<博士論文>
見えの主観評価に基づく織物のコンピュータグラフィックスの研究

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論文調査委員
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概要 現在、織布のコンピュ-タグラフィックス(CG)の研究が盛んに行われている。それらの研究の多くでは、織布の材質や見え方をCGで表現するために、糸の光の反射特徴や織布の立体構造による織布表面からの反射の異方性に対応する双方向反射分布関数(BRDF: Bidierectional Reflectance Distribution Function) を計測したり導出して、織布の反射光を忠実にCGとして再...現する方法が研究されている。これまでの研究の多くでは織物のフォトリアリスティックCGの描画方法が提案されているが、織布よりも織目が粗く、一見して織目が見えるような織物についての描画方法に関する研究はほとんどない。こういった織物のCG画像の描画方法が確立すれば、単に織物のCG画像を製作するだけでなく、実際に織物を織る前に、前もって出来上がりを画像で確認することができ、織物の製作に有効な補助手段となる。実験1では、織物をで本物らしくCGで表現するために、照明方向、観察方向や照明強度などの異なる場合のCGによる織物画像を作製し、さまざまな観察条件において実際の織物サンプル、織物の写真画像、及びCG画像を観察し、サンプル織物の見えを10点として写真およびCG画像の本物らしさを評価した。CG画像製作における反射モデルとしては、Blinn モデルを用いた。評価した結果、CG画像は写真よりも評価が低かったが、織り方においては、CG織物画像の朱子織が顕著に評価が低かった。これは、他の織り方より、組織が粗く、組織がよく見えるためであると考えられ、CG織物画像では糸の堅さが感じられたという報告と一致している。また、照明方向が0 度から90 度になると、写真画像とCG織物画像の評価ポイントの差が大きくなった。これは、CG織物画像が写真画像より暗く、結果として、明るさの差が大きくなったためである。色には、特に傾向がなかった。実験2では、実験1でCG画像の方が糸の堅さが感じられたと報告があったため、それぞれのサンプルにコントラストや明るさを与え、色の見え、質感、明るさなど本物らしさについて主観評価により測定し比較した。その結果、CG画像は写真よりも評価が低かったが、CG画像では、コントラスト140%をした画像よりも明るさを140%にした画像のほうが評価が高かった。コントラストにおいては、特に傾向がなかった。写真画像の場合は、いずれの織り方によっても、ほとんど変わらないが、明るさを増加させた時、照明角度に比例して評価の順序が上がった。この現象は、撮影するとき、ピントが少しずれるために起ったと考えられる。明るさやコントラストを変化させても、本物らしい表現は不十分であった。これは、実験2で得られた以上の結果から、Blinn モデルのみでは、織物の見えが再現できないことが示唆されている。また、実験方法においても、明るさとコントラストのみで順序を決める方法は、織物の具体的な印象を評価するためには不十分である。よって、より織物に適合した反射モデルと本物らしさを具体的に表す印象を評価できる実験方法の検討が必要と考えられ実験3を行っ た。実験3では表面反射特性を考慮した描画モデルとしてOren-Nayar モデルとOren-Nayar-Blinn モデルの2つのモデルを採用した。描画モデルの描画パラメータを変えて描画されたCG織物画像の見えを形容詞対を用いて被験者に主観評価をしてもらい、実際の織物に対する見えの主観評価と比較した。評価した結果、Oren-Nayar-Blinn モデルと Oren-Nayar モデルのいずれにおいても、CG織物画像において、Diffuse の値が大きいほど、またRoughness の値が小さいほどCG織物画像の評価がサンプル織物の評価と最も近くなることがわかった。さらに、描画パラメータのうちでも、Diffuse の値が主観評価に大きく寄与しており、Diffuse の値が大きいほど、見えの印象が明るく、柔らかく、滑らかになることがわかった。本研究において用いたサンプル織物、ソフトウェアーや実験装置などに依存している。特に、実験3では、木綿の白糸で実際に織られた白色のサンプル織物を比較対象として、CG織物画像の見えの主観評価を行った。しかし、織物の種類は豊富で、糸の材質や撚りの強さ、縦糸や橫糸の色、さらに織りの組織の違いによって、サンプル織物やCG織物画像の見えの評価もさまざまに異なると予想される。多くの種類の織物について、CG織物画像を描画するための共通した方法と個々の種類に特異な描画方法を明らかにしていくことが今後の課題である。
The CG fabric image was made by using current CG technology, and the method of rendering the CG image to give a similar impression to the actual fabric was examined. In experiment 1, when the illumination direction and lighting strength was different, the photographic image of the real fabric and the CG image of the fabric were compared and evaluated in terms of the actual fabrics. As a result, although there was little difference in the colors of the thread by the illumination direction, the evaluations of the CG images were lower than those of the photographic images at any