<博士論文>
Porphyromonas gingivalisとAggregatibacter actinomycetemcomitansの混合感染における相互作用に関する研究

作成者
論文調査委員
本文言語
学位授与年度
学位授与大学
学位
学位種別
出版タイプ
アクセス権
JaLC DOI
概要 歯周病は歯周組織の破壊を主たる病態としており、歯肉縁下プラーク中の歯周病原細菌に起因する感染症である(1、2)。プラークはその70% 以上が細菌の塊で、その中では数百種類を超える細菌がバイオフィルムを形成し存在している。歯周病は歯周病原細菌が歯周組織局所に付着し、バイオフィルムを形成して成長することで、発症し進行していく(3)。菌体外多糖からなるグリコカリックスによって保護されたバイオフィルム中の...細菌は、抗菌物質や貪食細胞、免疫グロブリンに対して抵抗性を示して局所に長期に留まり、感染の慢性化、難治化を招くと考えられている(4、5)。近年では単独バイオフィルムに関する研究だけでなく、複数菌種と形成する複合バイオフィルムに関する研究も注目され始めたところである。歯周病の原因菌として、これまでに十数種類の好気性細菌(Actinomyces viscosus、 Actinomyces naeslundii など)や嫌気性細菌(Prevotella intermedia、 Aggregatibacter actinomycetemcomitans、 Porphyromonas gingivalis、 Treponema denticola、 Fusobacterium necrophorum など)が発症に深く関わっていると言われている(6)。なかでもPorphyromonas gingivalis は歯周炎の主要な原因菌として知られており、生理学的特性や病原因子などについて数多くの研究が報告されている(7‐11)。グラム陰性嫌気性細菌であるP. gingivalis は、細胞表面に線毛やリポ多糖(LPS)を有し、菌体表面や菌体外に強力なタンパク分解酵素を産生する特異な細菌であり、中でも線毛とジンジパインは本菌の付着やバイオフィルム形成において重要な役割を果たしていることが報告されている(12‐16)。P. gingivalis は、線毛の主要構成タンパクの一つであるフィンブリリン(FimA)の構成遺伝子fimA の塩基配列の違いによりI~V 型、およびIb 型の6 型に分類されており、fimA 遺伝子型と病原性との関連について多くの研究がされている(17、18)。一方、ジンジパインはP. gingivalis が産生する総プロテアーゼ活性の少なくとも85% を占めるシステインプロテアーゼであり(19)、そのペプチド結合切断特異性から、アルギニン残基のC 末端側を特異的に切断するArg-gingipain(Rgp)とリジン残基のC 末端側を特異的に切断するLys-gingipain(Kgp)の2つの酵素群に分類される(20、21)。ジンジパインはその酵素活性による歯周組織の破壊に関与するだけでなく、赤血球凝集能や線毛形成等にも関与し、上皮細胞への付着や他の細菌との共凝集にも関与するとの報告もある(22、23)。本菌のバイオフィルム形成因子に関しては、これまでに線毛やジンジパインが関連しているといういくつかの報告があるものの、未だ意見が分かれているところである(12‐16)。また、他の菌種との複合バイオフィルム形成におけるP. gingivalis の相互作用や関連因子についてはほとんど未解明の状態である。Aggregatibacter actinomycetemcomitans も重要な歯周病原細菌であり、これまでに多くの研究報告が得られている(24)。A. actinomycetemcomitans は外膜構成成分であるLPS のO 抗原多糖の構造の違いによりa からf の6 つの血清型に 分類されており、この血清型の違いが病原性の違いに関わると示唆されている(25)。A. actinomycetemcomitans もP. gingivalis と同様に、in vitro の実験において非生体面に単独のバイオフィルムを形成することがこれまでに多く報告されているが、複合バイオフィルム形成に関する報告はほとんど得られていない(26、27)。そこで本研究では、まず始めにP. gingivalis の単独バイオフィルム形成能について、特に線毛とジンジパインの関与について検討した。更に、P. gingivalis とA. actinomycetemcomitans との共培養下での複合バイオフィルム形成において、そのバイオフィルムの構造とジンジパインの役割について検討した(第一章)。バイオフィルム形成過程においては、表面への浮遊菌の付着から始まり、成熟すると菌同士がシグナルを出して増殖をコントロールしたり、チャネルを介して栄養源を取り込んだり、他菌の代謝産物などを利用することが知られている(4)。そこで本研究では、A. actinomycetemcomitans とP. gingivalis との混合感染において複合バイオフィルムを形成する際の、P. gingivalis の増殖への影響について検討するため、A. actinomycetemcomitans のP. gingivalis 増殖促進への関与について調べた(第二章)。続きを見る

本文ファイル

pdf dent_499 pdf 1.02 MB 8,024 本文
pdf dent_499(toc) pdf 103 KB 253 目次等

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
登録日 2013.07.10
更新日 2023.11.21

この資料を見た人はこんな資料も見ています