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福岡都市圏近代文学文化年表 ; 昭和7年
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Created Date | 2013.08.21 |
Modified Date | 2021.12.14 |
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花田, 俊典
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スカラベの会
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文学作品:1月 久保猪之吉「洋笠」(「福岡日日新聞」4日)2月 福田秀実「如何にして短歌革新を実践するか(連載)」(「仙人掌」)久保より江「電話」(「福岡日日新聞」17日)『春盤(第八年刊歌集)』(九大医学部短歌会)3月 原田種夫「絶望の賦」(「福岡日日新聞」7日)4月 加藤介春「夜の挨拶」「二つの体」・山田牙城「鉄(くろがね)の意志」他・原田種夫「宣言」他(「先発隊」6)5月 原田種夫「自戒の譜」(「福岡日日新聞」30日)久保猪之吉句集『春潮集』(京鹿子発行所)松田常憲『三径集』(水甕社)6月 水足蘭秋「野村望東尼」(「福岡日日新聞」8日―8月31日)7月 横山白虹「芝不器男遺句評釈(連載)」(「天の川」)深山影二(砥上栄二郎)民謡集『博多山笠』(歌謡サロン社)8月 原田種夫「逃亡の譜」(「福岡日日新聞」8日)『九州詩集 1932年版』(全九州詩人協会)9月 十一谷義三郎(青柳喜兵衛画)「神風連」(「福岡日日新聞」夕刊、1日―9年3月5日)久保より江「思ひ出の窓」(「福岡日日新聞」18日)10月 林逸馬「国際日本の現状」(「福岡日日新聞」15日―18日)11月 篠原雲彦(鳳作)「銀漢亭訪問記」(「天の川」)吉岡禅寺洞『銀漢』(天の川発行所)高崎烏城『身辺歳時記』(天の川発行所)小方博正編『福岡俳人名鑑』(万灯社)12月 夢野久作『押絵の奇蹟』(春陽堂)
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文学的事跡:1月 種田山頭火が隣船寺(宗像市神湊)の田代宗俊和尚を訪問し(7日)、滞在中に芦屋町方面へ行乞に出かけて「鉄鉢の中へも霰」を作句。種田山頭火が志免から姪浜に至り(12日)、翌日東油山観世音寺に拝登し唐津・平戸方面へ。3月 九州帝大学友会文芸部、「九大文化」創刊(5日)。第3回九州婦人俳句大会、福岡学士倶楽部で開催、杉田久女も出席(20日)。檀一雄が福岡高等学校文乙を卒業し、翌月東京帝大経済学部に入学。桑原廉靖が福岡中学を卒業し、翌月福岡高等学校理乙に進学(*11年九大医学部卒)。宮崎宣久が福岡中学を卒業し、翌月福岡高等学校文乙に進学(*11年3月卒)。北川晃二が馬出尋常小学校を卒業し、翌月県立中学修猷館に入学(*12年西南学院中等部に転校)。長谷川町子が春吉尋常小学校を卒業し、翌月県立福岡高等女学校に入学(*2年生のとき転校)。4月 後藤明生(本名は明正)、朝鮮咸鏡南道永興邑で出生(4日)。梅崎春生が熊本の第五高等学校に入学。眞鍋呉夫が福岡市立福岡商業学校に入学。小島直記が福岡県立八女中学に入学。種田山頭火が行乞の旅で、生の松原から福岡市に到着【★401】(15日*18日宗像方面へ)。方面から5月 大隈言道歌碑建立、佐佐木信綱も出席。7月 新聞4社連盟懸賞募集1等小説「群盲」連載開始(8日)。原田種夫・山田牙城・持田勝穂・福田秀実・長井盛之らが「福岡詩人クラブ(福岡詩人協会)」を結成し、会長に浦瀬白雨。8月 篠原鳳作が京都に学事視察の帰途来福し、吉岡禅寺洞宅を訪問【★402】。9月 福岡詩人協会主催の島田龍之介(テノール)独唱会、仏教青年会館で開催。10月 福岡詩人協会の機関誌「福岡詩人」【★403】創刊。11月 田丸高夫【★404】らが詩誌「小劇場」【★405】創刊(*11年6月まで全10冊)。11月 牛島春子が久留米から福岡市に移住し、箱崎の学生下宿で日本共産党関係のビラや文書を作成、まもなく福岡市西公園東の伊崎浦の下宿屋に転居。この年、山下一海【★406】、福岡市で出生。福岡貯金支局内に支局長の井関博行(俳号「夏堂」)を中心に俳句部結成(*幹事は局次長の「甘蔗」)。この年、深山影二(砥上栄次郎)『民謡集 博多山笠』出版記念会、ミカド食堂で開催。
