細胞に伝達し他の細胞の分化を制御していると考えられた。さらに、argos突然変異体では、視細胞の発生異常とともに視神経の走行が異常となることが明らかになった。この異常も、突然変異体においてargos遺伝子の過剰発現を行ったところ回復したことから、argos遺伝子は視神経の走行にも関与していると考えられる。argos遺伝子がこの過程にどのようなメカニズムで関わっているかを解明するために、細胞特異的な抗体をマーカーとしてを用いた免疫組織学的な研究を行ったところ、argos突然変異体では成虫原基において視神経が投射すべき領域でのグリア細胞の発生に異常があることがわかった。この事実から、発生過程における神経の走行にグリア細胞が関わっていることが明らかとなった。 2.末梢神経細胞の分化に関わるmusashi遺伝子の解析 ジョンズホプキンス大学の中村が中心となり、エンハンサートラップ法のスクリーニングから分離されたmusashi遺伝子の解析を行った。musashi遺伝子の突然変異体を分離したところ、突然変異体では、成虫の剛毛に異常が見られ、その一部では2本となり重複することがわかった。剛毛は、4つの細胞から形成されるが、蛹期の発生過程を抗体染色によって調べたところ、前駆細胞の分裂に異常があり、通常1個発生するソケット-鞘細胞が2個生じていることがわかった。musashiは、遺伝子のクローニングによって新規のRNA結合タンパク質をコードすることがわかった。musashi遺伝子は神経特異的に発現しており、RNA結合タンパク質が神経細胞の分化において細胞運命の選択に重要な役割を果たしていることが解明された。musashi遺伝子の標的遺伝子の同定が今後の課題である。 3.グリア細胞の分化を制御するrepo遺伝子 repo突然変異体は網膜電図法(ERG)で記録される視細胞の電位が逆転していることから分離された。ジョンズホプキンス大学のモンテル研と東大の岡野の共同研究により、repo遺伝子はホメオボックスタンパク質をコードしておりグリア細胞の終分化に関与していることを明らかにした。細胞内記録法で視細胞の電位変化を調べたところ正常な位相の電位が記録されたことから、ERGの電位の逆転は、視細胞と視神経との絶縁の異常にあると推定された。谷村はrepo突然変異体の概日リズムの異常の有無を調べたところ、一部の個体で周期の異常が見出された。このことは、グリア細胞の異常が概日リズム機構と関わっていることを示唆するが、今後さらなる解析が必要である。 続きを見る
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