自然および誘導突然変異の生起とその抑制機構

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自然および誘導突然変異の生起とその抑制機構

フォーマット:
助成・補助金
Kyushu Univ. Production 九州大学成果文献
タイトル(他言語):
Mechanisms for induction and suppression of spontaneous and induced mutations
責任表示:
関口 睦夫(九州大学・医学部・教授)
SEKIGUCHI Mutsuo(九州大学・医学部・教授)
本文言語:
日本語
研究期間:
1988-1989
概要(最新報告):
アルキル化剤は強力な突然変異誘起剤であり、また動物に対して強い発癌作用を示すことが知られている。これはアルキル化剤が細胞のDNAに動用して種々のアルキル化塩基をつくるからである。一方細胞は特定のアルキル化塩基をみつけだして修復する一群の酵素をもっている。その酵素を欠損したミュ-タントを用いることによって、特定のアルキル化塩基と生物効果の関係を明らかにすることができる。このような観点から修復酵素を欠損した大腸菌のミュ-タントを分離した解析した結果、細胞の突然変異誘起にO^6メチルグアニンが、また致死作用には3メチルアデニンが最もよく関係していることを明らかにした。 大腸菌を微量のアルキル化剤で処理すると一連のDNA修復酵素系が誘導されるが、この誘導はada遺伝子で転写レベルで調節されていることが明らかになった。この遺伝子の産物であるAdaタンパクはそれ自体がDNA修復酵素であって、DNAのO^6メチルグアニンなどからメチル基をタンパク自体のシステイン残基に転移することによってDNAの傷を修復するが、その結果メチル化されたAdaタンパクはada遺伝子や関連するDNA修復酵素の遺伝子(alkA遺伝子など)の転写調節領域に作用し、それらの遺伝子の発現を促進することが明らかになった。このようにして多量に生産された種々のDNA修復酵素によってDNA上の傷はなおされるが、その後Adaタンパクは細胞内のプロテア-ゼの作用をうけてN末端側とC末端側の2つの部分に切断される。このようにしてできたN末端側の断片はプロモ-タ-に結合するが転写促進はせず、結果的にリプレッサ-として働いていることも明らかになった。このようにAdaタンパクを中心とする解析を行ったが、九州大学のグル-プは主として生物学的、生化学的側面について研究し、ストラスブルグ大学のグル-プはAdaタンパクのプロモ-タ-に対する結合など物理化学的解析を中心に研究した。 Adaタンパクに類似のタンパク(メチルトランスフェラ-ゼ)はヒトを含む哺乳動物の細胞にも存在し、突然変異や癌化の抑制に働いていると考えられる。私達はヒトの正常細胞由来のcDNAライブラリ-をメチルトランスフェラ-ゼを欠くヒトの細胞に移入し、アルキル化剤に対して抵抗性になった細胞を分離することによってメチルトランスフェラ-ゼのcDNAをクロ-ニングすることに成功した。cDNAのヌクレオチド配列を決定したところ、それは大腸菌のAdaタンパクと非常に高に相同性があることが明らかになった。 Fuchsと真木は化学発癌物質アセチルアミノフルオレン(AAF)による誘導突然変異のメカニズムを明らかにする目的でストラスブルグ大学において共同実験を行なった。この研究ではDNA複製に対するAAFの影響に焦点を紋り、その解析のための新しい実験系を開発した。まずDNA合成の鋳型として約60残基のポリヌクレオチドを化学的に合成し、さらにその特定の部位にAAFを結合させてDNAーAAF付加体を作製した。この鋳型を用いてDNAポリメラ-ゼによるDNA合成をin vitroで行ない、その産物をシ-ケンスゲルで解析した。その結果、DNAに結合したAAFは大腸菌のDNAポリメラ-ゼ(PolIII)によるDNA鎖伸長反応を著しく阻害することが明らかになった。DNA合成はAAFが結合したヌクレオチド残基の直前で完全に停止し、PolIIIはその障害を乗り越えていくことはない。またDNA中のAAFが結合する場所によってはその結合部位よりも数ヌクレオチド残基前でDNA合成が停止する場合もあり、AAFの結合によるDNAの構造変化が間接的にDNA合成阻害を引き起こしている可能性が示唆された。以上のことから、AAFによるDNA上の傷はDNA複製の過程で大きな単鎖DNA領域(ギャップ)の出現を引き起こすことが予想されるが、これはAAFがフレ-ムシフト変異を高頻度に誘発することを理解する上で重要な糸口になるものと考えられる。 続きを見る
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