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社会文化事項:1月 日赤福岡支部で臨時第5救護班を結成し(*6年12月)、任地の朝鮮竜山に向けて博多駅出発(6日)。2月 福岡24連隊小河原中尉以下数百名が上海事変で動員下令を受け、博多駅を出発(6日*佐世保港をへて上海着、3月23日凱旋)。「福岡日日新聞」2日付号外・本紙、上海派兵に関する記事のため安寧禁止で発禁(2日*この時期は上海派兵関連記事で全国的に発禁激増)。福岡全協事件【★407】で火野葦平・牛島春子・中村勉ら194名検挙(24日)。上海事変戦死者11人の市葬、須崎裏広場で催行(28日*神仏両式・会葬者2万人)。九州日報社が中島町から天神町に新築移転(28日*5月15日大濠公園で新築落成式)。「松屋呉服店」が洋館3階建の百貨店「松屋デパート」として開店(*『福岡市史』第7巻●4年10月?)。3月 「福岡日日新聞」が「鬼神を泣かしむる肉弾三勇士血戦記」の大見出しで特別号外発行(2日)。博文社が社名を博文館書店と改称し天神町郵便局前に移転(3日)。福岡魚市場㈱設立。福岡高等学校に仏語担当の傭教師アンベール・ヴォークラン【★408】が赴任。NHK福岡、筑前琵琶「噫 肉弾三勇士」を全国放送(16日)。博多織「松居」新築落成、元・不二屋別館の仮店舗から移転(17日*18日から3日間記念大売り出し)。長崎文明堂博多支店、綱場町に開店(30日*12月10日東中洲玉屋前の西村楽器店跡に移転)。4月 東中洲楽天地創立10周年記念祝賀会、博多商工会議所で開催(25日)。喫茶酒場「アザミ」、東中洲千日前に開店(27日)。青柳喜兵衛送別個展、福岡県公会堂で開催(27日―5月1日)。5月 「南座」を「中洲演舞場」と改称(13日)。三松荘一編『趣味乃博多』(福岡協和会)刊行(15日)。「福岡日日新聞」編集局長の菊竹淳(六皷)、紙上で5・15事件の軍部の暴挙を批判し(16日―17日)、久留米第12師団の抗議・威嚇にも屈せず【★409】。6月 重光葵特命全権大使が上海で爆傷し九大附属病院に入院(18日)。満蒙博覧会開催。7月 「サロンチグサ」、東中洲に開店(8日)。東中州に市内一のレストラン喫茶「サニー」開店(15日)。小出満二・三松荘一編『福岡県郷土読本』(東洋書院)刊行(29日)。8月 九軌デパート(商店街)、博多駅前で開業(2日)。団琢磨男爵追悼会(18日)。9月 満洲事変1周年記念会・慰霊祭・満州国承認祝賀会(18日)。10月 玉屋デパート1・2階火災(3日)。博多港湾従業員組合結成(16日)。11月 松本富士雄が森岡熊彦から継承し天神町に「博文館書店」を開業(3日)。福助足袋広告塔上に白襷白鉢の怪人2人(愛国立憲正義団員)が出現し「東邦電力の電気料は高いぞ」と絶叫抗議(30日)。12月 中本たか子が全協(日本労働組合全国協議会)のオルグのため来福【★410】(*翌年2月下旬―3月上旬逮捕、6月22―23日頃市ヶ谷刑務所へ送還)。国威宣揚祈願祭(6日)。時局対策市民大会、大博劇場で開催(20日)。天神町の福岡県庁前に軽食喫茶「フリー(Free)」開店(22日)。日本共産党九州地方委員会を結成し委員長に西田信春【★411】就任(26日)。この年、カトリック福岡教区が泰星中学校創立。青柳喜久代【★412】が上京。吉浦武平が住吉町に新刊書店「吉浦書店」開業。原種雄が下新川端町に古書店「文照堂」開業。福岡市内の新刊書店が組合「協和会」結成、加盟書店は奥村鳩聚堂(市外箱崎町)・大衆書房(呉服町電車通)・中島勉強堂(春吉2番丁中通)・村上書店(吉塚駅前)・金星堂書店(東中洲町)・金文堂支店(中島町)・下沢商店(博多駅売店)・積文館書店(東中洲町)。
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日本・世界事項:1月 日本プロレタリア作家同盟(ナルプ)の機関文芸誌「プロレタリア文学」創刊(*8年10月まで全20冊)。第1次上海事変開始(28日)。2月 廟行鎮で戦死の久留米3工兵、「肉弾三勇士」として顕彰(22日)。3月 満洲国建国宣言(1日)。三井合名会長團琢磨暗殺(5日)。杉田久女主宰の俳誌「花衣」、小倉市で創刊(8日*第5号まで発行)。鹿児島高等商業学校(現・鹿児島経済大学)設立認可(26日)。5月 小倉市で岩下俊作【★413】・劉寒吉【★414】らが詩誌「とらんしつと」創刊(*昭和11年5月終刊)。坂田山心中事件(9日)。チャップリン来日(14日)。5・15事件で犬養毅首相暗殺(15日)。斎藤実(海軍大将)内閣成立(26日)。7月 社会大衆党結成(24日*委員長は安部磯雄、書記長は麻生久)。九州電気軌道㈱が小倉市到津の丘陵地に到津遊園を開園(31日*8年10月1日動物園設置)。10月 リットン調査団が日本政府に報告書を提出(1日)。大日本国防婦人会結成。12月 日本学術振興会設立(28日)。この年、歌謡曲「銀座の柳」「影を慕いて」、映画「天国に結ぶ恋」「生れては見たけれど」。
