<紀要論文>
IASBの概念フレームワークにおける会計目的について

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概要 国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、以下、「IASB」という) が作成・公表する国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下、「IFRS」という) は、細則主義ではなく、原則主義を採用しているので、その判断基準として個別の会計基準を設定するための基準(すなわちメタ基準...)として概念フレームワーク(以下、「概念的枠組み」という) が重要性を帯びてくる。すなわち、どのような概念的枠組みが作成されるかで、どのような会計基準が設定され、それゆえ、それに基づいた実務が行われるかを間接的に決定すると同時に、各会計基準の判断においても概念的枠組みが参照されることとなるからである。ただし、概念的枠組み自体は、IFRSではなく、それゆえ、特定の測定や開示の問題についての基準を直接的に規定するものではなく、また、概念的枠組みのいずれも特定のIFRSに優先適用されるものでもない(IASB[2010c]p.6)。この概念的枠組みは、一般に資金の調達や運用を目的とする証券・金融市場に参加する市場参加者(特に投資家) を前提として、目的や基礎概念を予め設定し、それに基づいて規範的なアプローチ(normative approach)によるに演繹法(deductive)よって、整合性のとれた会計の基礎概念(fundamental concepts)の体系を明文化している。それは対象志向的な純粋理論ではなく、一種の問題処理装置としての性質を具えている。しかも、これは意思決定有用性アプローチ(decision useful approach)に立脚し、財務報告の目的、財務情報の質的特性、財務諸表の構成要素、財務諸表における認識と測定という論理構成を採用している(津守[2005] 8頁)。この財務会計の概念的枠組みについて、IASBは米国の財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board、以下、「FASB」という)の間で、共同プロジェクトを2005年1月に立ち上げ(山田[2007]104頁)、現行の「財務諸表の作成表示に関するフレームワーク」(IASC[1989])に代わる新しい概念的枠組みを開発中である。このプロジェクトは、表1のように、八つのフェーズに分けて検討が行われており、現在(2012年1月1日)までにフェーズA‒Dの四つのものを具体的に検討してきている。そして、このうち財務報告の目的及び財務報告情報の質的特性については、表2のように、2006年7月に討議資料「改善された財務報告に関する概念フレームワークについての予備的見解財務報告の目的及び意思決定に有用な財務報告情報の質的特性」(IASB[2006]以下、「予備的見解」という)が公表された。そして、これに対して179通のコメント・レターを受取った(IASB[2010c]par.BC1.3)。その後、2008年5月に公開草案「財務報告の概念フレームワーク:財務報告の目的及び意思決定に有用な財務報告情報の質的特性」(IASB[2008]、以下、「公開草案」という)を公開し、321通のコメント・レターを受取った(IASB[2010]p.4)。さらに、2010年9月に「財務報告に関する概念フレームワーク2010」(IASB[2010c]、以下、「新概念的枠組み」ともいう)を公表した。これは、現行の概念的枠組みのうち財務報告の目的及び財務報告情報の質的特性の部分を差し替えるものである。これにより一連の概念的枠組みの改訂作業のうちフェーズAが終了したことになる。このような状況の下において、本稿では、文献研究を通して、IASBにより開発されたIFRSの概念的枠組みの財務報告の目的の到達点と問題点を、特に会計目的として意思決定のための情報提供目的だけでよいのかに関して利害調整等の観点、財務報告の主たる利用者の観点及び企業評価の観点等から検討することを目的としている。このために、本論文の構成としては、第1節では会計目的について再検討を行うとともに、第2節ではIFRSの新概念的枠組みの報告目的の特徴を整理することにより、その到達点を明らかにし、第3節ではその問題点を検討していくこととする。そして、本稿のユニークさは、文献研究を通して、会計目的を再検討することにより、IFRS概念的枠組みの財務報告の目的の到達点と問題点を検討している点である。続きを見る

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登録日 2012.05.19
更新日 2022.02.10

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