単一遺伝子病における組織特異的発現異常の研究

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単一遺伝子病における組織特異的発現異常の研究

フォーマット:
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
責任表示:
服巻 保幸(九州大学・遺伝情報実験施設・教授)
本文言語:
日本語
研究期間:
1992
概要(最新報告):
単一遺伝子病における組織特異的発現異常をグロビン遺伝子において解析した。δ-サラセミアは、δグロビン遺伝子の発現異常に基づく遺伝性の疾患である。以前我々はホモ接合型のδサラセミアを解析し、δグロビン遺伝子の上流-77位にC-T置換があること、ヘテロガスな発現系では正常型と同様な発現が得られることから、組織特異的な発現異常である可能性を指摘していた。今回この置換とサラセミアとの関係を明らかにするために解析を行ない、以下の結果を得た。1)サラセミアとこの一塩基置換との連鎖をPCR-dot blottingで検討したところ、この置換は正常日本人116アレルには見られず、家系の異なる3人のホモ接合体にのみ見られた。2)この置換は赤芽球特異的な転写制御因子GATA-1の結合モチーフ内に位置していることから、その結合能をゲルシフト法により調べたところ、正常に比べ変異プローブではGATA-1結合の著しい低下が見られた。3)この置換がδグロビン遺伝子の発現に及ぼす影響をみるために、-77位を含むδグロビン遺伝子の上流領域をプロモーターとするCATの組換え体を作り、赤芽球系細胞での発現を検討した。その結果、正常に比べて、変異を含んだ組換え体ではプロモーター活性の低下が見られた。以上の結果より、-77位の一塩基置換によるGATA-1結合能の低下が、サラセミアを来たしたものと結論した。 次に胎児型のグロビン鎖の合成が生体期においても維持される遺伝性疾患である遺伝性高胎児ヘモグロビン血症(HPFH)に注目し、日本人患者の^Gγ-グロビン遺伝子を解析し以下の結果を得た。1)プロモーターに存在する2個のCCAAT boxのうち遠位のbox内にCCAAT-CTAATの塩基置換を見いだした。2)各種細胞核抽出液を用いた解析により、この変異の為にubiquitousな転写制御因子であるCPIと、赤芽球特異的な転写制御因子であるNF-E3の結合に障害をきたしていることを見いだした。3)赤芽球培養細胞を用いた解析により、成体期には遠位のboxは抑制的に働いていると考えられた。現在トランスジェニックマウスを用いた解析と共に、負の転写制御因子と考えられるNF-E3の解析を進めている。以上の2例は、遺伝病の病因における組織特異的な転写制御因子の関与を明らかにすると共に、転写制御因子の結合障害により、発現が低下する場合と亢進する場合とがありうることを示し、単一遺伝病の分子病因に新たな知見を加えたものである。 続きを見る
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