日米中国における女性肺癌の疫学的、病理学的、ならびに分子生物学的要因の比較研究

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日米中国における女性肺癌の疫学的、病理学的、ならびに分子生物学的要因の比較研究

フォーマット:
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
タイトル(他言語):
Comparative study on female lung cancer in Japan, USA, China
責任表示:
中西 洋一(九州大学・医学部・助手)
NAKANISHI Yoichi(九州大学・医学部・助手)
本文言語:
日本語
研究期間:
1991-1992
概要(最新報告):
肺癌発生と喫煙との関係は明瞭であるが、従来から、女性肺腺癌患者の喫煙率は低いといわれている。そこで、女性肺癌に焦点を当て、その背景因子を他国間との比較の下に検討すること、ならびに、喫煙以外の肺癌発生要因を検討することを本研究の目的とした。 中国雲南省富源県は肺癌の多発地帯として知られているが、同地区は90%以上が農耕漢民族で、女性に喫煙習慣が無い。そこで、同地区を中心として喫煙以外の肺発癌の環境要因の検討を行った。さらに、肺組織内に沈着した発癌物質について、日中の切除標本について比較検討を行った。 1.中国雲南省富源県における肺癌の発生状況 中国雲南省富源県における1986年から1988年にかけての死因調査を行った。調査対象1,511,645名中5,763名が死亡した。この内、悪性腫瘍死亡率(訂正死亡率)は、10万対61.00(男性76.00、女性44.00)であったが、その内、肺癌死亡率は、10万対51.9(男性64.9、女性36.1;男女比1.81:1)で共に他臓器癌と比較して群を抜いて多かった。なお、1973年から1975年にかけての中国全体での肺癌死亡率(粗死亡率)は、10万対5.0と報告されている。 富源県は10行政区に分割されている。各行政区についての肺癌死亡率をみると同県の北部は南部と比較し死亡率が高かった。たとえば、北部の死亡率最多行政区(大河)は南部のそれ(富村)の16倍であった。 2.現地環境調査と資料中の変異原活性の解析 平成2年6月に富源県の中心都市(中安鎮)と北部の農村に入り現地環境調査と標本の採取を行った。農村部の伝統的な家屋は2階建てであるが、1階は台所兼居間として使用され、2階は寝室兼貯蔵庫として使用されている。1階と2階の仕切りは、中央部が梁に細竹を通しただけの構造となっている。2階の天井は一部吹抜けになっており、この部位を通じて室内の煙の大半が屋外へ排出される仕組みになっている。多くの農家では、現地で産出される石炭を粉砕し、土と水を混合して固めたものを家庭用燃料として使用していた。1階で炊事・暖房用に燃やされた石炭の煙は、2階の寝室兼貯蔵庫に立ち上り、ハムの薫煙にも利用されている。すなわち、家庭内において、高濃度の石炭燃焼物に暴露されていることが示唆された。 このような生活様式と生活環境は重要な肺癌発生要因と推察されたが、一般家庭の生活様式は富源県の南部と北部で大きく異なるわけではなく、同県南北での肺癌死亡率の差異を説明することはできなかった。 富源県北部一帯では有煙炭が、南部では無煙炭が産出される。そこで、当地における燃料炭の燃焼物と室内に沈着したスス中の変異源性物質を検討した。その結果、富源県北部農家の家屋に沈着したススと北部の石炭(有煙炭)燃焼物中の変異原性が高く、有煙炭由来の半コークスと南部の無煙炭中のものは低かった。 3.肺癌切除患者の肺組織に沈着した発癌物質の日中比較 中国富源県の肺癌患者21例、日本人の胸部疾患患者137例の切除肺組織中のベンツピレン(BaP)、1-ニトロピレン(1-NP)の濃度及び変異原活性(YG1204,-S9 YG1029,+S9)を測定し、その相関をみた。BaPについては、グラム乾燥肺重量当たり、中国例608.7±477.1pg、日本例180.3±103.7pgであった。1-NPについては中国例5.9±2.4pg、日本例21.3±12.4pgであった。BaP濃度が高い中国例は、日本例に比べてYG1204,+S9に対する変異原活性が高く、1-NP濃度が高い日本例は、中国例に比べてYG1204,-S9に対する変異原活性が高かった。 4.まとめ 中国雲南省富源県北部は、男女共に肺癌死亡率が高かった。その原因として、生活様式に基づく住居環境、ならびに、燃料用の石炭の成分が重要と思われた。肺発癌に石炭由来の発癌物質の関与が示唆された。日本肺では、中国肺と異なり、石油由来と思われる発癌物質の沈着が多かった。産業構造の変革に伴いこのような相違が生じたと思われた。日米でいわれている肺腺癌の増加との関連の有無等につきさらに解析する必要があると思われた。また、女性肺癌として始めた検討は、非喫煙因子の解析に帰結することになった。 続きを見る
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