<博士論文>
支配筋摘出術による三叉神経運動枝除神経モデルの創出

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概要 緒言:近年、血管吻合を用いた再建術を行うことにより口腔外科領域における進行癌の治療が可能になったが、いまだ長期的な機能的再建(咀嚼、嚥下、構音)は困難である。その理由として、移植した筋皮弁に適切な神経支配が再生されないことが挙げられる。これを克服するためには末梢レベルにおける軸索の再生を図るとともに、中枢レベルにおける運動神経細胞死を防ぐことが必要である。そこで本研究では第一に、成体ラット三叉神経...運動枝除神経モデルを作製し、免疫組織化学染色法を用いて、除神経後の三叉神経運動核の病理学的変化を解析し、三叉神経運動核の変性過程および保護応答について検討した。また、生体の脳内への遺伝子導入や薬剤送達のためにさまざまな方法が開発されているが、これらの手法には、標的細胞に特異的な送達が困難であることや、侵襲度の高い外科手術を要するという短所があり、新たな手法の開発が望まれている。近年、ミクログリアを血中投与すると血液脳関門を破壊せずに脳特異的に実質内に到達することが報告されており、さまざまな脳疾患の治療につながる可能性が示されている。そのため、本研究では第二に、新しい細胞治療の試みとしてミクログリアの細胞株を樹立し、その細胞生物学的性状について検討した。方法と結果: 雌成体ラット(体重:200 g-400 g)の左咬筋および側頭筋を摘出後、灌流固定し、三叉神経運動核の細胞病理学的変化を経時的に検索した。術後3日目で三叉神経運動核の神経細胞においてオートファジーのマーカーであるRab24 の発現亢進を認め、神経細胞周囲にはミクログリアの集簇を強く認めた。術後4週目をピークにアストロサイトの反応を認め、神経細胞におけるheatshock protein 27(HSP27)の発現が亢進していた。術後8 週目で傷害側三叉神経運動核の萎縮を認めたが、神経細胞にcentral chromatolysis やアポトーシスは観察されず、細胞死は明らかでなかった。同時期にsynaptophysin に対する免疫染色を施行したところ、傷害側三叉神経運動核に発現低下を認めたことから樹状突起およびシナプスに変性が起きていると考えられた。次に、ミクログリア細胞株を樹立するため、生後3 日のラットの脳室下帯から初代混合培養細胞を準備し、SV40 large T 抗原遺伝子を導入して不死化させた。増殖した細胞を剥離・分散し、Aclar film を浸漬してこれに付着した細胞を分離し、培養を継続した。さらに生体内での観察のために、これらの細胞にgreenfluorescent protein (GFP)およびDsRed 遺伝子を導入し、高発現細胞をクローニングすることによって蛍光標識を行った。細胞の純度を検定するために、形態学的および免疫細胞化学的に検討した。分離した細胞はほぼ均一な形態を示し、円形ないし多極性の細胞質内に多数の空胞がみられるとともに、よく発達したラッフリングメンブレンを有し、ミクログリアの形態的な特徴を示した。免疫組織学的にはほぼ全ての細胞がSV40large T 抗原およびミクログリアのマーカーであるionized calcium-binding adaptermolecule-1(Iba-1)、CD11b、MHC class I、CD45 に陽性であったが、CD68 およびアストロサイトのマーカーであるglial fibrillary acidic protein(GFAP)とglutamate aspartate transporter (GLAST)には陰性であった。考察と展望:本研究で得られた結果より、本実験モデルは手術操作による末梢7神経損傷の中枢レベルへの影響の解析に有用であり、これまでほとんど知見のない脳幹脳神経核の潜在的な再生能についての研究の材料として、将来の再生医療の開発に寄与しうると考えられた。また、我々が樹立したラットミクログリア細胞株は、脳病変部位に特定遺伝子を限局して発現させるデリバリーシステムの開発、および多様な脳疾患の治療の開発に寄与し得る可能性がある。今後は、ラット三叉神経運動枝除神経モデルを含む、さまざまな脳疾患モデル動物への適用を検討していく予定である。続きを見る

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授与日(学位/助成/特許)
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登録日 2013.07.09
更新日 2023.11.21

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