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Notes |
【★401】種田山頭火が福岡市に到着:「四月十五日 夜来の雨が晴れを残していつた、行程二里、福岡へ予定の通り入つた、出来町、高瀬屋/(略)西公園を見物した。花ざかりで人でいつぱいだ。花と酒と、そして——不景気はどこに、あつた、あつた、それはお茶屋さんの姐さんの顔に、彼女は欠伸してゐる。街を通る、橋を渡る、ビラをまいてゐる、しかし私にはくれない、ビラも貰へない身の上だ、よろしい、よろしい。/酒壺洞君を搾取した、君は今、不幸つゞきである、君に消災妙吉祥。……(略)/四月十六日 薄曇り、市内行乞、宿は同前。/福岡は九州の都である。あらゆる点に於て、——都市的なもの(6字傍点)を感じるのは、九州では福岡だけだ。/(略)/夜は中洲の川丈座へゆく、万歳オンパレードである、何といふバカらしさ、何といふホガらしさ。/昼月に紙鳶(しえん・たこ)をたたかはせてゐる/水たまりがほがらかに子供の影うつす/あたゝかに坊やは箱の中に寝てゐる/——飲んだ、歩いた、歩いた、飲んだ——そして今日が今夜が過ぎてしまつた、たゞそれだけ、生死去来はやつぱり生死去来に御座候、あなかしこ。」(種田山頭火「行乞記」)
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【★402】篠原鳳作が禅寺洞訪問:「●」(「銀漢亭訪問期」、「天の川」昭7・11)篠原鳳作は明治39年1月7日、鹿児島市池之上町の生まれ。本名は国堅。鹿児島県立二中、七高をへて東大政治科卒。昭和3年、「ホトトギス」に投句。6年以降は「天の川」に投句(*8年同人)。俳号は「未踏」・「雲彦」・「鳳作」。6年4月、沖縄県立宮古中学に奉職。9年4月、母校の鹿児島県立二中に転任。10年結婚。11年9月17日急逝。享年30歳。俳誌「傘火」(昭9・10)発表の「海の旅」連作(計5句、「天の川」同月号にも「シーソー」以外の3句発表)が有名。「満天の星に旅ゆくマストあり/船窓に水平線のあらきシーソー/しんしんと肺碧きまで海のたび/幾日はも青うなばらの円心に/甲板と水平線のあらきシーソー」
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【★403】機関誌「福岡詩人」:●ハラタネ文庫 [原文ママ]
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【★404】田丸高夫:明治42年10月5日、福岡県直方町(現・直方市)の生まれ。大正13年、福岡市に転居。昭和7年、「小劇場」を創刊し、日本純粋詩運動の一翼を担う。昭和9、10年頃、印刷工房を開業し、また「アテネ書房」を創立した。山田牙城の詩集『十二月の歌』(昭10・10)もアテネ書房刊。11年6月、「小劇場」第10冊を発行し、12年3月9日午前7時、福岡市大橋の仮寓(白水千代宅)で死去。翌10日、市内吉塚の明光寺で葬儀。14日夕、知友の長井盛之・原田種夫・星野胤弘・持田勝穂・森田緑雨らがブラジレイロで追悼会。
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【★405】文芸誌「小劇場」:●坂口博「詩と出版の狭間で—田丸高夫素描」(「敍説」ⅩⅣ、1997.1)に総目次がある。●ハラタネ文庫& [原文ママ]
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【★406】山下一海:俳文学者・俳人。父親は山下一雄で、福岡師範の美術教師だった。両親が俳誌「木犀」(のち「冬野」)の同人だったため幼い頃から俳句に親しんだ。戦争中は佐賀に疎開し、戦後は俳誌「菱の花」「偏西風」(佐賀市)に投稿。早稲田大学文学部を卒業し、近世文学研究者として成城短大・鶴見大学で教壇に立った。
