注記 |
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1) 天草西海岸においてトビウオ類の漁業生物学的調査を行い, トビウオ類13種を認めたが, 漁業の対象となつているものはハマトビウオ属のホソトビ・アリアケトビウオ・ツクシトビウオで, そのうちホソトビが大部分を占めるが, これら3種の生態・生活史を明らかにした. 2) これら3種のうちツクシトビウオが最も大形で, ホソトビ・アリアケトビウオと小形になるが, これらは外観Lは極めて類似する. しかし脊椎骨(ツクシトビウオ:47~49, ホソトビ:45~46, アリァケトビウオ:43~44)その他で区別出来る. 3) 天草西海岸には, ホソトビ。ツクシトビウオは5月上旬より8月上旬, アリアケトビウオは6月上旬より9月下旬に産卵のため来游するが, 雌魚に比して雄魚が多く, 雌魚の体長は雄魚に比してやや大きい. 4) 浮刺網による漁獲試験の結果では, 夜間における活動は日没とともに活発となり, 午後9時から11時の間に最も盛んで, これより日の出まで漸次減少する. 又游泳方向と潮流との関係は, 潮流の方向から網にささるものが多い. 5) 産卵の盛期は, ホソトビ・ツクシトビウオが5~7月, アリアケトビウオは7~8月で, 人工受精による卵発生の観察及び孵化仔魚の飼育を行つた. 孵化に要する時間は, ホソトビ・ツクシトビウオが約2週間(水温20~22℃), アリアケトビウオが5~7日(水温26~28℃)であつた. 6) 卵は何れも沈性纏絡卵で球形をなし, 約50本の長い纏絡糸を有する. 卵径はツクシトビウオが平均1.86mmで最も大きく, アリアクートビウオが1.66mm, ホソトビが1.47mmで最も小さい. 産卵は1回で, 産卵数はツクシトビウオが平均9,580, ホソトビが5,890, アリアケトビウオは5,300である. 7) 仔稚魚には体色・斑紋等に3種の差が認められ,ツクシトビウオには下顎に1対の, ホソトビには1個のひげを生ずるが, アリアケトビウオにはひげを生じない. 何れも群をなし, 流れ藻及び集魚灯下に集まる習性が見られ, 約1ヶ月で空中に飛びあがる習性を生ずる. 8) 3種ともその成長は速やかで, 九州西岸の水温の下降とともにその年の発生群は適温を追つて南下し, 満1年で成魚となり, 翌年産卵のため来遊する. 又漁獲の対象が満1年魚で, 前年の発生及び成長量が次年の来遊量に直接影響して, 漁獲に大きい変動を与えると思われる.
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