<博士論文>
口腔癌におけるBrachyury発現と上皮間葉移行の関与 : 予後因子としての応用の可能性

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概要 癌浸潤・転移は治療を困難にする最も重要な因子である。転移には細胞生物学的にダイナミックな細胞特性の変化と多段階の過程を経ることが知られており、近年、その過程における上皮間葉移行(epithelial-mesenchymal transition:EMT)の関与が数多く報告されている。さらにT-box転写因子のひとつであるBrachyuryがEMTを誘導することが報告された。しかし、臨床検体を用いて...Brachyury発現とEMTの関連を検討した報告は、これまでに口腔癌を含むすべての癌種において見られない。そこで本研究では、腺様嚢胞癌と扁平上皮癌の未治療生検組織を用いて、EMTおよびBrachyury発現と臨床的背景因子との関連、Brachyury発現とEMTの関連について検討した。 1.腺様嚢胞癌におけるBrachyury発現とEMTの関与 腺様嚢胞癌(AdCC)21例の未治療生検組織におけるBrachyury、E-cadherin、Vimentinの発現様式を免疫組織化学的に検索した。それぞれのタンパク質の陽性率はBrachyury:100%(21/21例)、E-cadherin:90.5%(19/21例)、Vimentin:90.5%(19/21例)と症例の分布に偏りがあったため、VimentinおよびBrachyury発現と臨床的背景因子との関連、Brachyury発現とEMTとの関連は検討できなかった。また、E-cadherin発現と臨床的背景因子との関連も認められなかった。患者の10年生存率および無病生存率についてKaplan-Meier法にて検討を行ったところ、Vimentin発現とは相関が認められなかったが、E-cadherin発現およびEMTと生存率に相関が認められた(p<0.001,p=0.001)。Brachyury発現には陰性症例がなく相関の検討が出来なかった。 2.扁平上皮癌におけるBrachyury発現とEMTの関与 扁平上皮癌(SCC)152例の未治療生検組織におけるBrachyury、E-cadherin、Vimentinの発現様式を免疫組織化学的に検索した。それぞれのタンパク質の陽性率はBrachyury:71.1%(108/152例)、E-cadherin:68.4%(104/152例)Vimentin:18.4%(28/152例)であった。臨床的背景因子のうちE-cadherin発現と関連を認めたものは、リンパ節転移、遠隔転移、腫瘍の分化度、腫瘍の浸潤様式(いずれもp<0.05)であり、Vimentin発現はリンパ節転移、遠隔転移、腫瘍の浸潤様式(いずれもp<0.05)と関連が認められた。Brachyury発現と関連を認めたものは、腫瘍の大きさ(T分類)、リンパ節転移、腫瘍の分化度、腫瘍の浸潤様式(いずれもp<0.05)であった。E-cadherinの発現低下とVimentinの発現をEMTと定義し、Brachyury発現とEMTの関連を検討したところ、Brachyury発現様式とVimentinの発現およびEMTに関連が認められた(p=0.002,p=0.035)。検索したBrachyury、E-cadherin、Vimentinの分子のうちどれが最もリンパ節転移、遠隔転移と相関するかロジスティック回帰分析を用いて検索したところ、単変量解析において、リンパ節転移はすべての分子と相関し、特にBrachyury発現(p=0.001, オッズ比4.390)と最も強く相関していた。遠隔転移はBrachyury発現との相関は認められず、E-cadherin発現(p=0.001,オッズ比0.113)と最も強く相関した。5年生存率、無病生存率についてKaplan-Meier法にて検討を行ったところ、Brachyury、E-cadherin、Vimentinの発現はすべて強い相関が認められた。AdCCは症例数が尐なく統計学的な解析が困難であったが、SCCと比較したBrachyury陽性率の高さはAdCCの高転移性を示す可能性があると考えられる。以上より、口腔癌におけるBrachyury発現とEMTの関与が示され、口腔癌特にSCCの予後因子として臨床応用が可能であると考えられた。続きを見る
目次 要旨 緒言 材料と方法 考察 総括 謝辞 引用文献

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登録日 2013.07.10
更新日 2023.11.21

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