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【★407】福岡全協事件:当局は2月24日午前5時、治安維持法違反容疑で県下一斉に全協系の分子や九大を中心とする極左学生ら計194人を検挙し、うち18人を起訴した。なお、この事件は検挙と同時に新聞報道禁止となり1年後の昭和8年3月30日解禁。即日、号外報道された。
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【★408】アンベール・ヴォークラン:昭和17年3月まで在任。「ヴォークラン先生はスノッブではなかった。絵を描くために東洋にきたボヘミアンだった。陽気で、温かい、そして性急な若者の心情をよく理解し、好奇心にも知識慾にも、善意をもって答えてくれた」(小島直記「ヴォークラン先生」)。
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【★409】菊竹六皷の反軍記事:菊竹六皷は「首相兇手に斃る」(5月17日夕刊=16日夕刻発行)「敢て国民の覚悟を促す」(5月17日朝刊)「騒擾事件と與論」(5月19日朝刊)等の記事で政党の腐敗・軍部軍人の政治介入・ファッショ化の動きを憂慮批判。「軍隊及び軍人が、政治に容喙することは、直ちに軍隊及び軍人の潰乱頽廃を意味する」(「敢て国民の覚悟を促す」)。反響は大きく、「最初に猛烈な爆弾的抗議をして来たのが久留米第一二師団の井上参謀で、本社久留米支局は一時極度に師団司令部から疎遠された。それをめぐつて、いわゆる大桜、小桜系統の若手将校の投書や威嚇が、相次いで本社に舞いこみ、福岡聯隊区司令部の中村中佐からも、福岡連隊の某々尉官からも、また当時有名な片倉大佐(下関にて)からも、猛烈な文句の脅迫状が到来した。それにつれて、種々のデマも飛び、今に本社を航空機から爆撃するようなうわささえ立つた。」(『西日本新聞社史』)
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【★410】中本たか子が来福オルグ:「わたしが福岡をめざしたのは、この年の一月にここへたちよったとき、この地の工場のようすをきいて、日本足袋工場なら、女工の多い工場としてはいれそうだということだったから、そこにでもはいろうと考えたためだった。/さっそく、わたしは福岡の街をあるきまわって、工場のようすをしらべた。/福岡は徳川時代から日本の有数の商業都市で、いまもなお、工業よりも商業の方がさかんで、大工場は福岡市の南はづれにある日本足袋工場だけで、三千人の従業員をもっていた。市の中部に鐘紡の福岡支店があって、従業員は五百人から千人くらいのところだった。その他は小さな町工場ばかりであった。/折から、日本足袋と鐘紡とで女工を募集していたので、まず鐘紡にいってみた。ここでは日給二十銭か三十銭だった。だが、わたしがどんなにわかくつくり、派手な色彩のきものをきても、さすがに三十ぢかい年齢は、十七、八の娘たちとひとしくはみえなかった。人事係は、わたしを一目みると、ここよりか日本足袋へいってみろと言った。わたしはあかくなって、そこそこにでていった。/わたしは足を日本足袋工場にむけた。日本足袋のちかくに、九州本線のふみきりがあった。その手前にたって、工場がひけてかえる女工さんたちに、わたしは話しかけた。そして工場内の労働条件をきいていった。そこでは最低六十銭から、最高一円三十銭くらいまで、日給がとれる。いま、募集しているが、応募者がたいへん多い。たいてい、いなかの農家の娘が採用される。会社は、採用者の身元調査をげんじゅうにおこなう——などのことをわたしは知った。/そのころ、全協のオルグ(福岡地区)の青年がたずねてきた。かれは水平社のひとから、わたしがきていることをきいたのであった。わたしは全協のオルグに、工場にはいるために便宜をあたえてくれとたのんだ。かれの方ではまた、わたしが工場にはいるまで、全協の仕事を手つだってくれと言った。わたしはそれを承諾した。/(略)/ある日、全協の青年につれられて、ある家で、全協の会合にでた。それは地区協議会の準備会であって、九州地方委員と、もう一人この地区のものと、四人だった。/この会合で、各自の任務をきめた。わたしは化学と繊維とをうけもった。わたしは、さっそく、日本足袋工場にちかい、東領(とうりよう)というところに間借をした。(略)/小月登美を先頭とする鐘紡の方は、二月十一日のやすみに、西公園へあそびにゆく話がきまっていた。もちろん組合づくりのために。」(『わが生は苦悩に灼かれて』白石書店、昭48・11)
