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妊娠高血圧症候群(Pregnancy induced Hypertension,PIH)は妊娠20 週以降の高血圧,タンパク尿を主張とする症候群である.現在でも依然,母児の周産期罹病の主因であること,様々な疫学的事実から本症は妊娠成立機構の根幹でもある母体の免疫学的寛容の破綻に端を発していること,からその病態については,「学説の病気」といわれるまでにさまざまな研究が行われてきたが,一定の見解はえら...れていなかった.しかし近年,これまで断片的に検討されてきた様々な事象が整理され,関連づけられるようになってきた.本稿では,PIH の病態形成についての最近の知見について,われわれのデータを中心に紹介する.胎盤発生の過程で原始栄養膜細胞層は,機能的にも形態的にも異なる2種類の細胞に分化していく.ひとつはExtravillous trophoblast(EVT)で,この細胞は母体脱落膜から筋層へ浸潤し一部は母体のらせん動脈をはじめとする血管の内皮や壁を置換する.もうひとつは絨毛性栄養膜合胞体Villous syncytiotrophoblast(SVT)であり,これは絨毛間腔を裏打ちしガスや栄養の母児交換を担う.EVTの分化は胎盤血流の増大に必須であり,その逸脱により,らせん動脈の再構築が障害され絨毛への血液供給が低下するとともに絨毛間腔の血流速度の上昇を引き起こす.これがPIH 病態形成の第一段階であり妊娠12 週前後までにおこる(図1)とされる.生理的にもSVTの一部は細胞塊を形成し母体血中に遊離するが,絨毛間腔の血流速度の上昇による物理的障害,そして虚血・再潅流が生じるとこれが増加する.加えて細胞内容物を含む100-200nm 径のsyncytiotrophoblast micro particles(SMTPs)の母体血中への放出も増加する.これらの物質が血管内皮の活性化をおこし,炎症細胞の活性化やこれにともなう液性因子の作用と相まってPIH 病態形成の第2ステージを形成する.この過程が,第1ステージにおける胎盤形成障害が妊娠の後半になって臨床的な顕在化するタイムラグを説明すると考えられている.もちろん後者の過程にはSVT 自体の分化も関わっていると考えられ,EVT とSVT のそれぞれの適切な分化とその連関が胎盤の正常な形成と機能の発現には不可欠であるといえる.show more
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