<博士論文>
口蓋裂における言語障害の改善に影響を及ぼす因子に関する研究

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論文調査委員
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概要 言語障害の改善が困難な症例の言語療法においては,それぞれの病態を把握して問題点を明らかにすることが重要である.そこで本研究では,言語障害の改善に関与する因子を明らかにするために,鼻咽腔閉鎖機能不全が長期残存し成人期に口蓋裂二次手術を行った症例と,鼻咽腔閉鎖機能獲得後も異常構音が残存した症例において,言語評価を行い問題点を検討した.以下に本研究で得られた結果をまとめた. 1. 咽頭弁形成術を施行した...成人症例の言語評価 鼻咽腔閉鎖機能不全が長期残存し,咽頭弁形成術を成人期に施行した口蓋裂患者5 例を対象に,鼻咽腔閉鎖機能,異常構音,および会話明瞭度について評価を行った.鼻咽腔閉鎖機能は全例改善していたが,鼻咽腔閉鎖機能の総合評価で良好となったのは2 例で,3 例が軽度不全であった.術前に異常構音を認めた4 例は,術後も異常構音が残存していた.異常構音は鼻咽腔閉鎖機能の改善に伴い,単音,単語レベルまで改善した症例もあったが,自発話では異常構音がみられ,会話明瞭度では「よくわかる」に至った症例はなかった.異常構音を認めた4 例は自己の異常構音を自覚できず,自発的修正を行うことができなかった.言語障害が改善しない原因として長期間鼻咽腔閉鎖機能不全の状態が続いていたことで,口蓋筋の活動の賦活化,鼻咽腔閉鎖習慣の定着化,および正常構音操作の習慣化が困難になっていると考えられた.また,自分の産出する異常構音を自覚できていないことも,言語障害の改善を妨げる原因のひとつと考えられた. 2. 異常構音を有する口蓋裂患者の語音弁別能に関する検討 自分の産出する異常構音を自覚できていないことが,異常構音の定着に関与しているのではないかと考えられるため,異常構音を有する口蓋裂患者の語音弁別能の評価を行った.語音弁別能は外的音源からの音を弁別する外的語音弁別能と,患者自身が産出している音を弁別する内的語音弁別能に分けて評価した.1) 正常構音に対する外的語音弁別能と異常構音に対する内的語音弁別能の評価 異常構音を有する口蓋裂患者8 例(8~60 歳, 平均28.6 歳)を対象に,正常構音サンプル音に対する語音弁別能と患者自身が産出する異常構音に対する語音弁別能を評価した.正常構音サンプル音に対する弁別は可能であったが,患者自身が産出する異常構音に対しては弁別できなかった. 2) 異常構音に対する外的語音弁別能の評価 異常構音を有する口蓋裂患者8 例(7~13 歳, 平均10.1 歳)を対象に,異常構音サンプルに対する語音弁別能と,患者自身の産出する異常構音を録音して聴いた場合の語音弁別能について評価した.正常構音の口蓋裂患者5 例,非口蓋裂患者3 例を対照群とした.異常構音を有する口蓋裂患者と対照群との間で語音弁別能に大きな違いは認めなかった.しかし,異常構音の種類によって語音弁別難度に差を認め,声門破裂音は弁別が容易で,側音化構音は弁別が困難であった.患者自身の声を録音しサンプルとして聴かせた場合の外的語音弁別能は低かった.以上より,患者自身が自分の産出する異常構音に対しては内的語音弁別能と外的語音弁別能ともに低いため,自分の異常構音を自覚できないことが,異常構音の改善を困難としている原因のひとつと考えられた.続きを見る
目次 Ⅰ.要旨 Ⅱ.はじめに Ⅲ.咽頭弁形成術を施行した成人症例の言語成績 Ⅳ.異常構音を有する口蓋裂患者の語音弁別能に関する検討 Ⅴ.総括 Ⅵ.謝辞 Ⅶ.参考文献 Ⅷ.質疑応答

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登録日 2013.07.09
更新日 2023.11.21