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【★411】西田信春:明治36年1月12日、北海道樺戸郡新十津川村橋本生まれ。政治運動家。新十津川村尋常高等小学校・札幌第一中学校・第一高等学校(文甲)を経て昭和2年、東京帝国大学文学部倫理学科卒業。在学中から新人会で活動。新人会森川町合宿所では亀井勝一郎と同室だった。社会科学研究会哲学研究会に所属し、大衆教育同盟本部の活動に携わる。北海道の小作争議支援にも赴く。大学卒業後、全日本鉄道従業員組合本部に書記として勤務する(組織名・山田春男)。昭和2年12月、幹部候補生として京都伏見聯隊に入隊し、1年後陸軍歩兵伍長で除隊する。4年1月「無産者新聞」編集局員となり、同年3月日本共産党に入党する(無産者新聞細胞に所属、組織名・土岐)。同年「4・16事件」で検挙されたが、6年11月に保釈される。東京滞在中は、中野重治・原泉方に石堂清倫とともに同居する。保釈中に九州の共産党組織再建のため党中央オルグとして派遣される。7年8月7日、福岡に着任以来、九州地方の共産党や、同年2月の「福岡全協事件」で壊滅状態になった、同党の指導下にあった日本労働組合全国協議会(全協)の再建に力を注ぎ、同年12月には九州地方委員会を確立して委員長に就任した(組織名・岡/坂田)。翌8年2月11日の「九州共産党事件」(検挙者508名、うち福岡県は323名)の前日、西鉄久留米駅前で検挙され「取り調べ中」の11日に福岡署で死亡したといわれる。参考文献として、牛島春子「物語西田信春」(「風雪」昭40・4・20—41・11・20)、石堂清倫・中野重治・原泉編『西田信春書簡・追憶』(土筆社、昭45・10)、山岸一章『革命と青春—日本共産党員の群像』(新日本出版社、昭45・8 新日本選書18)所収「九州地方委員長西田信春」、日本共産党福岡県委員会県党史資料委員会編集『わが地方のたたかいの思い出 第三集 西田信春の生涯とその戦友たち』(福岡民報社、[1993])などがある。
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【★412】青柳喜久代:大正2年、福岡県の生まれ。結婚後は塚原姓。永末清作の回想「青柳喜久代のこと」(治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟福岡県本部「福岡県版 不屈」第75号、平11・11)によると、青柳喜久代は喜兵衛の妹で、福岡県立高女に在学中にモップル(犠牲者援護会)の運動に参加し、昭和7年、姉と一緒に上京。兄・喜兵衛の家に寄食し、全協東京支部オルグとして活動した。浅草署の留置場で伊藤律の前妻新井静子と知り合い、ゾルゲ事件にかかわることになった。戦後は東京中野区議に3期当選し、昭和43年4月8日、議員在職中に死去した。享年54歳。
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【★413】岩下俊作:明治39年11月16日、福岡県小倉市の生まれ。昭和2年、県立小倉工業学校を卒業し、翌年八幡製鉄所に就職。「九州文学」の中心メンバー。昭和36年、八幡製鉄所を定年退職。55年1月30日没。『岩下俊作選集』全5巻(北九州都市教会、平9・7—10・4)がある。
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【★414】劉寒吉:明治39年9月18日、福岡県小倉市の生まれ。本名は浜田陸一。小倉市立小倉商業学校卒業後、家業のパン屋を継ぐ。「九州文学」の中心メンバー。昭和61年4月20日没。
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Relation |
Record ID |
410598
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A.D. |
1932
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Japanese calender |
昭和7年
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Created Date | 2013.08.21 |
Modified Date | 2021.12.14 |