中国大陸における顎口虫症の病原虫の再検討

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中国大陸における顎口虫症の病原虫の再検討

フォーマット:
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
タイトル(他言語):
Reinvestigation of Causative Agents of Gnathostomiasis in Mainland China.
責任表示:
石井 洋一(九州大学・医学部・教授)
ISHII Yoichi(九州大学・医学部・教授)
本文言語:
日本語
研究期間:
1989-1990
概要(最新報告):
駒屋ら(1945)や大鶴・片桐(1958)の報告によると、長江流域の淡水魚には有棘顎口虫 Gnathostoma spinigerum 幼虫が高率に寄生していると記載されている。しかも同幼虫は主に魚類の内臓に寄生するとある。 平成元年度は著者らは本報告を参考に長江流域の上海、鎮江、南京、九江、南昌とかなり広範囲に渡って、魚類の検索を行なった。上海地区ではさらに青浦、淀山湖、南涯、崑山の4ヶ所から魚類の採取を行なった。検索した魚類は計136尾でその大部分がカムルチ-と桂魚の2属2種であった。その結果、九江のカムルチー16尾の内臓から計15隻の顎口虫幼虫を得たが、その他の地区の同幼寄生率は低かった。特に上海地区のカムルチ-(56尾)からは1隻の幼虫しか得られず、その陽性率(2%)は著明に低かった。駒屋らの報告では上海市販のカムルチ-の陽性率は53%とあるので、同地区の同虫陽性率が低下したことが示唆された。得られた幼虫の大多数は魚類の内臓から得られた。虫体の大きさは著しく変化に富み、第3前期、第3後期、およびこの中間期の3種類が得られた。このことは前者の記載にない新知見である。回収虫体数計38隻中、18隻を光顕及びSEMレベルの検索に用い、他20隻はラットへ実験感染を行なった。虫体の形態を検討した結果、南京産カムルチ-から得られた1隻(体長4.8mm)は明らかに有棘顎口虫第3後期幼虫と思われたが、他の17隻は剛棘顎口虫(G.hipidum)第3前期および中間期幼虫と思われた。ラット2頭に実験感染を行なった20隻の幼虫はすべて中間期に属するものであった。感染約3ケ月後に同ラットを殺処分し、筋肉、内臓に分けて検索を行なった。その結果、幼虫はすべて筋肉部からのくみ得られ、被襄していた。回収虫体数は計17隻で、すべて第3後期幼虫(体長3.0ー3.9mm)に成長していた。同幼虫を光顕、SEMレベルで検索を行ない、同時に腸管のパラフィン切片標本を作製し、その形態を検討した結果、同虫体は剛棘顎口虫と思われた。このことは長江流域の魚類に寄生する顎口虫幼虫の大多数は剛棘顎口虫であることを示唆し、これは前者の記載にない新知見である。 平成2年度はLin & Chen(1986)の報告で江蘇省洪沢湖畔の魚類および同地区の猫に有棘顎口虫幼・成虫が高率に寄生しているとの実見をもとに長江流域の鎮江を挟んで南北に位置する2つの大湖、洪沢湖畔と太湖畔の魚類を検索した。今後は本2地区に限定し、しかるに多種、多数の魚類を検索した。検索魚類は前記の如く12属12種の計553尾である。検査方法は前年度と同様、各鮮魚を筋肉、内臓別に分け、ズラス板圧平法および人工消化液法を用い、実体顕微鏡下で観察した。その結果、太湖のカムルチ-から3隻、太湖のタウナギから7隻、洪沢湖のタウナギから8隻の計18隻の幼虫がえられた。これらの幼虫は前年度と同様、第3前期のものおよび第3前・後期の中間期のものが多かった。虫体18隻のうち7隻を形態観察に用い、他11隻は2頭のラットに実験感染させた。現在、実験中である。Lin&Chen(1986)の記載では洪沢湖における顎口虫の陽性率が最も高いのはタウナギ(陽性率50%)で、タウナギ15尾から計1,169隻もの幼虫を得ている。今回の調査では彼等の結果と較べ、寄生率が著しく低かった。さらに彼等の報告では魚類に寄生していた幼虫はすべて有棘顎口虫第3後期幼虫と記載してあるが、今回の検索では剛棘顎口虫幼虫と思われた。結論として著者らが2年間に渡って中国東南部の魚類を調査した結果、長江流域に分布する顎口虫は現在では有棘顎口虫よりむしろ剛棘顎口虫である可能性が高いことが示唆された。近年、本邦において中国大陸から輸入されたドジョウの生食により多数の剛棘顎口虫症患者の発生を見た。輸入ドジョウを検索した結果、同魚に寄制する剛棘顎口虫幼虫は第3前期に近かった。このことは今回の著者らの結果を裏付けるものである。最近、中国湖南省において中国人の有棘顎口虫症患者の発生が報告された。本症例の感染原はドジョウであり、我々の研究結果から本病原虫が剛棘顎口虫である可能性が強く疑われる。また、近年になって、再び中国本土において顎口虫症患者の発生を認めたことは本研究の実施を大変意義あるものとした。今回、魚類から得られた虫体数が少なく、終宿主への実験感染ができなかった。さらに終宿主の1つである猫の野外調査でも成虫は全く得られなかった。従って、初めに計画した顎口虫成虫を用いての同虫の細胞遺伝学的検索および分子生物学的検索を実施することができなかった。今後、各種顎口虫成虫の生鮮標本が得られることがあれば、これらの検索は是非とも実施されるべき研究の一つであると考える。 続きを見る
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