<博士論文>
材料の加工硬化特性を考慮したき裂結合力モデルに基づく疲労き裂成長解析手法に関する研究

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概要 船舶・道路・橋梁などの大型溶接構造物は国民生活・経済活動を支える社会インフラであり,それらに損傷事故が生じた場合,経済的損失だけではなく人命,地球環境に深刻な危険をもたらすことから,その安全性の確保は極めて重要である。また,環境負荷低減や経済性の観点から,省エネルギーを目的とした構造軽量化や既設構造物の延命化が注目される中,従来と比べて過酷な力学的環境に構造物がさらされることが今後予想される。一方...で,大型溶接構造物における損傷原因の多くを占める疲労破壊に関する評価は,現段階では経験的または確率論的な評価にとどまり,疲労破壊現象を主体とした理論的かつ定量的な疲労寿命評価手法が確立されているとは言い難い。本論文は,疲労き裂成長曲線を指標とした詳細な疲労寿命評価を行うために,疲労き裂成長推定手法の推定精度向上に関する研究をまとめたものである。研究では豊貞らが提案するRPG基準の応力拡大係数範囲をパラメータとした疲労き裂伝播則を採用し,疲労き裂成長シミュレーションに材料の加工硬化特性を考慮することで推定精度の向上を行った。本研究は,既設構造物の余寿命評価の精度向上,または新設計段階からの高精度での疲労寿命評価による最適構造設計を行えることにつながる。第1章では緒論として,本研究の背景,現状の疲労寿命評価手法,ΔKRPGによる疲労き裂伝播挙動の研究,本研究の目的について述べている。第2章では,疲労き裂成長シミュレーションにおいて,き裂開閉口現象の評価に用いられる,き裂開閉口モデルについて説明している。き裂開閉口モデルは疲労き裂特有のき裂先端近傍の開閉口現象を,き裂結合力モデルを応用して表現した数値解析モデルである。この章では,き裂周辺の塑性変形領域の除荷弾性変形を考慮可能な豊貞らの提案するモデルについて記述している。また,同モデルは疲労き裂成長シミュレーションにおいて,RPG荷重の推定に用いられており,その解析精度は疲労き裂成長挙動の推定精度に大きく影響を与える。ここでは,過去の疲労き裂伝播試験に対してシミュレーションを適用し,RPG荷重とき裂成長曲線について比較を行い,従来モデルの解析精度に関する考察を行なった。その結果,特に変動荷重下におけるRPG荷重推定精度,及びき裂成長曲線の推定精度に誤差が生じることを確認した。これは,従来モデルのベースとなるき裂結合力モデルが,材料の応力~ひずみ関係を理想化して取り扱っていることに原因があると考察した。第3章では,第2章で示した従来のき裂開閉口モデルの推定精度に関する考察を踏まえ,き裂開閉口モデルのベースとなるき裂結合力モデルに対して材料の加工硬化特性を導入し,その推定精度向上を行っている。本研究では,仮想き裂部(実際はき裂先端部の塑性域であるが,き裂結合力モデルでは仮想的にき裂と取扱う領域)のき裂開口変位の物理的意味を考慮した塑性ひずみ算出方法を提案し,材料の応力~ひずみ関係を基に結合力の修正を行った。また,提案手法の妥当性を検証するため,き裂開口変位について種々の応力~ひずみ関係を設定した弾塑性FEM解析との比較を行い,実き裂部,仮想き裂部において定量的な一致を確認した。さらに提案手法の実際の金属材料への適用を想定し,非線形硬化材料を対象としたモデルへの拡張を行った。第4章では,第3章で述べたき裂結合力モデルをベースとした,き裂開閉口モデルの定式化を行い,さらに,同モデルを実装した材料の加工硬化特性を考慮可能な疲労き裂成長シミュレーションの提案を行なっている。本研究では,き裂開閉口モデルで用いられる棒要素長さの変化量(塑性変形量に相当すると考えられる値)から荷重負荷過程,除荷過程における塑性ひずみ増分を算出し,繰返し荷重下での材料の加工硬化を評価した。また,同モデルをRPG基準の疲労き裂成長シミュレーションに実装し,過去に実施された疲労き裂伝播試験結果との比較を行い,提案手法の妥当性を検証した。その結果,提案手法による疲労寿命推定精度の向上が確認できた。特に,変動荷重条件としてブロック荷重条件,単一過大荷重(スパイク荷重)条件でのき裂進展遅延現象の評価について推定精度の改善を確認した。また,実機を想定した変動荷重下においても,提案手法により定量的な疲労寿命評価を行うことが可能であることを示した。第5章では,本論文の結論と今後の課題について述べている。続きを見る
目次 第1章 緒論 第2章 き裂開閉口現象を考慮した疲労き裂成長シミュレーション 第3章 材料の加工硬化影響を考慮したき裂結合力モデルについて 第4章 材料の加工硬化特性を考慮した疲労き裂成長シミュレーション 第5章 結論

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登録日 2013.07.09
更新日 2023.11.21

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