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概要 |
リポ多糖(Lipopolysaccharide;LPS)はグラム陰性菌の外膜に存在する、疎水性のリピドA 部と親水性の多糖部分からなる両親媒性の物質である。LPS はエンドトキシンとしての活性を有し、ヒトや動物など他の生物の細胞に作用すると多彩な病原性示す。しかしLPS の構造や病原性は菌種間また株間によって違いがあり、それらがいまだ解明されていない菌も多い。個々の菌および株のLPS の構造や活性...を調べるためには、それらのLPS を精製することが重要である。現在までLPS を精製する方法は数多く報告されているが、それらはコンタミネーションが多い、回収率が低い、時間がかかる、特別な器械が必要などの欠点がある。第1章では、非イオン性の界面活性剤であるTriton X-114 を用いた二相分離法を応用して簡便で迅速にLPS を精製する方法を検討した。二相分離法と は疎水性の違いで対象を分離する方法である。LPS に対して二相分離法を応用した報告には、Aida らの報告がある。彼らは、LPS とタンパク質の混合溶液に対して二相分離法を行ったところ、LPS は界面活性剤相へタンパク質は水相へそれぞれ分離することを明らかにして、二相分離法がタンパク質溶液からLPSを除去する方法として応用できると結論付けている。しかし、界面活性剤相に LPS 以外の物質(核酸やタンパク質)が含まれるかどうかの詳しい記述はなかった。そこで本研究では、界面活性剤相に効率よくLPS が回収できかつ核酸やタンパク質などの不純物は界面活性剤相に含まれない条件を吟味し、他の精製法と比較して二相分離法がLPS の精製に適用できるかどうか検討した。その結果、LPS を界面活性剤相に回収するためには、二相分離法前に抽出LPS を溶解する水溶液のpH 値が5.5 以下であることや二価陽イオンが存在しないことが重要であることが判明した。水溶液のpH 値が高い場合や高濃度の二価陽イオンが存在する場合は水相からもLPS が検出された。さらに他のLPS 精製法とのLPSの回収率や精製率の比較では、二相分離法によるLPS の精製は既存のLPS 精製法と同等の能力を示し、簡便で迅速な方法として有用であることが示された。第2章では二相分離法を用いることで高次構造が異なる LPS を分離できる可能性について検討した。LPS の表面はリン酸基によって負に荷電して、二価陽 イオンとイオン結合する。このような二価陽イオンと結合したLPS は高次構造が強化されて界面活性剤による解離に対して抵抗を示す。さらに二価陽イオンが結合したLPS はそうでないLPS とは病原性が異なるという報告がある。LPSに二価陽イオンが結合できるかどうかはリン酸基の構造に影響するため、リン酸基が修飾されている場合は二価陽イオンと結合しにくく、その結果LPS 自体の病原性が変化する可能性がある第1章では特定濃度の二価陽イオン存在下ではLPS が水相に存在した。これは水相のLPS が界面活性剤による解離に抵抗性を示したためと考えられ、構造的に二価陽イオンで強化されていると推察される。このことから二価陽イオンが存在する条件で二相分離法を行うと、二価陽イオンで強化されたLPS とそうでないLPS を分離することが可能であるという仮説を立てた。この仮説に基づいて歯周病原細菌であるAggrgatibacter actinomycetemcomitans (A. actinomycetemcomitans)に対して二相分離法を行い、二価陽イオン存在下でTriton X-114 に抵抗を示す水相のLPS が存在するのか、さらに水相のLPS のA. actinomycetemcomitans の株間での分布を培養時間毎に調べた。その結果、すべての株で両相のLPS が検出され、水相LPS の検出には試適 濃度の二価陽イオンが必要であることが判明し、さらに株間で培養初期での検出の有無に違いがありそれは血清型依存的であった。この結果A. actinomycetemcomitans が構造の異なる二種類のLPS を産生している可能性が示唆され、本研究は二相分離法が異なる高次構造をもつLPS を分離する方法となることを証明する研究の基礎となりうる可能性が示された。続きを見る
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