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概要 |
多量のエネルギーを消費する我が国の鉄鋼業において、主要な高炉用原料として使用されている焼結鉱の被還元性の向上は、鉄鋼の生産効率の向上のみならず二酸化炭素排出量削減につながる重要な対応策の一つである。一方で、中国を中心とした世界的な鉄鋼生産の増加は鉄鉱石資源の低品位化を招いている。したがって、被還元性の高い焼結鉱を劣質な資源で製造する技術の確立が強く要求されている。高炉用原料である塊成鉱の還元速度に...関する研究は、酸化鉄ペレットや焼結鉱に関して行われてきたが、これらの研究は主にウスタイトもしくはヘマタイトから鉄への酸化鉄の段階的な還元を対象としてきた。したがって、焼結鉱のように酸化鉄に加えてカルシウムフェライトが混在するような異種の被還元鉱物相からなる塊成鉱の還元反応の定量化に関する研究はほとんど行われていない。このような背景から本研究は、焼結鉱のガス還元速度解析の基礎的研究として、焼結鉱を構成する主要な鉱物相である酸化鉄およびカルシウムフェライトの単鉱物相と、それらを混合した異種鉱物相から成る塊成鉱のガス還元実験を行い、種々の影響因子が塊成鉱の還元速度に及ぼす影響について検討するとともに、異種鉱物相から成る塊成鉱のガス還元速度が推定可能なモデルを新たに開発し、その推定モデルの有用性について考察した結果をまとめたものである。まず著者は、塊成鉱中の鉱物相粒度と塊成鉱の還元速度の関係を明らかにすることを目的として、種々の粒度の酸化鉄と合成カルシウムフェライトを用いて還元実験を行った。その結果、ヘマタイトからウスタイト、ウスタイトから鉄への両還元段階において、250 μm以下では鉱物相粒度と還元速度にはほとんど相関関係は見られないことを明らかにした。また、1100℃以上では、ウスタイトへの還元後にAl2O3-CaO-FeO-SiO2系の融液が生成し還元速度が低下する可能性があることを指摘した。続いて著者は、酸化鉄およびカルシウムフェライトのそれぞれの還元速度に与える還元ガス組成の影響を定量化するために、酸化鉄およびカルシウムフェライトそれぞれの単鉱物試料を、組成を変えたCO-CO2混合ガスと反応させる還元実験を行なうとともに、この還元実験で得られた結果を基に一界面未反応核モデルにより還元速度解析を行った。その結果、いずれの鉱物も、同じ温度条件では、CO濃度が高いほど還元が速く平衡近傍において極端に還元が遅くなったが、一界面未反応核モデルでの解析により求めた化学反応速度定数はArrhenius型の温度依存性を示し、カルシウムフェライト試料の平衡近傍のガス組成での還元を除けば、いずれの鉱物相でも還元ガス組成によらず化学反応速度定数は同程度の値を示すことを明らかにした。その一方で、生成物層内の有効拡散係数は、酸化鉄試料の場合は温度および還元ガス組成依存性が明確に見られるが、カルシウムフェライト試料の場合には温度やガス組成への依存性はほとんどなく、ほぼ一定の値を示すことを見出した。この結果は、両鉱物相の還元生成物層の差異によるものであると結論付けている。最後に著者は、塊成鉱を構成する鉱物相の混合割合と還元速度との関係を明らかにすることを目的として、種々の配合割合の酸化鉄-カルシイウムフェライト混合試料の還元実験を行った。その結果、1000℃以上では鉱物相割合による影響は小さくいずれもほぼ同程度の還元速度となるが、900℃以下の低温ではカルシウムフェライト相割合の多いものほど還元後期における還元速度が速くなることを示した。また、この原因は、ヘマタイト由来の粒子の還元において、粒子表面に生成される緻密な還元鉄層が粒子内部の還元を阻害するためであると考察した。さらに著者は、これらの実験結果をもとに、異種鉱物相から成る塊成鉱のガス還元速度の解析のため、被還元物が酸化鉄とカルシウムフェライトの混合物からなる二界面未反応核モデルを新たに開発して還元速度の解析を行ない、任意の温度における外殻層有効拡散係数と内殻層有効拡散係数の推定が可能な相関式を提示した。また、これらの有効拡散係数と各鉱物の単鉱物試料の一界面未反応核モデル解析で得られた化学反応速度定数を用いることで、二種鉱物混合試料の1000℃以上での還元速度は二界面未反応核モデルで解析可能であることを明らかにした。続きを見る
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目次 |
第1章 緒論 第2章 焼結鉱の主要構成鉱物の鉱物相粒度と還元速度の関係 第3章 焼結鉱の主要構成鉱物の還元速度に及ぼす還元ガス組成の影響 第4章 焼結鉱の主要構成鉱物の存在割合と還元速度の関係 第5章 異種鉱物相から成る塊成鉱のガス還元速度推定モデルの開発 第6章 総括
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