illumination direction. Since the subjects reported in experiment 1 that the brightness and the contrast of the photographic imagery and the CG image appeared low compared with the actual fabrics, in experiment 2, image brightness and contrast were increased by 40% and evaluations and comparisons were done. As a result, there was almost no difference in the colors of the thread, unlike experiment 1. The evaluation for both the CG image and the photographic image was higher for 140% brightness than those for 140% contrast. The results show that the brightness of the image is important in helping to make the fabric image look genuine. In experiment 3, using the computer graphics images of fabric that were produced with the Oren-Nayar-Blinn model and the Oren-Nayar model in computer graphics software, we examined the rendering parameters ("Specular", "Diffuse", and "Roughness") of images which give similar subjective impressions to the actual fabric. We also considered the influence of the parameter values on the subjective impression of the images. The result showed that, for both the Oren-Nayar-Blinn and the Oren-Nayar models, the greater the value of the “Diffuse” parameter, the closer the CG fabric image was adjudged to be the same as that of the actual fabric. It was also shown that the value of the parameter "Diffuse" greatly contributed to the appearance of the fabric: as the value increased, the appearance of fabric images became brighter, softer, and smoother.
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目次 序章 1.研究の目的および方法 2.織物の特徴と反射特性 第1章 フォトリアリスティクレンダリングの概念と反射モデル 1.フォトリアリスティクレンダリングとは 1.1光のエネルギーと放射束 1.2双方向反射分布関数(BRDF) 1.3ローカルイルミネーションとグローバルイルミネーション 第2章 これまでの先行研究と問題点 2.1Westin(1992) 2.2Ashikhmin(2000)ら 2.3Yang(2003)ら 2.4武田(2006)ら 第3章 照明方向、観察方向などの異なる場合のCG織物画像における本物らしさの評価 3.1実験装置および手続き 3.2刺激 3.3被験者 3.4描画モデル 3.5結果およびまとめ 第4章 質感、明るさに分けて本物らしさの評価 4.1実験装置および手続き 4.2刺激 4.3被験者 4.4結果およびまとめ 第5章 描画パラメータと織物の見えの印象の関係について分析 5.1実験装置 5.2サンプル製作 5.3描画モデル 5.4描画モデルのパラメータ 5.5主観評価のための形容詞対 5.6実験の手続き 5.7被験者 5.8結果と考察 5.9もとめ 第6章 研究の成果と今後の課題 6.1研究の成果 6.2今後の課題 参考文献 付録

本文ファイル

pdf 12_acknowledgement pdf 311 KB 172 謝辞
pdf 11_appendix pdf 699 KB 255 付録
pdf 10_references pdf 396 KB 330 引用文献
pdf 09_chapter6 pdf 319 KB 126 第6章
pdf 08_chapter5 pdf 2.42 MB 238 第5章
pdf 07_chapter4 pdf 1.03 MB 257 第4章
pdf 06_chapter3 pdf 724 KB 483 第3章
pdf 05_chapter2 pdf 750 KB 1,027 第2章
pdf 04_chapter1 pdf 681 KB 3,960 第1章
pdf 03_preface pdf 400 KB 606 序章
pdf 02_contents pdf 318 KB 129 目次
pdf 01_cover pdf 310 KB 147 表紙

詳細

レコードID
査読有無
キーワード
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
登録日 2013.07.10
更新日 2023.07.31

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